ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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二人でいるのが心地いい

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<side昇>

昼寝をしていた直くんたちが目覚めてこれからおやつタイム。
直くん用のカフェオレを作るのは俺の役目だ。直くんのお気に入りの配合もバッチリ頭に入っている。

熱すぎず、温すぎず程よい温度で仕上げたカフェオレを持っていくと、直くんがふわっと笑顔を見せてくれる。
ああ、可愛い。

じいちゃんがフィナンシェの箱を開けて見せると、直くんは初めてのお菓子に興味津々の様子。
これを気に入ったらちょくちょく買いに行こう。
店の場所は覚えたしバッチリだ。あとは開いているかどうかだけど。

チョコレートをどのタイミングで渡そうかと機会を窺っていると、じいちゃんがそっと俺に視線をむけた。
今か。
俺は少し緊張もしながらチョコレートの箱を出してみせた。

俺の想像以上に喜んでくれる姿を見て嬉しくなる。
このチョコ十粒で五千円を軽く超えてたけど、この笑顔が見られるなら安いものだな。

俺は直くんの隣に座り、直くんがチョコレートを選ぶのを見守った。
直くんは悩んで三日月型のチョコを手に取る。これは確か、苺のガナッシュが入っていたはず。直くん、苺が好きだから喜んでくれるかな。

直くんはそれを大切そうに半分齧ると、

「んー!!!」

可愛い声をあげて喜んでいた。

ああ、もう最高!! 可愛すぎてやばい。

「よかった、気に入った?」

「はい。昇さんも食べてみてください」

俺に箱を渡そうとするが、俺はその齧りかけのがいい。

「俺もその味、食べてみたいな」

「えっ? 食べかけですよ?」

「それがいいんだよ」

俺の心からの気持ちを告げると直くんは少し頬を赤らめながらも俺の口に入れてくれた。
本能でつい、直くんの指まで舐めてしまったけれど、直くんはピクッて震えただけで嫌がることはなかった。

伯父さんとじいちゃんたちからの視線を感じたけれど、そっちはわざと見ないふりをした。
少しくらいこんな時間があってもいいよな? でもちょっと怖い。

「直くん、フィナンシェも食べてみない? 美味しかったよ」

「わぁ、食べてみたいです!」

絢斗さんの声掛けでその空気が一気に霧散した。
少しホッとしつつ、直くんの初めてのフィナンシェを見守った。

やっぱり最初はプレーンかな。
小さな口が少し緊張した様子で端っこを齧る。

初めてのものだからドキドキしているみたいだ。
けれど、口に入った瞬間直くんの表情が一気に華やいだ。
どうやらものすごく美味しかったみたい。

その表情にじいちゃんもご満悦の様子だ。
なんていったってじいちゃんのおすすめの店だもんな。

「昇さんも食べてみてください。すっごく美味しいです!」

直くんは嬉しそうに齧りかけのフィナンシェを俺に向ける。
きっとさっき俺が齧りかけがいいと言ったからだ。
伯父さんたちの視線を感じるが、今度は俺から言ったんじゃない。
直くんが渡してくれたんだから断る理由はない。

俺は幸せのままにパクッと齧った。

「んー! これ、本当に美味しいな!!」

フィナンシェは今まで何度か食べたことがあるけれど、ここのは本当に絶品だ。
ここのフィナンシェを食べたら他の店のが食べられなくなりそうな気がする。

俺の反応に、じいちゃんも喜んでくれている気がした。

おやつタイムを終え、じいちゃんと大おじさんの泊まる準備をする。

「あっちの客間に布団を運んだらいい?」

「ああ。ありがとう」

俺が布団を抱えると、直くんが枕を持ってついてきてくれる。率先して手伝いをしてくれるのが嬉しい。

「あ、昇」

「大おじさん、どうしたの?」

「いや、寛さんさえよかったら同じ部屋に寝かせてもらおうかと思ってな。寛さん、どうですか?」

「私は構わないが気を遣うんじゃないか?」

「いえ。ゆっくり話をしたいと思っていたので一緒の部屋のほうがありがたいです」

大おじさんの言葉にそれならとじいちゃんは納得していたようだった。

俺は直くんと一緒に布団を運び入れ、乾燥機をセットしておいた。これで気持ちよく寝てもらえるだろう。

夕食まではそれぞれで過ごすことになり、俺は直くんと部屋に戻った。
部屋に入ってすぐに直くんが紙袋からゴソゴソと取り出したのは、編みかけのマフラー。

この前俺がみた時よりずいぶん長くなっているのがわかる。

「これ、母さんの?」

「はい。もうすぐ編み終わるので次は毅パパのを編みます」

フランスは寒いから一番に仕上げて送りたいんだと言っていた。
きっとこのあとはじいちゃんと大おじさん。

優しい直くんのことだから伯父さんと絢斗さんにも編むだろう。
受験もあるし、俺のはもう少し先かな。

でもマフラーを使うのは今年だけじゃない。
だから俺はもらえるだけで嬉しいんだ。

ラグに座って、一花さんから送られてきた動画を見ながらマフラーを編み始める直くんの邪魔にならないように俺も勉強を始める。お互いがそれぞれのことをしていても、気を遣わずに尊重できる関係。それがすごく心地いい。

それからしばらく編んでいた直くんが

「できたーー!!」

と声をあげる。

その声に振り向くと、そこには初めてとは思えないほど上手に編み上がった菖蒲色の綺麗なマフラーがあった。

ああ、母さんが好きそう。
それが俺の第一印象だった。
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