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番外編
アップルパイを買いに 2
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懐かしいあの人を出したので長くなりました。
結構ヒントが出ているのでどのお話で出てきた人かわかると思います。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
彼の恋人が警官に話しかけられている?
そう言ったか?
気になって彼の後についていった。
大きなキャリーケースのそばに男性がベンチに座っているのが見える。
傍らには警官が二名。詰問しているようだ。
彼が名前を呼びかけると、不安げな表情でこちらをみた。
その顔は確かにどこからどうみても未成年に見える。
「俺、三十だって言ってるのに信じてくれなくて……っ」
そんな声が聞こえてきて驚いた。
要さんが三十四だと言った時も驚いたが、彼はどうみても三十歳には見えない。
だが、その表情で彼が嘘を吐いていないというのは歴然だ。
列に一緒に並んでいた彼は、はっきりとした口調で彼が未成年ではなく自分のパートナーであることを告げた。
そうか。そういう関係だったのか。私と要さんもそうだし、成瀬たちもそうだ。意外と身近にいるものなのだな。
とそんなことは今は二の次だ。
警官二人は彼の主張を嘲笑い、全く信じようとしない。実際にそう見えるのだから仕方がないこともあるが、あの態度は悪すぎる。
彼が仕方なく持っていたパートナーのパスポートを見せると、警官二人は明らかにさっきまでの勢いを落とした。どうやら彼の主張が正しかったようだ。ここで自分たちの非礼を詫びれば……と思っていたが、こともあろうに
「子どもみたいな紛らわしい格好している方が悪い」
と主張し始めた。これはダメだ。このままだと警察官の信頼を失墜させる。
私は黙って静観していたが我慢できずに飛び出した。
「お前たち、なんて物言いだ! 間違えて迷惑かけたんだから、まずは謝罪だろう!」
警官二人はびくりと身体震わせて私をみた。
すぐに私の正体に気づき、表情が一気に青褪めていくが今はこいつらはどうでもいい。
不快な思いをさせてしまった彼らに謝罪をしなければいけない。
「申し訳ありません、私の部下がご迷惑をおかけして失礼しました」
「いえ、わかっていただければいいんですが、先ほどの態度は少し改善していただいた方がいいですね」
はっきりと処罰を望むとは言わないが、明らかな圧を感じる。
それは愛しい人を傷つけられた彼にとって当然の主張だろう。
「はい。それはもう厳しく指導いたします。後であらためてお詫びいたしますので、お名刺いただけますか?」
私の言葉に彼は手慣れた様子で胸ポケットから名刺入れを取り出し、私に手渡した。
<ベルンシュトルフホールディングス 副社長 日下部透也>
そう書かれた名刺を見て、驚きのあまり思わず声が出た。
「真壁警視正、彼らの指導、よろしくお願いしますね」
厳しい顔で日下部さんはそういうと、去り際に私にだけ聞こえる声で
「アップルパイ、愛しい恋人さんに早く食べさせてあげてくださいね」
と優しい声で言ってくれた。
その言葉に感謝しながら私は頭を下げ続けた。
彼らの姿が遠くなったところで頭をあげた私は、隣で萎縮したまま立ち尽くしている警官の二人をギロリと睨みつけた。
「お前たちは、あんな職質の方法をどこで学んだんだ?」
「え、いえ。あの、その……」
「確かにあの彼は未成年に見えるだろう。それは否定しない。だが、それが間違いだったことがわかったのなら直ちに謝るのが常識だろう! お前たちの行動がどれだけ警察官の信頼を失っているのかわからないのか!」
「ひぃっ、も、申し訳ありません!」
「もういい。お前たちはすぐに庁舎に戻れ。始末書を書いて処分が降りるのを待つんだな」
警官二人はこの世の終わりのような表情をしていたが、諦めたようでこの場を離れていった。
私はすぐに先ほどまでいた警察署庁舎の刑事管理官に連絡を入れた。
ー宮城管理官。警視庁の真壁だ。今、いいか?
ーま、真壁警視正。何かございましたか?
彼は入庁後、数年の経験を積んだ後、沖縄本島の警察署署長、離島の警察署署長などを歴任し、今年、この成田空港の警察署庁舎勤務となった。以前、成瀬と安慶名が宮古島で事件に関わった時、署長をしていたのがこの彼だったと二人から話を聞いて知っていた。
私は宮城管理官に先ほどの警官二人の行動を全て説明した。
話を聞く間、彼は絶句して何も答えられなかったようだ。
ー彼らには始末書を書くように指示したが、処分は免れない。
ーはい。それは重々承知しております。私の監督不行き届きで真壁警視正のお手を煩わせてしまい申し訳ございません。
ー君の謝罪はいい。あとはしっかり頼むぞ。
ー承知いたしました。
電話を切ってからため息が出る。せっかく要さんのために美味しそうなアップルパイをゲットしたというのに……
これはたっぷりと要さんに癒してもらおう。
私は急いで車に戻り、要さんの動画でしばし癒されてから警視庁に戻った。
あの警官二人はその後異動になり都内の交番勤務となったが、そこでもまた事件を起こしたようで結局東京都管轄で一番小さな島の駐在所に移動になったと聞いている。結局のところ、警官には向いていないのかもしれない。
結構ヒントが出ているのでどのお話で出てきた人かわかると思います。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
彼の恋人が警官に話しかけられている?
