エリート警察官僚はようやく見つけた運命の相手を甘やかしたくてたまらない!

波木真帆

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心がざわつく

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そんなある日、成瀬から連絡があった。
友人という立場ではなく、今回は弁護士としての話だ。

依頼者はエノーマス商事の社長の孫である八尋崇史さん。
西表島に在住する彼から話を聞いていたのは安慶名だが、実家は東京で社長を含めて家族はみんな東京在住とのことで、安慶名と成瀬が情報を共有しながら話を進めてきたようだ。

今回の話は、病気療養中の現社長から後継に指名されているが、本人は後を継ぐつもりはなく全ての財産の相続を放棄しているとのこと。
そこまでなら私が関わることは何もないが、問題はその相続放棄を良しとしない人物がいるということだ。
それは彼に相続させて実権を自分が握るつもりでいる八尋さんの父だ。

八尋さんの父は入り婿で結婚してすぐにエノーマス商事に入社し、現在は部長という役職についているがそれは実力ではなく社長である義父の力があってこそ。社長となれる器ではないことは社長だけでなく、社員全員が分かっていることらしい。
だからこそ、現社長は優秀な孫である崇史さんに後継になって欲しいと望んだのだが父親はそれが許せないようだ。

だから父親は、崇史さんの従姉妹にあたる未成年に金を渡し、薬で眠らせた崇史さんとあたかも関係を持ったように見せかけて、その事実を隠蔽する代わりに自分のいうことを聞かせるという計画を立てているようだ。
その計画は成瀬の調査で分かったことのようだが、相変わらずどうやってこんなにも調べられたのか不思議で仕方がない。

成瀬は弁護士という仕事の傍ら、調査員の仕事もしている。それは公にしているわけではなく、いわゆる裏稼業というものだが、実際に動いているのは成瀬でなく別の人物が多い。
成瀬が実際に動く場合には弁護士としての働きの延長線上にあるから問題はない。また実際に動いている者も弁護士資格を持っているから調査員としてはかなり動きやすいだろう。

その二人で今回のことも調べ上げたんだろうが、本題はここからだ。

「依頼人の話では現社長の体調が思わしくなく、近いうちに東京に足を運ぶことになるらしい」

つまり、現社長の葬儀で上京するということだろう。

「親戚が一堂に会す葬儀の全てが終わった後で現社長の遺言書が発表されることになっている。父親は自分にも相続があると期待しているようだが、あくまでも社長の希望は全ての財産を崇史さんに譲ることだ。それを聞いたその夜が、あの計画を決行するのは間違いない。だから……」

「分かった。成瀬と一緒に近くで張り込んで現行犯逮捕だな」

「ははっ。さすが真壁。話が早いな」

「ああ、お前と何年付き合ってきたと思ってるんだ」

「確かに。じゃあ、崇史さんが上京したら連絡するよ」

「分かった。あ、その日真琴くんはどうするんだ? 悠真さんに預けるのか?」

愛しい真琴くんを成瀬が一人で留守番をさせるわけがない。タイミングよく悠真さんが上京していればもちろん預け先はそこしかない。

「いや、志良堂教授のところで預かってもらうよ」

「ああ、それなら安心だな」

安慶名の養父的な存在の志良堂家なら、真琴くんは可愛い息子と同じような存在だ。
とはいえ、成瀬の過保護は変わらないからきっとすぐに解決して帰ることだろう。

成瀬との会話から数日後、崇史さんが上京したとの連絡を受け出動の準備を整え、私以外にも柔術に長けた警察官を数人揃えて待機した。

そして、計画が実行された夜。
私は成瀬と警察官と共に現場に乗り込んだ。

言い逃れできない状況と証拠が満載の中、崇史さんの部屋に不法侵入した女子高生を住居侵入と不同意性交未遂の罪で逮捕し、父親を睡眠薬を崇史さんに飲ませようとした(実際には飲んでいない)傷害未遂と女子高生への犯罪教唆で同じく逮捕した。

部下たちに二人を連れて行かせて初めて安慶名と成瀬の依頼人である崇史さんと対面したが、成瀬たちとはまた違う美形で驚いた。

成瀬の話によると、優秀な営業マンだった彼は今は西表島で居酒屋の店主をしているとのことだったが、こんなにもイケメンな店主ならそういう意味でも人気店になっていそうだ。

二人が連れて行かれた後で成瀬が部屋に入ってきて、崇史さんと会話を始めたから揶揄いまじりに話に加わった。

私と成瀬が高校の同級生だと告げると、崇史さんは驚きつつも全てが終わってホッとしたのか、少し笑顔が溢れていた。


「真壁。悪いが、明日の朝警察官を数人この家に来させてくれないか?」

崇史さんと別れて家を出た後で成瀬がそんなことを言ってきた。

「まだ何かあるのか?」

「あの逮捕された父親が、今回の計画を遂行するために家に残っていた邪魔な親族を睡眠薬で眠らせているんだ。睡眠薬自体に中毒性はなさそうだから直ちに病院への搬送は必要なかったが、その中に逮捕されたあの女子高生の両親がいるんだ。
両親への事情聴も必要だろう?」

「そうか、分かった。それなら私と警察官を数人連れて行くよ」

「真壁も来るのか? 迎えに来るだけなら警察官だけでも良さそうだが……」

「いや、状況を全て知っている者がいたほうが話も早いだろう。私に任せてくれ」

普段ならこんなことは言わなかった気がする。でもなんとなく自分の中でそれが正しいと思えた。

「分かった。じゃあ何かあったらいつでも連絡してくれ。今日はありがとう。助かったよ」

「ああ。またな」

笑顔で帰っていく成瀬を見送りながら、私はなんとなく心がざわつくのを感じていた。
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