ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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メルヘンなお部屋

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<side直純>

「行こう! 行こう!」

あやちゃんに手を取られ、さっちゃんに案内されてどこかに連れて行かれる。

「あの……」

何がなんだかわからないけれど、真琴さんが僕の背中を優しく押しながら

「大丈夫だよ、楽しいことだから」

と言ってくれる。だから不安は何もない。

こうやって数人でまとまってどこかに行くような経験があまりないからドキドキしちゃっているだけだ。
まるであの結婚式の楽しい時間が戻ってきたみたいだ。

「ここは私の特別な部屋だよ。さぁ、どうぞ」

ガチャリと扉が開く。

広々とした部屋は可愛いぬいぐるみや家具に囲まれていてまるでメルヘンの世界。
足元はふわふわの絨毯で覆われていて、他の部屋の大人っぽい雰囲気とは真逆の部屋だ。
でもすごく可愛くて夢に溢れている。

「すごいっ!」

「実家がこんな部屋だったから大人になってもこういう部屋に入ると落ち着くんだよ。時々入って、楽しむ趣味部屋みたいなものかな」

あやちゃんがリースを作っていたような場所か。
今は僕の部屋になっちゃってるけど、時々一緒に入って寛いでくれるのはさっちゃんと同じ理由なのかもしれない。

「入って、入って!」

部屋の前でスリッパを脱いで足を踏み入れると、ふわっとした優しい感触に足が包まれて心地いい。

「わぁー、この感触クセになりそう」

「わかるよ、僕もこの感触が忘れられなくて優一さんにお願いして入れてもらったんだ」

「わぁ、そうなんですね。素敵!」

真琴さんが自分と同じだと思うだけでちょっと嬉しくなる。
浮かれながらあやちゃんに手を引かれ、ソファーに案内された。

「ねぇ、せっかくだからみんなで下に座ろうか」

さっちゃんのそんな声かけに反対する声なんてあるはずもない。

みんなでペタンとその場に座るとなんとも言えない心地よい感触に包まれた。
こんなに気持ちいい場所ならこのまま横になってもぐっすり眠れそう。

まるで毛足の長い大型犬にでも包まれているような感触だ。

「直くん、すっかり気に入ったみたいだね。直くんの部屋にもこれ入れようか?」

「わぁー、いいんですか?」

「もちろん! 後で卓さんに話しておくね! あ、直くんから頼んだ方が卓さん喜ぶかも! 直くんがおねだりするのってなかなかないから」

あやちゃんはいい考えとばかりに言ってくれるけれど、僕がパパにおねだりなんて……いいのかな?

「絶対その方がいいよ! 磯山先生、直くんに頼られるの嬉しそうだもんね」

僕の心を読んだかのようにさっちゃんが笑顔で声をかけてくれる。

「磯山先生があんなふうに優しい笑顔向けるの、絢斗先生だけだと思ってたけど直くんにも同じように笑顔向けててすごく嬉しかったなぁ。ねぇ、兄さん」

「うん。でもさっき直くんがいろんな料理を口にして美味しいっていうたびに嬉しそうなんだけど、ちょっと嫉妬している様子も見えて伊織さんがびっくりしてましたよ」

「ああー! 宗一郎さんもびっくりしてたよ。なかなかみられないよね」

パパはいつも僕に優しい笑顔を向けてくれる。
嫉妬? なんてしないと思うけど、あやちゃんも頷いているからそうなのかな?
でもみんなが笑顔で話しているから僕も楽しくなってくる。

「ねぇねぇ、それよりこの部屋に連れてきた理由だけど……直くん、この前可愛いドレス着てたよね?」

「えっ? あ、はい。一花さんの結婚式で……」

僕が答えるとすかさずあやちゃんが隣からスマホをみんなに見えるように差し出した。

「これだよ、みんな可愛いでしょ?」

画面に映っていたのは、最後に庭で撮った集合写真。
この写真を見るだけであの楽しかった時間が甦ってくる。

「敬介くんと周平くんが着物とドレスを用意してくれてお着替えしたんだ。佳史くんたちの着替えを選ぶのすっごく楽しかったー!」

あの時、あやちゃん……すごく楽しそうだったもんね。

「あ、伊月くんがいる!」

綺麗な華やかな着物を着ていた伊月さんを指差しながら真琴さんが声を上げる。

「お知り合いですか?」

「うん。同じ大学で親友だよ。少し前に結婚式に慎一さんと一緒にブリーダーとして急遽参列することになったって話をしてたけど、このことだったんだー! うわぁー、伊月くん。すごく綺麗!!」

「新夫の一花ちゃんの実家で飼っているワンちゃんが、甲斐くんのところの子でね。その子がリングドックをすることになって二人で一緒に参列してくれたんだよ。これ、その時の写真」

あやちゃんが指輪が入ったカゴを咥えたフランくんとその上にグリちゃんが乗っている写真を見せる。

「わぁー! すっごく可愛い!!!!」

可愛い二人の写真に真琴さんも悠真さんも皐月さんもメロメロだ。
実際すっごく可愛かったもんね。

ああ、ここで結婚式の話ができるなんて思わなかったな。
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