そう言ったか?
気になって彼の後についていった。
大きなキャリーケースのそばに男性がベンチに座っているのが見える。
傍らには警官が二名。詰問しているようだ。
彼が名前を呼びかけると、不安げな表情でこちらをみた。
その顔は確かにどこからどうみても未成年に見える。
「俺、三十だって言ってるのに信じてくれなくて……っ」
そんな声が聞こえてきて驚いた。
要さんが三十四だと言った時も驚いたが、彼はどうみても三十歳には見えない。
だが、その表情で彼が嘘を吐いていないというのは歴然だ。
列に一緒に並んでいた彼は、はっきりとした口調で彼が未成年ではなく自分のパートナーであることを告げた。
そうか。そういう関係だったのか。私と要さんもそうだし、成瀬たちもそうだ。意外と身近にいるものなのだな。
とそんなことは今は二の次だ。
警官二人は彼の主張を嘲笑い、全く信じようとしない。実際にそう見えるのだから仕方がないこともあるが、あの態度は悪すぎる。
彼が仕方なく持っていたパートナーのパスポートを見せると、警官二人は明らかにさっきまでの勢いを落とした。どうやら彼の主張が正しかったようだ。ここで自分たちの非礼を詫びれば……と思っていたが、こともあろうに
「子どもみたいな紛らわしい格好している方が悪い」
と主張し始めた。これはダメだ。このままだと警察官の信頼を失墜させる。
私は黙って静観していたが我慢できずに飛び出した。
「お前たち、なんて物言いだ! 間違えて迷惑かけたんだから、まずは謝罪だろう!」
警官二人はびくりと身体震わせて私をみた。
すぐに私の正体に気づき、表情が一気に青褪めていくが今はこいつらはどうでもいい。
不快な思いをさせてしまった彼らに謝罪をしなければいけない。
「申し訳ありません、私の部下がご迷惑をおかけして失礼しました」
「いえ、わかっていただければいいんですが、先ほどの態度は少し改善していただいた方がいいですね」
はっきりと処罰を望むとは言わないが、明らかな圧を感じる。
それは愛しい人を傷つけられた彼にとって当然の主張だろう。
「はい。それはもう厳しく指導いたします。後であらためてお詫びいたしますので、お名刺いただけますか?」
私の言葉に彼は手慣れた様子で胸ポケットから名刺入れを取り出し、私に手渡した。
<ベルンシュトルフホールディングス 副社長 日下部透也>
そう書かれた名刺を見て、驚きのあまり思わず声が出た。
「真壁警視正、彼らの指導、よろしくお願いしますね」
厳しい顔で日下部さんはそういうと、去り際に私にだけ聞こえる声で
「アップルパイ、愛しい恋人さんに早く食べさせてあげてくださいね」
と優しい声で言ってくれた。
その言葉に感謝しながら私は頭を下げ続けた。
彼らの姿が遠くなったところで頭をあげた私は、隣で萎縮したまま立ち尽くしている警官の二人をギロリと睨みつけた。
「お前たちは、あんな職質の方法をどこで学んだんだ?」
「え、いえ。あの、その……」
「確かにあの彼は未成年に見えるだろう。それは否定しない。だが、それが間違いだったことがわかったのなら直ちに謝るのが常識だろう! お前たちの行動がどれだけ警察官の信頼を失っているのかわからないのか!」
「ひぃっ、も、申し訳ありません!」
「もういい。お前たちはすぐに庁舎に戻れ。始末書を書いて処分が降りるのを待つんだな」
警官二人はこの世の終わりのような表情をしていたが、諦めたようでこの場を離れていった。
私はすぐに先ほどまでいた警察署庁舎の刑事管理官に連絡を入れた。
ー宮城管理官。警視庁の真壁だ。今、いいか?
ーま、真壁警視正。何かございましたか?
彼は入庁後、数年の経験を積んだ後、沖縄本島の警察署署長、離島の警察署署長などを歴任し、今年、この成田空港の警察署庁舎勤務となった。以前、成瀬と安慶名が宮古島で事件に関わった時、署長をしていたのがこの彼だったと二人から話を聞いて知っていた。
私は宮城管理官に先ほどの警官二人の行動を全て説明した。
話を聞く間、彼は絶句して何も答えられなかったようだ。
ー彼らには始末書を書くように指示したが、処分は免れない。
ーはい。それは重々承知しております。私の監督不行き届きで真壁警視正のお手を煩わせてしまい申し訳ございません。
ー君の謝罪はいい。あとはしっかり頼むぞ。
ー承知いたしました。
電話を切ってからため息が出る。せっかく要さんのために美味しそうなアップルパイをゲットしたというのに……
これはたっぷりと要さんに癒してもらおう。
私は急いで車に戻り、要さんの動画でしばし癒されてから警視庁に戻った。
あの警官二人はその後異動になり都内の交番勤務となったが、そこでもまた事件を起こしたようで結局東京都管轄で一番小さな島の駐在所に移動になったと聞いている。結局のところ、警官には向いていないのかもしれない。
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