ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

文字の大きさ
318 / 683

父たちからの贈り物

しおりを挟む
「このまま寝かせておいてやろう」

そんな父の言葉に従うように昇と賢将さんが揃って小上がりから離れていく。
そっと薄目を開けてみれば、父と賢将さんがワインを持っているのが見える。

あのワインの数……きっと今日は泊まっていくつもりなのだろう。

まぁ、今日は父たちにも世話になったし、直くんのことを考えれば父たちがいれば喜ぶに違いない。
今日の夕食は腕を振るうか。

そんなことを考えていると、腕の中の直くんが「んっ……」と可愛らしい声をあげる。
それが聞こえたのか、絢斗は無意識ながら直くんの胸をトントンと叩く。

すっかり親になっている絢斗の姿に思わず笑みが溢れてしまう。
本当に幸せだ。

あまりにも幸せな気持ちが昂って、二人を抱きしめると絢斗と直くんの目がゆっくりと開いていく。

「あ、ぱぱ……」

「卓さん」

「おはよう、絢斗。直くん」

笑顔で二人を見つめると、絢斗も直くんをギュッと抱きしめる。
まだぼーっとしている様子の直くんだが、幸せを感じてくれているようだ。
それが表情に現れていてとてつもなく愛おしい。

「みんなでお昼寝してたんだよ」

「お昼寝……じゃあ、ここは、家?」

「ああ」

私が頷くと途端に寂しそうな表情を見せる。

「どうした?」

「僕が寝ちゃったから、お出かけが終わったんじゃ……」

やっぱりそう思っても無理はない。
だが絢斗はそんな直くんを優しく抱きしめた。

「そんなことないよ。カールくんたちはあの後、家族でお出かけだったんだよ」

「ほ、んとう?」

「うん。それにカールくんは明日うちに来てくれるよ」

「えっ! ここに?」

「うん。一緒に勉強もできるしご飯も食べられるから楽しいよ」

絢斗の言葉に直くんはすっかり笑顔を取り戻した。

「あ、直くん。起きたんだね」

「昇さん!」

私たちの会話が聞こえたのか、昇がすぐにこちらにやってきた。
直くんは安心したように笑顔を見せた。

「直くん、今日じいちゃんと大おじさん。二人とも泊まるってよ」

「えっ! おじいちゃんとおじいちゃまが? わぁー、嬉しい!!」

よほど嬉しかったのだろう。
目もすっかり覚めたようだ。

「じゃあ、起きようか」

二人を支えてゆっくりと起こすと、直くんは視線の先に見える父たちをみて笑顔を浮かべた。

「おじいちゃん、おじいちゃま!」

声をあげて立ち上がると、二人に向かって駆けていく。

「おお、起きたか」

「おじいちゃまとおじいちゃん、今日泊まってくれるんでしょう?」

「ああ。いいかな?」

「とっても嬉しい!!」

素直に喜べるようになった直くんの成長を感じつつ、私は絢斗と笑顔で顔を見合わせた。

「そうだ、直くんと絢斗くんにお土産を買ってきたんだよ」

「お土産?」

「ああ、せっかくだからコーヒーでも淹れようか」

父が笑顔を向けると、すぐに昇が駆け寄った。

「直くんのは俺が淹れるよ」

「そうか、じゃあ任せよう」

父の言葉に嬉しそうにキッチンに入っていく。

「絢斗のコーヒーは私が淹れよう」

「うん、お願い」

さっと毛布と布団を畳んでそこにおいておいた。
後で父たちのために乾燥機にかけておくからしまわなくても問題はない。

「直くん、こっちに座って待っておこう」

「はーい」

絢斗の声かけに直くんはすっかりご機嫌な様子でソファーに腰を下ろした。


「ここのフィナンシェは絶品でね。滅多に買えないから幻とも言われているんだよ」

箱を開け、二人に見せながら説明をする父の得意げな表情に思わず笑ってしまいそうになる。
父にもこんなところがあったのだな。

「ふぃ、なんしぇ?」

「ああ、焼き菓子の一つだよ。バターがたっぷりで美味しいんだ」

「へぇ……ふぃ、なんしぇ……」

興味深そうに見つめる直くんが可愛い。

「直くん、これ……俺が選んだチョコレート。全部味が違うから楽しめるよ」

「わぁー! 綺麗! 美味しそう!!」

チョコレートは前にも食べさせたことがあるから反応がいい。
あの時もすごく喜んでいたからな。
昇が選んだというチョコレートはハートや三日月の形をしていてみているだけでも楽しめる。
いいものを選んできたな。

「これは私から絢斗にだよ」

「えっ、ありがとう! お父さん! わぁー、美味しそう!!」

そうか、直くんには昇が、絢斗には賢将さんが選んできたわけか。
二人の喜ぶ顔を見ていると父がもう一つ箱を取り出した。

「これは私から卓にだ」

「えっ? 私にチョコレートを?」

「ああ」

驚きながら箱を開けると、カカオの強い香りが漂ってくる。

「赤ワインに合うビターチョコだよ。これでワインを楽しもう」

なるほど。それであの数のワインか。

「それは楽しみですね」

今夜は父と賢将さんと楽しい時間を過ごせそうだ。
しおりを挟む
感想 1,277

あなたにおすすめの小説

【8話完結】いじめられっ子だった僕が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(2024.10.21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

処理中です...