ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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嬉しいメモ紙

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<side絢斗>

「あやちゃんはどのドレスにするんですか?」

「私は、これ!」

直くんから尋ねられて、私いはすぐにハンガーを指差した。
ほんのり黄色味がかかったクリーム色のウェディングドレス。
純白のドレスは敬介くん以外には作らないと言っていた周平くんだから、あえてこの色なんだろう。
それでもこの色ならウェディングドレスに見える。

以前、皐月たちがウェディングドレスを着たと聞いた時からいいなと思っていた。
だから着てみたかったんだ。
と言ってもプリンセスのような大きくて派手なものではなく、ストンとしたラインが綺麗な刺繍付きのドレスで袖付きなのが嬉しい。
揺れ動く大きめフレアな袖と胸元はシースルーになっていて肌が露出しすぎないのもいい。
これなら私でも着られそうと思ったのが、選んだポイントだ。

このドレスなら卓さんも気に入ってもらえそう。

「わぁー! 綺麗!! あやちゃん、すっごく似合いますよ、絶対!」

「ありがとう。じゃあ着替えてみようかな。お手伝いお願いするときは直くんを呼んでもいい?」

「――っ、はい!」

嬉しそうな直くんに見送られて私は一人で試着室に入った。

お手伝いをお願いするだけであんなに喜んでくれるんだもんね。
それが無理しているのではなくて、人から頼られることが嬉しいみたいだから、その気持ちは大切にしてあげたい。

このドレスには必要なドレス用のビスチェも全部一緒に合わせてハンガーにかけてくれている。
これはきっと敬介くんの配慮だろう。
本当に気が利く子だ。だからこそ、あんな大きなホテルグループのオーナーをこなせているんだろうな。

このドレスが綺麗に映えるようにビスチェには少し胸の膨らみもある。
ふふ、卓さん。びっくりするかも。
その顔を想像するだけでちょっと楽しい。

ビスチェをハンガーから取り外していると、ドレスの内側にメモ用紙が張り付いていることに気づいた。

「これ……」

<絢斗先生ならきっとこのドレスを選んでくださっているでしょう。このドレス、周平さんの自信作です。絶対に絢斗先生をいつもよりさらに美しく見せてくれますよ。磯山先生が驚かれる姿の映像、楽しみにしています。浅香敬介>

このドレス以外にもウェディングドレスは何着かあった。
敬介くんの性格なら、そのどれもに同じメモを入れるとは考えられない。
だから私がこれを絶対に選ぶと予想してこのメモを入れてくれたということだ。

敬介くんと周平くんの凄さにただただ驚いてしまう。
それだけ私の好みをわかってくれている証拠なのかもしれない。

可愛い教え子が私のために作ってくれたこのドレス、卓さんはどんな反応をしてくれるかますます楽しみになってきた。

服を脱ぎ、ビスチェをつけて、ファスナーを開けたドレスの中に足を入れる。
スッと背中の半分までファスナーを閉めてから鏡を見ると、あまりにの可愛さに自分で驚いてしまう。

五十歳を疾うにすぎてこんなにも華やかにしてくれるドレスに出会えるなんて……私は幸せだ。

「直くん、お手伝いお願い!」

カーテンを少し開いて声をかけると、直くんが嬉しそうに駆け寄ってきた。

少し緊張した様子でカーテンを開けて入ってきた直くんは目を輝かせて私を見てくれた。

「わぁー! あやちゃん、綺麗! あの時の一花さんみたい!」

結婚式で一番輝いていた花嫁の一花ちゃんみたいだと言ってくれる。
これが直くんの褒め言葉というのは表情を見ていればよくわかる。

「パパ、綺麗すぎてびっくりしちゃうかも」

「昇くんも直くんの可愛い姿にびっくりするよ、絶対」

「あの、昇さんに前に言われたんです。僕が可愛すぎて何も言えなくて固まってしまう時があるって。だから何も反応できなくても心配しないでって」

「そっか。昇くん、ちゃんと話せたんだ」

直くんが可愛すぎるし、無自覚に昇くんを煽るから大変だろうなと思ってたけど、ちゃんとそれを打ち明けられていたら直くんも昇くんが黙っていても不安に思わずに済むもんね。昇くん、えらいぞ。

「卓さんもね、昔は急に固まってしまうことがあって私も不安になったこともあったけど、表情を見ていたら可愛いって思ってくれているんだろうなってわかるようになってきたから大丈夫。直くんと昇くんはまだまだこれからだからね」

「はい。でもパパもそんなことが……。なんか、楽しいですね」

直くんは嬉しそうに私のファスナーを上げてくれた。

「わぁ、本当に綺麗! 髪の毛もセットしてもらいますか?」

「そうだね。私も悠真くんにもう少し綺麗にしてもらおうかな」

二人で試着室を出ると、悠真くんの着替えも終わっていて、ちょうど皐月も戻ってきた。

「あ、みんな着替え終わったね。私もすぐに着替えちゃうね!」

一人で騒がしくささっとドレスを手に別の試着室に入っていく。

そんな姿を直くんと二人で笑いながら、悠真くんの元に向かった。

「わっ、悠真さん。黒いドレス、ですか? 素敵!」

直くんは見たことがない黒いドレスに興味津々の様子。
でも色白の悠真くんは黒いドレスもよく似合う。

「真琴が天使になってたから、私は悪魔になってみたんだよ」

「悠真くんは、悪魔っていうより小悪魔、かな。伊織くんが興奮しちゃいそう」

可愛らしさの中にセクシーさもあって素敵。
これが、真琴くんだったら成瀬くんはすぐに隠してしまいそうだけど、伊織くんなら大丈夫かな。

「小悪魔? 興奮?」

直くんはあまりよくわかっていなかったようだけど、きっと伊織くんの反応を見たらわかるかも。

「絢斗さんの格好も素敵だから、磯山先生も驚いちゃいますね」

「でも驚くところがみたいなって」

「それはありますね! 磯山先生が驚くの、かなり貴重ですから」

「最近はそうでもないよ。直くんの可愛さに結構驚いているから」

「ああ、それはわかるかも!」

納得する悠真くんに可愛くヘアセットをしてもらったところで、皐月が試着室から出てきた。

「皐月、可愛い!」

「いつもマーメイドラインだから、ふわふわを選んでみたんだ」

「いいね。素敵!」

色柔らかな淡いグリーンのドレスは、皐月という名前にピッタリだ。
悠真くんに綺麗にヘアセットしてもらって、ドレスの準備は万端だ。

「カッコいい執事さんたちが待っているから行こうか」

皐月の声かけでみんなで部屋を出る。
直くんの手を取ると少し緊張しているのがわかる。

「大丈夫だよ」

笑顔を見せると、ホッとしたように可愛い笑顔を見せてくれた。

「お待たせー!」

直くんを中心に並んで、皐月が声をかけた瞬間、執事姿の五人組が口をぽかんと開けてこちらをみていた。
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