ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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心強い味方が増えた

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「昇くん、直くんは寝た?」

コーヒーを持ってソファーに向かうとすぐに絢斗さんが直くんの様子を聞いてきた。

「うん、もうぐっすり。お風呂の中でも楽しそうに話してたからいい夢を見られてると思う」

「それならよかった。皐月からも今日はすっごく楽しかったってメッセージ来てたよ」

今日の皐月さんは終始楽しそうだった。
悠真さんと真琴さんと直くんが戯れている姿を嬉しそうに見ていたもんな。

「俺も、今日は成瀬さんと伊織さんと話ができてよかった」

「何か良いアドバイスをもらった?」

伯父さんはまだ絢斗さんには話していない様子だったけど、こういうことには聡い絢斗さんは俺が何かを決意したことに気づいているだろう。

「うん。絢斗さんにも聞いてもらいたいことがあるんだ。俺、法学部への進学をやめようと思う。医学部に進学する」

「えっ?」

想像していなかっただろう俺の言葉に絢斗さんが驚きの声を上げた。
俺が十年くらい前からずっと桜城大学の法学部に行って絢斗さんの講義を受けて、伯父さんのような弁護士になると言い続けていたから驚くのも無理はない。

「でも、もう十二月のこの時期に進路変更なんて……しかも法学部と医学部じゃ共通テストも……」

「うん。無理だってことはわかってる。理系も文系もどちらも単位は取っているから問題ないんだけど、共通テストは文系で申し込んでいるから変更はできない。だからこのままじゃ医学部を受験することもできない」

「じゃあどうするの?」

「今回は受験せずに、再来年の共通テストを受けて医学部に進もうと思う。それが俺の出した結論です」

成瀬さんと伊織さんから話を聞いて考えたけれど、考えれば考えるほどそれ以外の道はないと思えた。

「浪人して医学部を受験するの? それじゃあ昇くんは将来はお医者さんになるってこと?」

「将来は今まで通り弁護士を目指そうと思ってる。医学部に通いながら独学で司法試験の勉強をして弁護士資格を取るつもりだよ」

「あ、成瀬くんみたいにってこと?」

「うん。そうなんだ。がんばってダブルライセンスを目指そうと思う」

絢斗さんは俺の言葉を聞いた後で、真剣な表情で俺を見た。

「昇くんがダブルライセンスを目指そうと思った理由を聞いてもいいかな? お医者さんになる予定もないのに医学部に通ってまで医師免許を取るのはなぜ?」

「俺は、一生直くんを守っていきたいんだ。直くんはお医者さんにトラウマがあって、今は大おじさんが直くんの主治医になってくれているけど、大おじさんもずっと直くんのそばにいてくれるわけじゃない」

俺の言葉に絢斗さんがハッと息を呑んだ。
直くんのそばにいないってことは大おじさんがこの世にいないってことだもんな。

「ごめん、絢斗さんを傷つけるつもりじゃないんだ。でも俺はそのことも考えて、直くんのために医師免許を取りたいと思ったんだ。直くんも俺になら心を許して診察させてくれると思うし、一生そばで守ってやれる。今、一年浪人して弁護士になるまでに遠回りになってしまうとしても、この決断は正しいと思ってる」

俺は言いたいことを全て伝えた。
絢斗さんはどう思うだろう?

医師である大おじさんをずっと間近で見ているから、俺の考えが甘いと思うだろうか?
それでも俺は自分の気持ちに正直でありたい。
絢斗さんはじっと俺の目を見ていたけれど、ほんの少し頬を緩めてゆっくりと口を開いた。

「昇くんがどれだけ真剣に直くんの将来を考えてくれているのかがよくわかったよ。私は昇くんの決断を支持するよ」

「――っ、絢斗さん! ありがとう!!」

心強い味方ができて俺は本当に嬉しかった。

「あの、それで父さんとの約束なんだけど……」

「桜城大学に合格しなかったらフランスに連れて行くっていうあれ?」

「うん。父さん、言い出したら聞かないからそれだけが心配だったんだけど、伯父さんは大丈夫だって言ってくれたんだ。絢斗さんも味方になってくれるかな?」

「もちろん! 二葉さんも昇くんの気持ちを知ったら賛成するだろうし、うちのお父さんも、寛さんも認めてくれるよ。だって、直くんのためにこれ以上いい案はないから。安心して!」

伯父さんと同様に賛成してくれて本当に心強い。
これで直くんを泣かせずに済む。

「毅たち……クリスマスには一時帰国するだろう?」

「うん、言ってたね」

「直くんにはサプライズにしたいと言っていたから当日まで内緒にしておいてくれ」

「うん、わかった」

そうだ。父さんと母さんがクリスマスに帰ってくるんだった。俺の決心を伝えるために早めに国際電話でもかけようと思っていたけれどその時に面と向かって話をするか。

「まぁその前に、直くんからの贈り物が届いてサプライズされるんだろうがな」

「あ、そうだね」

先日送った直くんの手作りマフラー。
あと数日で父さんたちの元に届く。

あの時同封した手紙には、桜城大学法学部への首席合格を誓っていた。
この数日で自分の気持ちがこうも変わるとは思っていなかったけれど、今の自分の気持ちに誠実でありたい。

「あっ!」

「何? 絢斗さん」

「あ、ううん。なんでもない。関係ないことだから大丈夫」

急に何かを思い出したような絢斗さんの様子が気になったけれど大丈夫と言われたらそれ以上尋ねたりはしない。
関係ないことだと言っていたから大丈夫なんだろう。

「クリスマスパーティーが終わったらお前の進路について毅たちと話をしよう。その前に父と賢将さんには話しておくよ」

「うん。ありがとう。じゃあ、俺……部屋に戻るよ。明日の朝食は俺が作るから安心して」

俺の言葉に絢斗さんがほんのりと頬を染めていたけれど、伯父さんは堂々とした様子で頼むよと言っていた。

今夜も絶対に直くんを伯父さんたちの部屋に行かせるわけにはいかないな。
気をつけておこう。
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