エリート警察官僚はようやく見つけた運命の相手を甘やかしたくてたまらない!

波木真帆

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番外編

アップルパイを買いに  3

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すみません。3話で終わらなかったので、タイトル表記変えました。
次回で完結予定です。

   *   *   *


警視庁に戻り、全ての仕事を早々に終わらせる。今日は絶対に遅れて帰るわけにはいかない。

「真壁警視正……あの、この後何か、重要な案件でも?」

新海から恐る恐る尋ねられるほど、その時の私は仕事に没頭しすぎて近寄りがたい緊張を与えていたようだ。

「いや、今日は仕事を終えたら早く帰りたいだけだ。要さんにプレゼントがあるからな」

そう告げると、新海は一瞬茫然とした表情を見せたが、すぐに表情を緩めた。

「警視正の感情の源はすべて久代さんなんですね」

「まぁな。というわけで、私は帰る。あとのことは頼むぞ」

「はい。お任せください!」

新海に任せておけば安心だ。
私は急いで駐車場に向かい、自宅へ車を走らせた。

地下駐車場からそのまま自宅のある階に向かう。
鍵を開けて入ればいいのだが、私は必ずチャイムを鳴らすことにしている。

それは……

「冬貴さん! おかえりなさい!」

こうして要さんが満面の笑みで私を出迎えてくれるからだ。
それを見たくて必ずチャイムを鳴らす。

愛しい要さんをしっかりと胸に抱きしめて、離れていた時間を補うようにキスをする。
このまま深いキスをして、寝室に連れ込んでしまいたいところだが、今日はこのあとの予定がある。
名残惜しく思いつつも、ゆっくりと唇を離す。
頬を染めてうっとりと私を見上げる要さんの姿を見られただけで、今は我慢しておこう。

「要さん。これ、お土産です」

「えっ、お土産?」

「ええ。今日、仕事で成田空港に行く用事があったんですよ。それで美味しそうなアップルパイが売っていたので一つ買ってきました」

背中に隠していたアップルパイを紙袋ごと要さんの前に差し出すと、要さんはそれはそれは驚きの表情を見せた。
無理もない。食べたいと言っていたものが目の前にあるんだから。
でもこれを知っていることは要さんに内緒にしておかないとな。

「要さん、アップルパイ……苦手、でしたか?」

「ちがっ、大好きなんです! これ、食べてみたいって思ってて……冬貴さん、もしかして……」

まずい、こっそり映像でのぞいていた事がバレたか?

そう思ったが……

「魔法使い、ですか?」

キラキラとした目でそんな可愛いことを尋ねられる。
ああ、もう本当にこのまま押し倒してしまいたいくらいだ。
ここは要さんの夢を壊さないでおくか。

「ええ。要さんだけの魔法使いですよ。さぁ、リビングに行きましょう」

「わっ!」

さっと要さんを抱きかかえて中にはいる。

「私が着替えている間、アップルパイを開けていてもいいですよ」

待ち遠しいだろうと思ったが、要さんは首を振り、一緒に部屋に行きたいと言ってくれた。
アップルパイをダイニングテーブルに置き、部屋に行く。

どうやら着替えを手伝ってくれるようだ。

「それじゃあ、要さんも着替えましょう」

「えっ? どうしてですか?」

「せっかく早めに帰ってきたので、今日は外に食事に行きませんか? 友人から美味しいお店を教えてもらったんです。要さんと夜のデート、したいんです」

そういうと、要さんは一気に顔を赤らめながらも嬉しそうに頷いてくれた。
そうして、私たちはお互いが選んだ服に身を包み、外食に出かけた。

場所は銀座。
店から少し離れた駐車場に車を止めて、歩いて向かうことにした。

「要さん。手を繋ぎましょう。人が多いので逸れると危ないですよ」

「で、でも……男同士で繋いでいたら、変におもわれませんか? 私は何を思われてもいいんですけど、冬貴さんが変な目で見られるのは嫌です」

「大丈夫ですよ。みんな、自分の恋人に夢中で他の人のことなんて見てませんから。ほら」

周りに視線を向けるとみんなが身体を寄せ合い、幸せそうに歩いている。

「ほんと、ですね……」

「だから、気にしないでいいですよ。さぁ」

手を差し出すと、要さんの小さな手がそっと触れた。
その手を優しく握り、私はしばらく銀座デートを楽しみながら店に向かった。

「あれ?」

「どうかしましたか?」

要さんが突然立ち止まり、一点を見つめている。

「あの方……ベルンシュトルフホールディングスの方じゃないですか?」

「えっ?」

要さんが教えてくれた場所に視線を向けると確かに今日、空港で会った彼だ。
確か、日下部透也さん。

「要さん、お知り合いですか?」

「いえ、直接お会いしたことはないですけど、笹川コーポレーションと吸収合併した時にニュースでちらっとお顔を拝見してました」

ニュースでちらっと見ただけで顔を覚えているなんて、すごい記憶力だ。
さすが社長秘書して仕事をしていただけのことはある。
社長もすごい人だったんだろうが、要さんの支えなしでは社長が亡くなるまで会社は持たなかったんじゃないか。
そう思わずにいられない。

「ご結婚なさったのは知りませんでしたね」

「えっ? 結婚?」

「ほら、親密そうに手を繋いでますから。あの方が奥さまなのかも」

要さんはそう言っているが、日下部さんのパートナーはあの彼のはずだ。
あの時確かにそう言っていたから間違いない。
だが、日下部さんと隣の女性の様子を見ると、ただの友人には見えない。

「要さん。すみません、挨拶をしに行ってもいいですか?」

「冬貴さんのお知り合いなんですね。ええ、ぜひ行きましょう」

もしかしたらあの警官たちのせいで二人の中を険悪にしてしまったせいで、別々に過ごしているんじゃないか。
そう思うといてもたってもいられなかった。

要さんの了承をとり、二人に近づいた。
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