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初めての手紙
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「直くん、待ちきれないみたい」
あやちゃんの楽しそうな声にハッと我に返る。
おじいちゃまとおじいちゃんは僕の行動を不思議に思ったのか、じっと僕をみていた。
「あ、つい。あのホテルでピアノを弾いてから、楽しくなると無意識に指が動いちゃうんです。すみません」
パパたちと一緒に暮らすようになる前は自分の憩いの時間がピアノのことを考えている時だった。だから学校でもふとした時に指が動いているのをクラスメイトに指摘されたこともあった。でも、家では勉強中に指を動かしているのを母さんに見られると指を叩かれて怒られていたから家ではしなくなった。というか、しないように必死に意識していたと思う。
この家に来てからはずっとピアノと離れた生活をしていたし、何より毎日がピアノがなくても楽しすぎてその癖もなくなったと思っていた。けれど、一度楽しく弾いたら指が思い出してしまったみたいだ。つい、指が動いてしまう。
「何も謝ることなんてないよ。私も賢将さんも直くんの可愛い姿を見られて最高に幸せだと思っているよ」
「あの、じゃあ……家の中でしてても怒られない、ですか?」
「誰が怒ったりするものか。ずっと見ていたいくらい可愛いよ」
おじいちゃまの言葉におじいちゃんも大きく頷く。
おじいちゃんの隣であやちゃんも嬉しそうに笑っていた。
「直くん、ピアノが来る前にしたいことがあるんじゃなかった?」
「あ。そうだ!」
久しぶりのおじいちゃんたちとの対面と、特別なケーキ、それにピアノのことですっかり飛んでしまっていた。
「せっかくだから目を瞑っててもらおうか」
あ、それ楽しい!
でもあまり期待されるのも困るかな?
そう思ったけれど、楽しさの方が上回ってしまって僕は二人に頼んでしまった。
「おじいちゃま。おじいちゃん。目を瞑っててもらってもいいですか?」
「目を? こうかな?」
二人が一緒に目を閉じる。
あやちゃんがおじいちゃんとおじいちゃまの目の前で手を振るけれど、何も反応がない。
「直くん、大丈夫だよ」
あやちゃんに言われて、僕はソファーの陰に置いていた紙袋を取りに行った。
紙袋にはおじいちゃまとおじいちゃんの名前を書いたシールを貼り付けておいたから間違えないように渡さないと!
ブルーグレーの毛糸で編んだケーブル模様のマフラーがおじいちゃま。
クリーム色の毛糸で編んだアラン模様のマフラーがおじいちゃん。
どちらの模様もすっごく難しくて、何度もやり直したけれどなんと形になるものが作れたと自分では思っている。
毛糸を選ぶときについつい明るくて綺麗な色に目がいってしまって、おじいちゃまやおじいちゃんには似合わないって言われると思ったけれど、あやちゃんが冬服は暗い色が多いから明るくて綺麗な色の方が顔が明るく見えていいと思うよっていってくれたんだ。それに、僕が選んだ色ならみんな気にいると思うよとも言ってくれて、それで心置きなく好きな色を選ぶことができたんだ。
ふーちゃんと毅パパ。それに昇さんは今のところ僕のマフラーを喜んでくれて、すぐに使ってくれている。
それがすごく嬉しいから。おじいちゃまとおじいちゃんも使ってくれたら嬉しいな。
僕はドキドキしながら、目を瞑ってくれているおじいちゃんとおじいちゃまの目の前のテーブルに紙袋を乗せた。
あやちゃんがおじいちゃんたちにスマホを向けてくれているのが見える。
わぁ、どんな反応してくれるだろう……。
「め、目を開けて、ください」
緊張しすぎて上擦ってしまった。恥ずかしい。
ゆっくりとおじいちゃまとおじいちゃんの目が開いていく。
そして目の前の紙袋を見つけた途端、二人して動きが止まってしまった。
そして、二人とも同時に紙袋を取り、まずは僕が紙袋に貼り付けていた紙をじっくりと読み始めた。
<大好きなおじいちゃま。いつも優しく見守ってくれてありがとうございます。感謝の気持ちを込めて、おじいちゃまにマフラーを編みました。これからもっと寒くなるのでこのマフラーをつけていつまでも元気で長生きしてください。孫の直より>
<大好きなおじいちゃん。おじいちゃんの診察のおかげで僕は元気になりました。感謝の気持ちを込めておじいちゃんにマフラーを編みました。おじいちゃんに使ってもらえたらすごく嬉しいです。おじいちゃんといつまでも過ごせますように……。孫の直より>
おじいちゃんにお手紙を書くのは初めてだから、すごく緊張した。
手紙を読んだおじいちゃまとおじいちゃんの表情がみるみるうちに変わっていって、おじいちゃまの手が紙袋の中に入っていく。その様子をおじいちゃまの隣に座っていたおじいちゃんも静かに見守っているように見えた。
そして中からゆっくりと引き抜くと僕が作ったマフラーが出てきた。
小さく折りたたんで入れていたそれをそっと両手に乗せると、おじいちゃまは嬉しそうに頬に当てた。
「直くん、暖かいよ。本当に暖かい……ありがとう。嬉しいよ」
そう言ってくれるおじいちゃまの目はほんのり潤んでいる気がした。
その様子を見ていたおじいちゃんが、同じように紙袋に手を入れる。
そしてゆっくりと引き抜くと、僕のマフラーを見てものすごい笑顔を見せてくれた。
「すごいな、アラン模様じゃないか。直くん……ありがとう。本当に嬉しいよ」
おじいちゃんは何度もありがとうと言いながら、僕が作ったマフラーを嬉しそうに首にかけてくれた。
あやちゃんの楽しそうな声にハッと我に返る。
おじいちゃまとおじいちゃんは僕の行動を不思議に思ったのか、じっと僕をみていた。
「あ、つい。あのホテルでピアノを弾いてから、楽しくなると無意識に指が動いちゃうんです。すみません」
パパたちと一緒に暮らすようになる前は自分の憩いの時間がピアノのことを考えている時だった。だから学校でもふとした時に指が動いているのをクラスメイトに指摘されたこともあった。でも、家では勉強中に指を動かしているのを母さんに見られると指を叩かれて怒られていたから家ではしなくなった。というか、しないように必死に意識していたと思う。
この家に来てからはずっとピアノと離れた生活をしていたし、何より毎日がピアノがなくても楽しすぎてその癖もなくなったと思っていた。けれど、一度楽しく弾いたら指が思い出してしまったみたいだ。つい、指が動いてしまう。
「何も謝ることなんてないよ。私も賢将さんも直くんの可愛い姿を見られて最高に幸せだと思っているよ」
「あの、じゃあ……家の中でしてても怒られない、ですか?」
「誰が怒ったりするものか。ずっと見ていたいくらい可愛いよ」
おじいちゃまの言葉におじいちゃんも大きく頷く。
おじいちゃんの隣であやちゃんも嬉しそうに笑っていた。
「直くん、ピアノが来る前にしたいことがあるんじゃなかった?」
「あ。そうだ!」
久しぶりのおじいちゃんたちとの対面と、特別なケーキ、それにピアノのことですっかり飛んでしまっていた。
「せっかくだから目を瞑っててもらおうか」
あ、それ楽しい!
