377 / 678
みんなへの贈り物
しおりを挟む
<side卓>
「真琴くんが直くんに抱きついた時の成瀬くんの動きは素早かったな」
志良堂が揶揄うと成瀬くんは恥ずかしそうに照れていた。
昔は、いや真琴くんと出会う前はと言った方が正しいだろうか。
こんなふうに感情を表に出すことなどなかった彼が、こうも人間的になったのを目の当たりにすると嬉しくなる。
「成瀬も少しくらい我慢しろよ。相手はまだ中学生の子だぞ」
「それは十分わかっていたんだが、身体が勝手に動いたんだ」
直くんに対して嫉妬むき出しになったわけではなく、真琴くんが抱きしめられて咄嗟に身体が動いたというわけか。
なんとも成瀬くんらしい。それほど真琴くんを愛しているという証拠だろう。
「先生、すみません。彼を驚かせてしまったでしょうか?」
「いや、大丈夫だよ。気にしないでいい。直くんは心の優しい子だからね、成瀬くんが真琴くんを愛しているが故の行動だとわかっているから心配しないでいいよ」
私の言葉に成瀬くんは安堵の表情を浮かべていた。
「それより今日の夕食はどうする? 志良堂は何か考えているのか?」
「そうだな……せっかくだから直くんも一緒に作れるものにしようか。以前、緑川先生のところでお好み焼きを作ったと話していただろう? うちでもお好み焼きにしようか。昼にいっぱい食べているから、これくらいでいいだろう」
「ああ、それなら楽しんで作れそうだな。それにひっくり返すだけなら絢斗もできるかも……」
直くんは絢斗にできることをなんでも探そうとしてくれる優しい子だ。
あの子のおかげで絢斗の手料理が食べられるようになったし、今日もお好み焼きを一緒に作れたら可愛い絢斗の笑顔が見られるかもしれない。
「皐月からいろいろと話は聞いているが、緑川くん……最近は頑張っているそうじゃないか。磯山におにぎりも作っていると聞いているぞ」
「えっ? 緑川教授がおにぎりを? それはすごいですね」
「直くんのおかげなんだよ、直くんが絢斗にもできるものを探してくれるんだ。本当にいい子だよ、あの子は」
「そうか……あの子の存在が緑川くんにもいい影響を与えているようだな」
そんな話をしていると、廊下をかけてくる音が聞こえた。
もうおしゃべりタイムが終わったのかと思っていると、やってきたのは絢斗だけ。
「どうしたんだ?」
「あ、大事なもの渡すの忘れてて……」
絢斗が嬉しそうに私に見せたのは昨夜から張り切って用意していた紙袋。
「ああ、それか。忘れないで良かったな」
「うん。じゃあ戻るね」
絢斗が笑顔で駆け出していくのを見送っていると、
「磯山、今のはなんだ?」
と志良堂に尋ねられる。
「絢斗が鳴宮くんたちみんなにお土産を作ってきたんだ」
「もしかしてリースか? 緑川くんのリースはセンスがいいからな」
絢斗が自信を持って作れるものといえば、今まではリースだったからそう思っても無理はない。
「いや、違うよ。多分もうそろそろ……」
そう言ったと同時にサンムールの方から、「ええーーーっ」と大きな驚きの声が聞こえてくる。
「なんだ? なにがあったんだ?」
今にも駆け出していきそうな志良堂たちを大丈夫だからと押さえて、私は小さなウサギの編みぐるみを見せた。
「これだよ」
「なんだ? ぬいぐるみ?」
「毛糸で編んだ、編みぐるみっていうんだ。これを絢斗が作ったんだよ」
「「「はっ?」」」
絢斗が編み物ができると知っている昇は流石に驚きはしないが、編みぐるみには感心しているのが見える。
そしてなにも知らない志良堂たちは茫然とした表情を見せている。
「えっ? これを緑川教授が編んだんですか?」
「そうだ。うまくできているだろう?」
「いやいやうまいなんてそんな簡単なレベルではないですよ。凄すぎです……」
成瀬くんが茫然としながら私の手の中にある編みぐるみを見つめている。
「私もここまで絢斗がハマるとは思っていなかったんだが、ほら、絢斗は数学が得意だろう? 編みぐるみには物理や数学的要素があるから自分で数式を作って編んでいたよ」
「確かにこの緻密さは計算し尽くされてますね。安慶名も近くで見てみるといい。すごいぞ」
成瀬くんの言葉に安慶名くんも近寄ってきて絢斗の編みぐるみをじっくりと見つめている。
「本当にこれはものすごい才能ですね。じゃあ悠真にもこの編みぐるみを?」
「ああ、みんなの分を作っていたからな」
「そうか、緑川くんの手作りでみんなでお揃いなら皐月も喜んでいるだろう」
絢斗の新たな才能をみんなに教えることができて良かった。
今頃、絢斗も大喜びしていることだろう。
