エリート警察官僚はようやく見つけた運命の相手を甘やかしたくてたまらない!

波木真帆

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思わぬ事実

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「あの証拠となる写真をいただきたいので、これから久代さんのご自宅に入らせていただいてもかまいませんか?」

「えっ、あ、はい。どうぞ。その鞄の中に家の鍵があります」

私が家に入ることに簡単に同意してくれたことに驚きつつ、私は彼に鞄を手渡した。
彼はそこから鍵を取り出すとそのまま私に手渡し、自宅の住所を教えてくれた。

複製しやすそうな鍵をみて、彼が住んでいるところはあまりセキュリティの高くない場所であることはよくわかった。
やっぱりその家に久代さんを住まわせておくわけにはいかない。

「その男を逮捕することができたとしても、まだ安心はできません。継続的に狙っていたことを考えると仲間がいることも考えられます。ですから、すぐにでも引越しをされた方がいいと思います」

「えっ、引越し? でもそんな急には……」

「心配しないでください。私の自宅に空き部屋がありますので、しばらくそちらにいていただきます」

「えっ? 真壁さんのご自宅、ですか? そこまでご迷惑をかけるわけには……」

「いいえ。安全が確保されるまではそばにいてほしいと申し上げたはずです。今のご自宅では久代さんを守れません。大丈夫です、全て私に任せてください。久代さんの自宅にあるものは全て我が家に運び入れますから。よろしいですか?」

続け様に訴えると、久代さんはあまりにも急な出来事に思考が止まってしまったようで、

「は、はい」

とだけ答えた。
まだしっかりと頭が回っていない状態で畳み掛けて申し訳なかったが、これで言質はとった。

私はその場で警視庁に連絡を入れ、先ほど久代さんから送ってもらった写真の画像解析と、その画像を元に犯人の特定を指示を出した。

「これですぐに連絡が来るはずですから、私は今から久代さんのご自宅に行ってきますね」

「は、はい。お、願いします……」

あまりの展開の速さについていけていないようだが、許可を出してもらってよかった。
早速部屋から出ようとすると、持っていたスマホが着信を告げた。

画面表示を見ると、電話の相手は大学の同期で今は弁護士をしている安慶名あげな
何か急用かもしれないと思い、久代さんに断りを入れて電話をとると、少し焦った声で「今大丈夫か?」と尋ねられた。

やはり何かあったのだと思い、そのまま話を続けてもらうようにいうと、周平さんも一緒にいてスピーカーにして話が聞きたいと言われた。何か事件の匂いがすると瞬時に思った私は、すぐにそれを了承すると、安慶名は電話の目的を話し始めた。

ー実は、真壁も知っている八尋崇史さんの大事な人がひと月ほど前まで東京に住んでいたんだが、その時に電車内で酷い痴漢に遭っていたようなんだ。それがかなり悪質で彼をターゲットにして毎日痴漢行為に及んでいたようだ。それで八尋さんがどうしてもそいつを逮捕したいと言っていて真壁に協力を頼みたいんだ。

ーかなり常習性がある犯人なら、他にもターゲットを見つけていたということは考えられるな。その繋がりで逮捕できれば、その彼の件も遡って逮捕するのは可能だが、犯人を特定できるような証拠がないと難しいな。

ーそれが一つだけ特徴を覚えていて、左手の甲に大きな赤い痣があった、と。

ー……っ!!

ーその彼が使っていた路線は××線の○○駅から○○駅の区間で乗っていたのは前から三両目の前方。時間は――それで、明日にでもその路線に乗り込んで手の甲の赤い痣の痴漢男を見つけてできれば逮捕して欲しいんだ。

久代さんと同じ犯人にターゲットにされていたのか。
その彼が東京を離れて久代さんだけがターゲットになったことで、犯人の久代さんへの執着が酷くなったんじゃないか?
そう考えれば辻褄があう。

ここまではっきりと路線がわかっていれば張り込みは容易い。

確実に捕まえられそうだと告げると、電話口の安慶名だけではなく、周平さんの驚く声も聞こえた。
だから私は久代さんから知り得た情報を彼らに告げた。

ー実は今、八尋さんのお爺さんの秘書をなさっていた久代さんと病院にいるんですが、彼が話してくれていたんです。八尋さんのお爺さんが療養なさっていた病院に通っていた時に、車内で痴漢をされた男に付き纏われて病院と自宅を知られてしまっていると。その男の左手の甲にも赤い痣があったそうです。

私の言葉に電話の向こうでハッと息を呑むのがわかった。

久代さんが犯人を特定できそうな写真を撮っていたため、今身元を割り出しているところだと告げると、安堵に近い声が聞こえた。

崇史さんの大事な人はもう東京から離れているから奴の被害に遭うことはなくても、存在していることが許せないということなのだろう。それは私も同じ気持ちだ。

ーあとはお任せください。また進展がありましたらその都度ご報告いたします。

そう言って電話を切ろうとしたが、その前に伝えておこうと思い、私は電話口に崇史さんを呼んだ。

ーあの、八尋さんは今、電話口の近くにいらっしゃいますか?

ーは、はい。聞いていますよ。

ーよかった。八尋さん、久代さんですが、今日は念のために入院していただくことになりましたが、明日には退院できるそうですのでご安心ください。

久代さんのその後を一応伝えておくべきかと思い、告げたのだが崇史さんの口から犯人に自宅を知られてしまっている久代さんを気遣う声が聞こえて、少し嫉妬してしまった。

久代さんはあの時、家を出ていく崇史さんを寂しげな表情で見つめていた。
まるで、恋人が去っていくのを黙って耐えるようなそんな表情で……。

もしかしたら、崇史さんに好意を持っているのではないかと一瞬思ってしまったのだ。
それ以上に久代さんに感じる思いが強すぎてそれをみないふりしていたのだが、こうして崇史さんから聞くと嫉妬が抑えられなかった。

ー問題ありません。明日から、私の家に住んでいただくことになりましたから。

電話口から聞こえる驚きの声を無視して、そのまま電話を切った。

我ながら大人げないとはわかっている。
それでも崇史さんに対する嫉妬はなかなか消えなかった。
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