でもあまり期待されるのも困るかな?
そう思ったけれど、楽しさの方が上回ってしまって僕は二人に頼んでしまった。
「おじいちゃま。おじいちゃん。目を瞑っててもらってもいいですか?」
「目を? こうかな?」
二人が一緒に目を閉じる。
あやちゃんがおじいちゃんとおじいちゃまの目の前で手を振るけれど、何も反応がない。
「直くん、大丈夫だよ」
あやちゃんに言われて、僕はソファーの陰に置いていた紙袋を取りに行った。
紙袋にはおじいちゃまとおじいちゃんの名前を書いたシールを貼り付けておいたから間違えないように渡さないと!
ブルーグレーの毛糸で編んだケーブル模様のマフラーがおじいちゃま。
クリーム色の毛糸で編んだアラン模様のマフラーがおじいちゃん。
どちらの模様もすっごく難しくて、何度もやり直したけれどなんと形になるものが作れたと自分では思っている。
毛糸を選ぶときについつい明るくて綺麗な色に目がいってしまって、おじいちゃまやおじいちゃんには似合わないって言われると思ったけれど、あやちゃんが冬服は暗い色が多いから明るくて綺麗な色の方が顔が明るく見えていいと思うよっていってくれたんだ。それに、僕が選んだ色ならみんな気にいると思うよとも言ってくれて、それで心置きなく好きな色を選ぶことができたんだ。
ふーちゃんと毅パパ。それに昇さんは今のところ僕のマフラーを喜んでくれて、すぐに使ってくれている。
それがすごく嬉しいから。おじいちゃまとおじいちゃんも使ってくれたら嬉しいな。
僕はドキドキしながら、目を瞑ってくれているおじいちゃんとおじいちゃまの目の前のテーブルに紙袋を乗せた。
あやちゃんがおじいちゃんたちにスマホを向けてくれているのが見える。
わぁ、どんな反応してくれるだろう……。
「め、目を開けて、ください」
緊張しすぎて上擦ってしまった。恥ずかしい。
ゆっくりとおじいちゃまとおじいちゃんの目が開いていく。
そして目の前の紙袋を見つけた途端、二人して動きが止まってしまった。
そして、二人とも同時に紙袋を取り、まずは僕が紙袋に貼り付けていた紙をじっくりと読み始めた。
<大好きなおじいちゃま。いつも優しく見守ってくれてありがとうございます。感謝の気持ちを込めて、おじいちゃまにマフラーを編みました。これからもっと寒くなるのでこのマフラーをつけていつまでも元気で長生きしてください。孫の直より>
<大好きなおじいちゃん。おじいちゃんの診察のおかげで僕は元気になりました。感謝の気持ちを込めておじいちゃんにマフラーを編みました。おじいちゃんに使ってもらえたらすごく嬉しいです。おじいちゃんといつまでも過ごせますように……。孫の直より>
おじいちゃんにお手紙を書くのは初めてだから、すごく緊張した。
手紙を読んだおじいちゃまとおじいちゃんの表情がみるみるうちに変わっていって、おじいちゃまの手が紙袋の中に入っていく。その様子をおじいちゃまの隣に座っていたおじいちゃんも静かに見守っているように見えた。
そして中からゆっくりと引き抜くと僕が作ったマフラーが出てきた。
小さく折りたたんで入れていたそれをそっと両手に乗せると、おじいちゃまは嬉しそうに頬に当てた。
「直くん、暖かいよ。本当に暖かい……ありがとう。嬉しいよ」
そう言ってくれるおじいちゃまの目はほんのり潤んでいる気がした。
その様子を見ていたおじいちゃんが、同じように紙袋に手を入れる。
そしてゆっくりと引き抜くと、僕のマフラーを見てものすごい笑顔を見せてくれた。
「すごいな、アラン模様じゃないか。直くん……ありがとう。本当に嬉しいよ」
おじいちゃんは何度もありがとうと言いながら、僕が作ったマフラーを嬉しそうに首にかけてくれた。
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