「真琴くんが直くんに抱きついた時の成瀬くんの動きは素早かったな」
志良堂が揶揄うと成瀬くんは恥ずかしそうに照れていた。
昔は、いや真琴くんと出会う前はと言った方が正しいだろうか。
こんなふうに感情を表に出すことなどなかった彼が、こうも人間的になったのを目の当たりにすると嬉しくなる。
「成瀬も少しくらい我慢しろよ。相手はまだ中学生の子だぞ」
「それは十分わかっていたんだが、身体が勝手に動いたんだ」
直くんに対して嫉妬むき出しになったわけではなく、真琴くんが抱きしめられて咄嗟に身体が動いたというわけか。
なんとも成瀬くんらしい。それほど真琴くんを愛しているという証拠だろう。
「先生、すみません。彼を驚かせてしまったでしょうか?」
「いや、大丈夫だよ。気にしないでいい。直くんは心の優しい子だからね、成瀬くんが真琴くんを愛しているが故の行動だとわかっているから心配しないでいいよ」
私の言葉に成瀬くんは安堵の表情を浮かべていた。
「それより今日の夕食はどうする? 志良堂は何か考えているのか?」
「そうだな……せっかくだから直くんも一緒に作れるものにしようか。以前、緑川先生のところでお好み焼きを作ったと話していただろう? うちでもお好み焼きにしようか。昼にいっぱい食べているから、これくらいでいいだろう」
「ああ、それなら楽しんで作れそうだな。それにひっくり返すだけなら絢斗もできるかも……」
直くんは絢斗にできることをなんでも探そうとしてくれる優しい子だ。
あの子のおかげで絢斗の手料理が食べられるようになったし、今日もお好み焼きを一緒に作れたら可愛い絢斗の笑顔が見られるかもしれない。
「皐月からいろいろと話は聞いているが、緑川くん……最近は頑張っているそうじゃないか。磯山におにぎりも作っていると聞いているぞ」
「えっ? 緑川教授がおにぎりを? それはすごいですね」
「直くんのおかげなんだよ、直くんが絢斗にもできるものを探してくれるんだ。本当にいい子だよ、あの子は」
「そうか……あの子の存在が緑川くんにもいい影響を与えているようだな」
そんな話をしていると、廊下をかけてくる音が聞こえた。
もうおしゃべりタイムが終わったのかと思っていると、やってきたのは絢斗だけ。
「どうしたんだ?」
「あ、大事なもの渡すの忘れてて……」
絢斗が嬉しそうに私に見せたのは昨夜から張り切って用意していた紙袋。
「ああ、それか。忘れないで良かったな」
「うん。じゃあ戻るね」
絢斗が笑顔で駆け出していくのを見送っていると、
「磯山、今のはなんだ?」
と志良堂に尋ねられる。
「絢斗が鳴宮くんたちみんなにお土産を作ってきたんだ」
「もしかしてリースか? 緑川くんのリースはセンスがいいからな」
絢斗が自信を持って作れるものといえば、今まではリースだったからそう思っても無理はない。
「いや、違うよ。多分もうそろそろ……」
そう言ったと同時にサンムールの方から、「ええーーーっ」と大きな驚きの声が聞こえてくる。
「なんだ? なにがあったんだ?」
今にも駆け出していきそうな志良堂たちを大丈夫だからと押さえて、私は小さなウサギの編みぐるみを見せた。
「これだよ」
「なんだ? ぬいぐるみ?」
「毛糸で編んだ、編みぐるみっていうんだ。これを絢斗が作ったんだよ」
「「「はっ?」」」
絢斗が編み物ができると知っている昇は流石に驚きはしないが、編みぐるみには感心しているのが見える。
そしてなにも知らない志良堂たちは茫然とした表情を見せている。
「えっ? これを緑川教授が編んだんですか?」
「そうだ。うまくできているだろう?」
「いやいやうまいなんてそんな簡単なレベルではないですよ。凄すぎです……」
成瀬くんが茫然としながら私の手の中にある編みぐるみを見つめている。
「私もここまで絢斗がハマるとは思っていなかったんだが、ほら、絢斗は数学が得意だろう? 編みぐるみには物理や数学的要素があるから自分で数式を作って編んでいたよ」
「確かにこの緻密さは計算し尽くされてますね。安慶名も近くで見てみるといい。すごいぞ」
成瀬くんの言葉に安慶名くんも近寄ってきて絢斗の編みぐるみをじっくりと見つめている。
「本当にこれはものすごい才能ですね。じゃあ悠真にもこの編みぐるみを?」
「ああ、みんなの分を作っていたからな」
「そうか、緑川くんの手作りでみんなでお揃いなら皐月も喜んでいるだろう」
絢斗の新たな才能をみんなに教えることができて良かった。
今頃、絢斗も大喜びしていることだろう。
1,231
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる