エリート警察官僚はようやく見つけた運命の相手を甘やかしたくてたまらない!

波木真帆

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明日、必ず!

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「あ、あの……た、いえ。八尋さんに何かあったんですか?」

「聞こえてましたか?」

「少しだけ。私のことを話しているような気がしたので……」

久代さんの表情を見るに、それは嘘ではなさそうだ。
離れた場所に移動したから、全ては聞かれていなかったんだろう。
その久代さんにどこまで話すべきかを一瞬悩んだが、崇史さんのことを気にかけている姿に嫉妬してしまって、つい言わずにはいられなかった。

「彼の大事な人も以前東京の電車内で痴漢被害に遭っていたことが分かったようで、その犯人の手の甲にも赤い痣があったそうです」

「――っ、それって……」

「おそらく、いや、間違いなく久代さんのストーカーをしていた犯人に間違いないでしょう。彼の証言で、犯人が出没する路線と区間、そして時間が分かりましたので、確実に捕まえられます。その男を逮捕して、他に仲間がいないかもしっかりと調べますので安心してください」

「私の他にも、被害者がいたんですね……。しかも八尋さんの大事な人もだなんて……」

「心配ですか?」

「えっ? ええ。それはもちろん。八尋さんも辛かったでしょうし」

心底心配している表情に心が痛む。
崇史さんは久代さんを私に任せてさっさと家を出てしまったのに。
久代さんはこんなにも思っているなんて……。

「そうですね。とても心配なさっているようですよ。それほど大事な人なんでしょう」

「そう、ですね……」

久代さんの哀しげな表情を見ていられない。
こんな表情をさせるなんて、本当に崇史さんは罪作りな人だ。

「それでは私は重要な証言も手に入れましたし、確実に確保するために動きます。久代さんのご自宅にも入らせていただいて証拠をお預かりします」

「はい。玄関を入ってすぐの棚に封筒ごと置いてますのですぐにわかると思います」

「分かりました。あとの荷物は全て我が家に運び入れますのでご安心ください。それから先ほど診察した医師は私の友人ですから、何かあればいつでもブザーで呼んでください」

「はい。ありがとうございます」

必要なことを告げて、私は久代さんの部屋を出た。

スタッフステーションに寄って、久代さんのことをくれぐれもお願いしようと思ったら、

「真壁!」

と沖野の方から駆け寄ってきた。

「話は終わったのか?」

「ああ。悪いが、今日はこのまま入院させてもらいたい」

「入院させるのか?」

沖野は私の言葉に心底驚いていた。それを無視して頷いて見せると、沖野は少しがっかりしたように見えた。

「そうか。てっきり連れて帰ると思ってたよ。やっぱり彼でもお前のテリトリーには入れられないか?」

「そういうことか。違うよ。今夜は警察官として大事な仕事が入ったから、久代さんを安全な場所にいさせたいだけだ。明日、全てを片付けて戻ってくる。そのあとは私の家に連れて帰るよ」

「――っ、そうか! わかった。お前がいない間はあの部屋でしっかり守っておく。安心して仕事をしてきてくれ」

「ありがとう。頼むよ」

さっきの表情とは一変して、沖野は満面の笑みで私を送り出してくれた。

崇史さんのことは気になるが、今は犯人を逮捕することだけを考えよう。

病院を出て、まずは久代さんの自宅に向かうが、犯人が久代さんの帰宅を待ち伏せしていることも考えられる。
近くのコインパーキングに車を止め、久代さんのアパートに向かった。
近くから様子を伺ったが、見張られている気配はない。
それでも慎重に彼の部屋の鍵を開けた。

ここ数日自宅には帰っていないと言っていたから、空気がこもっているが嫌な匂いはしない。
むしろ久代さんの匂いに包まれて、少し興奮している自分がいる。

小さなシューズボックスの上にお目当てのものを見つけて、ポケットから手袋を取り出して装着した。
できるだけ封筒に触れる部分を少なくしながら中身を確認するが、切られたズボンの部分に目掛けて白い粘液がかけられているのが確認できる。

話を聞いた時も腸が煮えくり返る思いだったが、実際にこの目で確認するととてつもない怒りが込み上げる。
私の久代さんの肌だけでなく、心も穢したことは絶対に許さない。

すぐにこの家とは離した方がいいい。
部屋の中を確認するといくつか大物はあったが。冷蔵庫や電子レンジ、テーブルにベッドのフレーム、それに洗濯機は部屋に備え付けのものであったため、運び出す必要はなさそうだ。その上、物自体も驚くほど少ない。最低限の生活を送っていたようだ。これなら搬出も搬入も大して時間はかからないだろう。

心配なのは、搬出の際に犯人に気づかれないかということだけだが、ちょうどいいタイミングで部下から連絡が来た。奴の身元を確認し、現在自宅にいるという連絡だ。

私はそのまま見張りを続けさせて、その場で信頼のおける業者に連絡を入れ、久代さんの部屋の荷物を運び出すことを依頼した。すぐにやってきた業者の責任者に鍵を渡し、搬出したあとは連絡を入れるまで業者の倉庫で預かってもらうことを頼んだ。

それらを終えて、警視庁に戻り見張を続けている部下の報告を元に他の者たちとの作戦会議をし、明朝決行することにした。明日で全てを終わらせる! 私はそう心に誓った。
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