317 / 678
将来の息子
しおりを挟む
「あ、じいちゃん。伯父さんからメッセージだよ」
チョコレートショップを出てワインショップに向かっている途中に昇がスマホを手に教えてくれた。
「卓がなんだって?」
買い物してきて欲しいものでもあるのかと尋ねてみれば、どうやら直くんと絢斗くんが昼寝をしているという連絡のようだ。
「だからインターフォンを鳴らさずに鍵を開けて入ってってさ」
「そうか、起こすのはかわいそうだからな」
その連絡を忘れないように心に留めて、ワインショップに立ち寄り数本の赤ワインを選んだ。
一本十万前後でそこまで高価なワインではないが、さっき買ったチョコレートとの相性は抜群のものを選んだ。
「賢将さん、せっかくだから今日は卓たちの家に泊めてもらうとしよう」
「ですが、急に決めて大丈夫でしょうか?」
「いつでも泊まってかまわないと言っていたから大丈夫だろう。それに明日はカールくんが来るんだろう。絢斗くんの講義の間、私たちが直くんと一緒にいてやれるしな」
なんとか理由をつけてみると、賢将さんも乗り気になったようだ。
「そうですね、そうしましょう」
家に帰れば私も賢将さんも一人暮らしなのだ。
可愛い息子と孫と一緒に泊まれる機会を逃す手はない。
直くんと絢斗くんへのお土産の美味しい葡萄ジュースも合わせて購入し、卓たちの自宅に向かった。
インターフォンを鳴らさずに静かに鍵を開け、三人で家の中に入るとしんと静まり返っている。
卓が起きている様子もない。
まさか卓も寝ているのか?
そうならば、直くんを一人で部屋に寝かせるわけはないから、もしかしたら卓たちの部屋に連れて行っているのかもしれない。それなら確認はできないな……。
流石に息子たちの寝室を勝手に開けるわけにはいかないからな。
可愛い息子と孫の昼寝姿が見られるチャンスだと思ったが、そううまくはいかないものだ。
少しがっかりしながらリビングに足を踏み入れると、なんとなく人のいる気配がする。
「んっ?」
賢将さんもこの気配に気づいたようだ。
一緒に辺りを見回していると昇が「あっ」と小さい声をあげる。
その声に反応して視線を向けると、昇の視線の先に三つ並んだ膨らみが見える。
テーブルに静かに荷物を置き、三人で足音を立てないようにそっと近寄った。
「「――っ!!!」」
「あっ――!」
声を出さずに驚く私と賢将さんの隣で声をあげる昇の口を二人で塞ぎ、「しーっ!」と睨みを利かせると昇は何度も首を縦に大きく頷いた。
声を出したい気持ちはわかる。
なんせ女神のように綺麗な絢斗くんの隣で幸せそうに眠る天使のような直くん。そしてその二人をしっかりと守るように大きな腕を伸ばし直くんを抱きしめ、伸ばした手で絢斗くんの頬に触れている卓。
自分の宝物だと言わんばかりの卓の独占欲が溢れているが、その三人の構図が絵画のように素晴らしくて、神々しい光を放っているように見える。
「もうすっかり家族なのだな……」
「ええ。絢斗も直くんも卓くんにこんなに愛されて幸せですよ」
「いや、卓の方こそ守るべき家族がいて幸せなんですよ」
そんな私たちの会話を昇はじっと黙って聞いていた。
「昇、直くんにはお前の愛情も必要だが、家族の愛情も必要な時期なんだ。嫉妬するなよ」
「わかってる」
昇は素直に返事をしたが、私にはそれが自分に言い聞かせているように見えた。
昇にとっては戦いの日々かもしれない。
だが、卓と絢斗くんからのたっぷりの愛情を与えられて育った後は、今度は恋人の愛情を欲するようになる。それまでは広い心で直くんの成長を見守ってやろう。
昇はポケットからそっとスマホを取り出すと、卓たち親子三人が幸せそうに並んで昼寝をしている様子を写真に撮った。
「これ、後で直くんに見せてやるんだ。きっと喜ぶと思うよ」
撮った写真を笑顔で見せる昇の姿に、私は男としての昇の成長を見た気がした。
<side卓>
三人で昼寝していたら驚くだろうか。
そんなただの思いつきだった。
連絡していた通り、インターフォンも鳴らさずに入ってきた。
絢斗と直くんの二人を抱きしめて眠ったふりをしてみると、私たちが小上がりにいることに気づいた父たちがこちらにやってきた。
私たち三人の姿を見て、驚きの表情を見せる父と賢将さん。
そして驚きの声をあげ二人に制される昇。
そんな様子が目を瞑っていても気配でわかった。
可愛い絢斗と直くんの昼寝姿に癒されるだろうかと思っていると、
「もうすっかり家族なのだな……」
とぼそりと呟く父の声が聞こえる。
幸せな家族だと言われて思わず頬が緩みそうになるのを必死に押さえていると、
「昇、直くんにはお前の愛情も必要だが、家族の愛情も必要な時期なんだ。嫉妬するなよ」
と昇に声をかける父の言葉が耳に入ってきた。
それに対して昇はただ一言、「わかっている」と告げたが、その言葉には重みを感じた。
ただの思いつきで、父や昇の気持ちを知ってしまったがそれは私の感情を大きく揺さぶることになった。
昇が本気で直くんを大切に思ってくれている。
それを知って、私にとって昇は甥という存在から将来の息子という存在に切り替わった気がした。
チョコレートショップを出てワインショップに向かっている途中に昇がスマホを手に教えてくれた。
「卓がなんだって?」
買い物してきて欲しいものでもあるのかと尋ねてみれば、どうやら直くんと絢斗くんが昼寝をしているという連絡のようだ。
「だからインターフォンを鳴らさずに鍵を開けて入ってってさ」
「そうか、起こすのはかわいそうだからな」
その連絡を忘れないように心に留めて、ワインショップに立ち寄り数本の赤ワインを選んだ。
一本十万前後でそこまで高価なワインではないが、さっき買ったチョコレートとの相性は抜群のものを選んだ。
「賢将さん、せっかくだから今日は卓たちの家に泊めてもらうとしよう」
「ですが、急に決めて大丈夫でしょうか?」
「いつでも泊まってかまわないと言っていたから大丈夫だろう。それに明日はカールくんが来るんだろう。絢斗くんの講義の間、私たちが直くんと一緒にいてやれるしな」
なんとか理由をつけてみると、賢将さんも乗り気になったようだ。
「そうですね、そうしましょう」
家に帰れば私も賢将さんも一人暮らしなのだ。
可愛い息子と孫と一緒に泊まれる機会を逃す手はない。
直くんと絢斗くんへのお土産の美味しい葡萄ジュースも合わせて購入し、卓たちの自宅に向かった。
インターフォンを鳴らさずに静かに鍵を開け、三人で家の中に入るとしんと静まり返っている。
卓が起きている様子もない。
まさか卓も寝ているのか?
