ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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大好きだよ

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「昇さん、どうですか?」」

「すごく上手だよ。母さんも絶対喜ぶよ。この色、母さんが好きそうだし」

「よかった……」

安心したように笑う直くんが愛おしくて俺はつい抱きしめてしまった。

「直くん、ありがとう。俺の両親を大切に思ってくれて嬉しいよ」

「昇さん……」

「俺も楽しみにしてる。でも無理はしなくていいから。俺はいつまでだって待てるからさ」

ギュッと抱きしめると直くんが頷くのを感じる。
ああ……本当に可愛いな。


直くんは編み上がった母さんのマフラーを綺麗に畳むと、紙袋から新しい毛糸を取り出した。
青よりも少し薄い、あまり見ない色だ。毛糸に巻かれた紙を見ると、そこにははなだ色と書かれていた。

「縹色……これすごくいいね」

「はい、僕もこれをみた時にすぐに毅パパに似合うなって思ったんです」

「直くん、色を選ぶセンスあるなぁ」

「あ、それ一花さんからも言われました。昇さんにまでそういってもらえて嬉しいです」

少し照れた様子の直くんが可愛い。

「俺のはどんなイメージ?」

「え? えっと……」

直くんはキョロキョロと辺りを見回した。
ああ、スマホか。

ベッドの上に置かれていたスマホをとって渡すと、慣れた様子で操作し始めた。

俺と一緒にいる時はスマホを触っているところをほとんど見たことがないからなんだか新鮮だ。
持っていない生活に慣れていたせいか、あんまりスマホに依存してないんだよな。

まぁ、俺もゲームや動画を見ることもないから連絡手段としてしか思ってない。
ただ、直くんと出会ってからはカメラだけは百倍増しで使うようになった。どの瞬間の直くんも撮り逃したくないのだからそれは当然か。

直くんがスマホを手に取ったのは、一花さんから教えてもらったあのアプリを俺に見せるため。
伯父さんからはこのアプリでなんでも好きなものを買っていいと言われているみたいだけど、直くんが注文したのは今のところ毛糸だけだ。
本当に欲がないんだよな。いや、そういうふうに育てられたからなんだよな。
最近は食べてみたいとか言えるようになってきたけれど、物に対してはなかなか難しい。
これも俺が少しずつ引き出していってやりたい。

「昇さんはこれ、かなって思ってたんですけど、好き、ですか?」

ラグに座ったままスマホを手に可愛い表情で見上げられて、好きですかなんて尋ねられてドキッとする。
可愛すぎて画面を見る余裕すらない。

「ああ、好きだよ。大好きだ」

ずっと直くんだけを見つめながら想いを告げると、直くんの顔がどんどん赤らんでいく。

「の、昇さん……あの、毛糸、ですよ……」

「えっ、あ、ごめん。直くんが可愛すぎて言わずにいられなかった」

恥ずかしがる直くんに正直に謝ると、直くんはそっと抱きついてきた。

「あの、僕も大好きです……」

「――っ、直くんっ」

ああ、もう……可愛すぎて困る。

「キス、したい。いいかな?」

そのまま唇を奪いたかったけど、直くんを戸惑わせたくなくて尋ねてみた。
すると直くんはさらに顔を真っ赤にして小さく頷いた。

キュッと目を瞑り、少し身体を震わせながらそっと顔を上げる直くんがたまらなく可愛い。この表情だけでとてつもなく興奮する。俺はそっと顔を近づけて、直くんの小さくて可愛い唇に重ね合わせた。

本当は直くんの口内をたっぷりと味わいたいけれど、そこまでしたらそこで止まれる気がしない。
伯父さんたちだけでなくじいちゃんたちもいるこの家で、そこまで欲望を溢れさせるのは流石にできなくて何度か下唇を啄むだけで我慢した。

チュッとわざと音を立てて唇を離すと、直くんは嬉しそうに俺にもたれかかってきた。

「昇さんと、キスすると……幸せな気持ちでいっぱいになります」

「俺も、幸せだよ」

俺の胸にすっぽりとおさまる直くんをギュッと抱きしめる。

「直くん、俺……その色、好きだよ。直くんが選んでくれたから大好きになった」

「じゃあ、この色で作りますね」

「ああ。楽しみにしてるよ」

俺の言葉に、直くんは嬉しそうにアプリを操作して俺のために選んだ毛糸を注文してくれた。
今頃、伯父さんのスマホに通知が来ていることだろう。
伯父さんのことだから俺の毛糸だってわかったかな。
後で聞かれそうだ。

直くんは注文して安心したのか、父さんのマフラーを編み始めた。
この毛糸があんなにあったかそうなマフラーになるんだからすごいよな。

「手つきが慣れてきたね」

「はい、一花さんが慣れたら簡単だよって言ってたのがわかってきた気がします。同じ動きの繰り返しなので、慣れると楽しくなってきました」

「そうなんだ。楽しくやれるならよかったよ」

俺は直くんのそばに勉強道具を置いて、勉強を再開したけれど視線を向けるたびにマフラーが編まれていくのがわかる。本当にすごいよな。直くんのマフラーが作りたいって言って一花さんの動画を俺のスマホにも送ってもらって、こっそり編み始めたけれど、直くんのマフラーはまだまだ序盤。もっと上手く編めるようになったら直くんの前でも編んでみようと思っていたけど、なかなか難しい。でも直くんの受験までには完成させたいと思っている。俺も頑張らないとな。もう少し進んだら直くんに俺が編んでいるマフラーを見てもらおう。
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