ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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突然の来客 <後編>

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倉橋くんがさっとスマホを構える。
毅さんが渡してくれた段ボールカッターで開けるところから撮影が始まるみたい。

子どもの頃、こうしてドキドキしながら誕生日やクリスマスなどのイベントの時に祖父母から送られてきた荷物を開けていたのを思い出す。

決して中のものまで傷つけないように、ゆっくり慎重に段ボールを開けると、綺麗にラッピングされた包みが二つ入っている。それぞれに「ふーちゃんへ」「毅パパへ」とカードが貼り付けられていて直くんからのものだとすぐにわかった。

その上に、昇の字で「父さん、母さんへ」と書かれた封筒が置かれていて、どうやら昇からはこの手紙だけみたい。

昇からの手紙はもちろん気になるけれど、やっぱり直くんからの贈り物が見たくて仕方がない。
その気持ちが伝わったのか、毅さんが昇の手紙を手に取った。

「二葉は先に直くんからの贈り物を開けるといい。私は昇の手紙を読んでおくよ」

「ありがとう」

ドキドキしながら、直くんからの包みを手に取る。
丁寧にリボンが結ばれていて、それを解くのもドキドキしてしまう。
スッと袋を開け、まだ見ないように手だけを差し込むとふわっと柔らかな感触に包まれる。

「これ……」

その柔らかな感触をそのまま包みの外に出すと、目に飛び込んできたのは美しい菖蒲色の毛糸で編まれたもの。

「わっ……素敵! これ……マフラーだわ!!」

広げてみるとその編み目模様の美しさに驚いてしまう。
柔らかな毛糸の感触と美しさにすぐに首に巻くと、優しく包まれて温かい。

「わぁ! とても温かいわ!! 直くん、素敵なマフラーを選んでくれたのね。寒いフランスにはぴったりだわ」

頬に当てるとチクチクもしない。
ずっと当てていたいくらいに心地良い。

「ねぇ、見て! 毅さん、似合う?」

「とてもよく似合うよ。二葉にぴったりだ」

「あら? 毅さん、どうしたの? 目が……」

私に向けてくれる笑顔はいつもと同じなのに目が潤んでいる気がする。

「その包みに直くんからの手紙が入っているはずだよ。読んでごらん」

「えっ? ええ」

手紙も入れてくれていたのね。手だけを差し込んでいたから気づかなかったわ。
もう一度包みをとって中を見てみると、綺麗な封筒が入っていた。

<ふーちゃんへ>

綺麗な字で書かれた封筒を開け、中の手紙に目を通す。

「えっ、これ……」


<ふーちゃんへ。フランスの冬はとても寒いと聞きました。一花さんに編み物を教えてもらったので、少しでも寒さを和らげることができたらと思って、マフラーを編んでみました。初めてなので難しくて完成までに時間がかかりましたが、なんとか出来上がりました。使ってもらえたら嬉しいです。ふーちゃんにまた会える日を楽しみにしています。直純>

「なお、くんの……て、あみ……?」

「そうみたいだよ。昇からの手紙にも直くんが私たちのために毎日遅くまで一生懸命マフラーを編んでいたから、使って欲しいと書かれている。だが、二葉のをみる限り、初めて編んだとは思えない出来だな」

直くんが、私と毅さんのために……編んでくれたの?

その姿を想像するだけで涙が溢れてくる。

「直くん……」

「二葉」

さっとハンカチを手渡されて涙を拭いながら、自分の首元を温めてくれているマフラーの感触に笑みが溢れた。

「毅さんも開けてみて! 直くんのマフラー、毅さんのはどんな色かしら?」

箱から包みを取り出して、毅さんに渡すと嬉しそうにリボンを解き始める。
手を差し入れて出てきたのは、優しい縹色のマフラー。

「わぁ! 素敵!!」

「なるほど。彼には毅さんがそういうイメージなんでしょうね」

倉橋さんの言葉に思わず頷いてしまう。
毅さんへの直くんのイメージが縹色、か……。
親しみやすく爽やかな印象。

「直くん、毅さんのことを本当にパパだと思っているのかもね」

「ははっ。兄さんが嫉妬しそうだな」

そう言いながらも、嬉しそうにマフラーをつけている。
その表情はとても明るい。

「今日、早速つけていくことにするよ」

「ええ、今日のスーツにもとても似合うわ」

きっと会社でも話題になりそうね。

「倉橋くん、航くん。素敵な贈り物を届けてくれてありがとう」

「いえ、お二人の喜びの映像はしっかりと届けておきますよ。なぁ、航」

「はい。お二人ともそのマフラー、すごく似合ってます」

少し目を潤ませながら褒めてくれる航くんの姿に、少し直くんが重なる。

「ありがとう。ねぇ、毅さん。倉橋くんと航くんにお礼がしたいわ」

「そうだな。どうかな? 今日の夕食を一緒に」

毅さんの誘いに倉橋くんは笑顔を見せた。

「大変ありがたいのですが、今夜は先約がありまして。その代わりにこれから奥方をランチとスイーツに誘ってもよろしいですか?」

「嬉しいわ!! 毅さん、良いかしら?」

「もちろん、行っておいで。寒いからマフラーをつけていくといい」

そうして、私は直くんのマフラーを身につけて、久しぶりに日本の友人とランチとスイーツを楽しんだ。

ああ、クリスマスにはこのお礼をたっぷりしないとね。
さらにクリスマスが楽しみになってしまった。
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