そうならば、直くんを一人で部屋に寝かせるわけはないから、もしかしたら卓たちの部屋に連れて行っているのかもしれない。それなら確認はできないな……。
流石に息子たちの寝室を勝手に開けるわけにはいかないからな。
可愛い息子と孫の昼寝姿が見られるチャンスだと思ったが、そううまくはいかないものだ。
少しがっかりしながらリビングに足を踏み入れると、なんとなく人のいる気配がする。
「んっ?」
賢将さんもこの気配に気づいたようだ。
一緒に辺りを見回していると昇が「あっ」と小さい声をあげる。
その声に反応して視線を向けると、昇の視線の先に三つ並んだ膨らみが見える。
テーブルに静かに荷物を置き、三人で足音を立てないようにそっと近寄った。
「「――っ!!!」」
「あっ――!」
声を出さずに驚く私と賢将さんの隣で声をあげる昇の口を二人で塞ぎ、「しーっ!」と睨みを利かせると昇は何度も首を縦に大きく頷いた。
声を出したい気持ちはわかる。
なんせ女神のように綺麗な絢斗くんの隣で幸せそうに眠る天使のような直くん。そしてその二人をしっかりと守るように大きな腕を伸ばし直くんを抱きしめ、伸ばした手で絢斗くんの頬に触れている卓。
自分の宝物だと言わんばかりの卓の独占欲が溢れているが、その三人の構図が絵画のように素晴らしくて、神々しい光を放っているように見える。
「もうすっかり家族なのだな……」
「ええ。絢斗も直くんも卓くんにこんなに愛されて幸せですよ」
「いや、卓の方こそ守るべき家族がいて幸せなんですよ」
そんな私たちの会話を昇はじっと黙って聞いていた。
「昇、直くんにはお前の愛情も必要だが、家族の愛情も必要な時期なんだ。嫉妬するなよ」
「わかってる」
昇は素直に返事をしたが、私にはそれが自分に言い聞かせているように見えた。
昇にとっては戦いの日々かもしれない。
だが、卓と絢斗くんからのたっぷりの愛情を与えられて育った後は、今度は恋人の愛情を欲するようになる。それまでは広い心で直くんの成長を見守ってやろう。
昇はポケットからそっとスマホを取り出すと、卓たち親子三人が幸せそうに並んで昼寝をしている様子を写真に撮った。
「これ、後で直くんに見せてやるんだ。きっと喜ぶと思うよ」
撮った写真を笑顔で見せる昇の姿に、私は男としての昇の成長を見た気がした。
<side卓>
三人で昼寝していたら驚くだろうか。
そんなただの思いつきだった。
連絡していた通り、インターフォンも鳴らさずに入ってきた。
絢斗と直くんの二人を抱きしめて眠ったふりをしてみると、私たちが小上がりにいることに気づいた父たちがこちらにやってきた。
私たち三人の姿を見て、驚きの表情を見せる父と賢将さん。
そして驚きの声をあげ二人に制される昇。
そんな様子が目を瞑っていても気配でわかった。
可愛い絢斗と直くんの昼寝姿に癒されるだろうかと思っていると、
「もうすっかり家族なのだな……」
とぼそりと呟く父の声が聞こえる。
幸せな家族だと言われて思わず頬が緩みそうになるのを必死に押さえていると、
「昇、直くんにはお前の愛情も必要だが、家族の愛情も必要な時期なんだ。嫉妬するなよ」
と昇に声をかける父の言葉が耳に入ってきた。
それに対して昇はただ一言、「わかっている」と告げたが、その言葉には重みを感じた。
ただの思いつきで、父や昇の気持ちを知ってしまったがそれは私の感情を大きく揺さぶることになった。
昇が本気で直くんを大切に思ってくれている。
それを知って、私にとって昇は甥という存在から将来の息子という存在に切り替わった気がした。
1,358
あなたにおすすめの小説
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
猫を追いかけて異世界に来たら、拾ってくれたのは優しい貴族様でした
水無瀬 蒼
BL
清石拓也はある日飼い猫の黒猫・ルナを追って古びた神社に紛れ込んだ。
そこで、御神木の根に足をひっかけて転んでしまう。
倒れる瞬間、大きな光に飲み込まれる。
そして目を覚ましたのは、遺跡の中だった。
体調の悪い拓也を助けてくれたのは貴族のレオニス・アーゼンハイツだった。
2026.1.5〜
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる