ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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大好きになったもの

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最初は目の前で揚がる音にビクビクしていた直くんだったけれど、美味しいものだとわかってからは待ちきれない様子でフライヤーを眺めている。そんな様子にも癒される。

「直くん、これ食べてみる?」

「これはなんですか?」

「食べてみてからのお楽しみだよ」

衣をつけると中身がすぐにはわからない。
それも楽しみの一つだ。

直くんの好きなえびと一緒にそれも揚げていく。

綺麗な黄金色になった串を二本とも取り出して皿に取る。

「どっちから食べる?」

「こっち、気になるので食べてみたいです」

それにソースをかけてフーフーと冷まして口に運ぶと、直くんの小さな口がそれを齧った。

「ん!」

気づいたか?
小さくしてみたけれど、直くんの小さな口には入らなかったからバレたかもしれない。

直くんの表情に変化がないかじっと見つめていると、直くんはどんどん笑顔になっていく。

「どう、かな?」

「これ、すっごく美味しいです!」

目を輝かせると、もう一度口を開けて残りを全部パクッと食べた。
それをあっという間に飲み込むと嬉しそうに俺を見た。

「これ、なんですか? 僕、これ大好きになりました」

笑顔で尋ねられて、正直に言おうか悩んだけれどここは伝えた方がいいだろう。

「これ、ブロッコリーだよ。美味しいよね、俺も好きなんだ」

「えっ……これが、ブロッコリー? うそっ、だってブロッコリーは……」

直くんにとっては嫌な思い出だっただろう。茹でただけのブロッコリーをずっと食べさせられていたんだから。
でも、いい加減その思い出を払拭させたかった。だって、直くんには嫌な思い出なんていつまでも残したくなかったから。

「ちゃんと料理したら美味しいものなんだよ。ねぇ、絢斗さん」

身体を震わせる直くんの手を優しく握って、絢斗さんにも声をかけた。

「うん。美味しいよね、私も大好きだよ」

絢斗さんはブロッコリーが大好きなんだと伯父さんから聞いていた。
毎日欠かさず食卓には必ず出ていたけど、直くんが苦手だと知ってからはこの家からブロッコリーが消えた。

食材を探しているときに、冷凍してあったブロッコリーを見つけて俺はこれもしようと決めたんだ。
一か八かの賭けだった。

直くんのトラウマがひどければもう二度とそれを出すのはやめようと思っていた。
でも直くんは大好きだと言ってくれた。

きっとこれで嫌な思い出も消えただろう。
だって、直くんの好きな絢斗さんも好きなものなんだから。

「僕……他の料理も食べてみたくなりました」

「おお、そうか。じゃあ明日から少しずつ出してみようか。まずは絢斗の好きなえびとブロッコリーのトマトチーズ焼きでも作ってみよう。きっと直くんも気にいるんじゃないかな」

えびとブロッコリーのトマトチーズ焼き……。名前だけで美味しそうだ。
これ、直くんが好きになったら俺も作り方を習っておこう。

直くんはそれからいかとえび、そして豚ヒレの串も食べて最後にもう一度ブロッコリーを食べていた。
すっかりブロッコリーの串揚げが気に入ったみたいだ。

「ふぅ……お腹いっぱいです」

いつもの二倍は食べていた気がする。
やっぱり目の前で揚げたてを食べるのは食欲が増すのかもしれないな。

「さぁ、直くん。これを飲みなさい」

大おじさんがすぐに用意してくれたのは、消化を助ける薬。
それを飲むと、直くんの小さな胃も楽になるだろう。

「そういえば、卓さん。直くん、二葉さんのマフラー完成したんだって」

「そうか、早いな」

初心者がマフラーを一つ仕上げるのに、どれほどの労力が必要かわかるからこそ、伯父さんも驚くんだろうな。

「毅パパのも出来上がったら、フランスに届けたいです。ここからどれくらいかかりますか?」

「そうだな……通常なら二~三週間はかかるだろう」

「えっ! そんなにかかるんですか? じゃあクリスマスに間に合わないかも……」

父さんへのマフラーはまだ取り掛かったばかり。
直くんの受験も控えているし、マフラーばかりに時間は取れない。

「大丈夫だよ」

しゅんとする直くんの隣にじいちゃんが座ると、優しく頭を撫でた。

「清吾の息子に頼めば特別便で送ってくれるさ。それならフランスまで一週間もかからないよ」

「えっ! 本当ですか?」

「ああ、私がアメリカに行っているときも荷物を送ってくれて三日で届いていたから大丈夫。安心していいよ」

アメリカまで三日で届く……。倉橋さんの特別便って、本当にすごいな。

「安心したところでお風呂に入っておいで。今日は疲れたでしょう」

絢斗さんが声をかけると、直くんは嬉しそうに笑って俺に視線を向けた。

「はい。昇さん……今日は一緒に入ってくれますよね?」

その言葉に伯父さんと大叔父さん、そしてじいちゃんの視線が一気に突き刺さる。
でも一緒に風呂に入るのは俺が認められた権利だし!
それに毎日入っているわけじゃない。
今日は直くんも疲れているから誘ってくれたし。
だから一緒に入ってもいいよな。

頭の中でいろんな理由を挙げて納得してから俺は頷いた。

「ああ、じゃあ早く入りに行こうか」

俺の返事に直くんは嬉しそうに笑っていた。
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