ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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みんなへの贈り物

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<side卓>

「真琴くんが直くんに抱きついた時の成瀬くんの動きは素早かったな」

志良堂が揶揄うと成瀬くんは恥ずかしそうに照れていた。
昔は、いや真琴くんと出会う前はと言った方が正しいだろうか。
こんなふうに感情を表に出すことなどなかった彼が、こうも人間的になったのを目の当たりにすると嬉しくなる。

「成瀬も少しくらい我慢しろよ。相手はまだ中学生の子だぞ」

「それは十分わかっていたんだが、身体が勝手に動いたんだ」

直くんに対して嫉妬むき出しになったわけではなく、真琴くんが抱きしめられて咄嗟に身体が動いたというわけか。
なんとも成瀬くんらしい。それほど真琴くんを愛しているという証拠だろう。

「先生、すみません。彼を驚かせてしまったでしょうか?」

「いや、大丈夫だよ。気にしないでいい。直くんは心の優しい子だからね、成瀬くんが真琴くんを愛しているが故の行動だとわかっているから心配しないでいいよ」

私の言葉に成瀬くんは安堵の表情を浮かべていた。

「それより今日の夕食はどうする? 志良堂は何か考えているのか?」

「そうだな……せっかくだから直くんも一緒に作れるものにしようか。以前、緑川先生のところでお好み焼きを作ったと話していただろう? うちでもお好み焼きにしようか。昼にいっぱい食べているから、これくらいでいいだろう」

「ああ、それなら楽しんで作れそうだな。それにひっくり返すだけなら絢斗もできるかも……」

直くんは絢斗にできることをなんでも探そうとしてくれる優しい子だ。
あの子のおかげで絢斗の手料理が食べられるようになったし、今日もお好み焼きを一緒に作れたら可愛い絢斗の笑顔が見られるかもしれない。

「皐月からいろいろと話は聞いているが、緑川くん……最近は頑張っているそうじゃないか。磯山におにぎりも作っていると聞いているぞ」

「えっ? 緑川教授がおにぎりを? それはすごいですね」

「直くんのおかげなんだよ、直くんが絢斗にもできるものを探してくれるんだ。本当にいい子だよ、あの子は」

「そうか……あの子の存在が緑川くんにもいい影響を与えているようだな」

そんな話をしていると、廊下をかけてくる音が聞こえた。

もうおしゃべりタイムが終わったのかと思っていると、やってきたのは絢斗だけ。

「どうしたんだ?」

「あ、大事なもの渡すの忘れてて……」

絢斗が嬉しそうに私に見せたのは昨夜から張り切って用意していた紙袋。

「ああ、それか。忘れないで良かったな」

「うん。じゃあ戻るね」

絢斗が笑顔で駆け出していくのを見送っていると、

「磯山、今のはなんだ?」

と志良堂に尋ねられる。

「絢斗が鳴宮くんたちみんなにお土産を作ってきたんだ」

「もしかしてリースか? 緑川くんのリースはセンスがいいからな」

絢斗が自信を持って作れるものといえば、今まではリースだったからそう思っても無理はない。

「いや、違うよ。多分もうそろそろ……」

そう言ったと同時にサンムールの方から、「ええーーーっ」と大きな驚きの声が聞こえてくる。

「なんだ? なにがあったんだ?」

今にも駆け出していきそうな志良堂たちを大丈夫だからと押さえて、私は小さなウサギの編みぐるみを見せた。

「これだよ」

「なんだ? ぬいぐるみ?」

「毛糸で編んだ、編みぐるみっていうんだ。これを絢斗が作ったんだよ」

「「「はっ?」」」

絢斗が編み物ができると知っている昇は流石に驚きはしないが、編みぐるみには感心しているのが見える。
そしてなにも知らない志良堂たちは茫然とした表情を見せている。

「えっ? これを緑川教授が編んだんですか?」

「そうだ。うまくできているだろう?」

「いやいやうまいなんてそんな簡単なレベルではないですよ。凄すぎです……」

成瀬くんが茫然としながら私の手の中にある編みぐるみを見つめている。

「私もここまで絢斗がハマるとは思っていなかったんだが、ほら、絢斗は数学が得意だろう? 編みぐるみには物理や数学的要素があるから自分で数式を作って編んでいたよ」

「確かにこの緻密さは計算し尽くされてますね。安慶名も近くで見てみるといい。すごいぞ」

成瀬くんの言葉に安慶名くんも近寄ってきて絢斗の編みぐるみをじっくりと見つめている。

「本当にこれはものすごい才能ですね。じゃあ悠真にもこの編みぐるみを?」

「ああ、みんなの分を作っていたからな」

「そうか、緑川くんの手作りでみんなでお揃いなら皐月も喜んでいるだろう」

絢斗の新たな才能をみんなに教えることができて良かった。
今頃、絢斗も大喜びしていることだろう。
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