ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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昇からのメッセージの理由

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<side卓>

父と賢将さんとの話を終えて、車に乗り込みスマホを確認した。

絢斗からは連絡はない。
その代わりに昇からのメッセージが入っていた。

しかも二通も。

何事かと思って先に送られてきていた方から開いてみれば、私の外出の理由を買い物にしておくという連絡事項だった。
なるほど、それなら何か足りない食材でも買って帰ろうか。

そう思いながら、残りのメッセージを開くと、

<絢斗さんと直くんは動画に夢中で伯父さんのことを聞かれなかったから、買い物のことは話してないよ。それから……皐月さんから送られてきた動画がてっきりお茶会のものだと思って直くんに見せてもらったら、皐月さんの部屋で絢斗さんと楽しそうにドレスを選んでいた動画で……その、多分俺が見ちゃいけないものだったと思うんだけど、不可抗力で見てしまいました。ごめんなさい>

と昇にしてはなかなかの長文のメッセージが送られていた。

買い物の話はともかく、昇が見てはいけない絢斗と鳴宮くんの動画が気になる。
昇が謝ってくるほどの内容なのか?

気になって仕方がない。

私はいても立ってもいられず、志良堂にメッセージを送った。

<鳴宮くんが絢斗に送った動画がどんなものか知っているか?>

私が家に帰るまでに返信がくればいいが……と思っていたら、すぐに志良堂から返信が来た。

<気になるなら送ってやるよ。元々お前用にも送るつもりだったんだ。ちなみに伊織と成瀬くんにもそれぞれの伴侶の可愛い姿を送っているぞ>

そんなメッセージと共に動画が送られてきた。

私は実家の駐車場に留まり続けながら、その動画を再生した。
すぐに、見慣れない部屋の中で絢斗と鳴宮くんが嬉しそうに話をしている様子が画面に映し出された。

――直くんはこの前ピンクベージュの膝丈のドレスだったから……。若いし、ミニもいいかもね!

――うんうん! 十代なら余裕でミニでしょ!

――あ、これよくない?

――ああー! 可愛い、可愛い!! これ、いいよ!

キャピキャピとした高校生のようなノリの二人が楽しげにドレスを選ぶ様子が映っていてなんとも可愛らしい。
しかも絢斗を主役にした動画の作りにこれが絢斗用に編集されたものだという事がわかる。

なるほど、これは鳴宮くんの部屋の中か。
ドレスを選んでいる様子を絢斗視点で編集した動画を送ってくれたわけだな。

安慶名くんと成瀬くんにも送ったものはおそらくこの場面は入っていない。
悠真くんや真琴くんの二人がドレスを選んでいる様子をそれぞれの視点で動画にしたものを送っているのだろう。

昇はそこまでの事実を知らないから、きっと立ち入り禁止になっている鳴宮くんの部屋の様子と、しかも絢斗と鳴宮くんが楽しく戯れている姿を見て、自分が見てはいけないものを見たと思ったに違いない。

ははっ。それほど私が絢斗に対して狭量だと思われているということか。

そこまで狭量さを出しているつもりはなかったが……いや、出しているか。

ウサギにさえ嫉妬してしまうところも見せているのだからな、
昇が急いで謝ってくるのも不思議はないか。

大丈夫だという意味を込めて、昇の好きなものでも買って帰ろうか。
私は昇が昔から好んで食べていた<星彩庵>の和菓子を買いに車を走らせた。

<星彩庵>につくと、店主の安城くんが店に出ていて、私の顔を見てこちらに近づいてきた

「先生、お一人ですか?」

「ちょっと出かけたついでに家族にお土産を買おうと思ってね」

「うちの和菓子をお土産に選んでくださって嬉しいです。ああ、そういえば昇くんはその後どうですか? 大丈夫でしたか?」

結婚式の時に昇が安城くんたちを含めたみんなに相談したのを覚えていたようだ。

「ああ、おかげで昇も落ち着いているよ」

こんな場所で深い話はできないがそれだけ告げると安城くんは安堵の表情を浮かべていた。

「それならよかったです。彼にはこれからも忍耐力が必要になってくると思いますが、必ずそれは報われる日がきますからね」

「そうだな」

昇の我慢と努力が報われる日、それはすなわち直くんが昇のものになってしまう日だが、親としては喜ぶべきなのだろうな。


どら焼きやみたらし団子、草餅、そして抹茶プリンを頼むと、彼はそれを紙袋に入れて私に渡す際、

「これ試作品なんですが、緑川教授と直くんにどうぞ」

と小箱を渡された。

「これは?」

「櫻葉グループから依頼を受けて作った桜羊羹なんです。来年二月から桜カフェの店頭に並ぶ予定なので、緑川教授と直くんの感想をお聞かせいただきたいです」

「桜羊羹か。直くんは桜味のものを食べるのは初めてだろうな。わかった、渡しておくよ。ありがとう」

安城くんに礼を言って私は急いで帰宅の途についた。
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