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離れ難い……
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「お昼はお弁当を作ってますので、温めて食べてください」
「冬貴さんのお弁当……今日も食べられるなんて嬉しいです」
頬を染めて笑顔を見せてくれる。
これが本心だということはよくわかっている。
あの映像でも私のお弁当を嬉しそうに冷蔵庫から取り出してくれていたからな。
「要さんが喜んでくださるなら毎日作りますよ」
「嬉しいです。あ、あの今日の夕食……冬貴さん、何かリクエストはありますか? と言ってもそこまでレパートリーがあるわけじゃないんですけど、頑張って作ってみます」
私のためにそこまでしてくれる気持ちが嬉しい。
そんな時に食べたいものは要さんですなんて答えたら嫌われるだろうな。
ついつい言ってしまいそうになる気持ちを抑えて、私は口を開いた。
「要さんが作ってくださるならなんでも嬉しいですが……そうですね、ハンバーグが食べたいです」
「ハンバーグ! はい! 任せてください!」
どうやら要さんの得意料理だったようだ。
その自信満々な表情がたまらなく可愛い。
「夕食の材料はすべて冷蔵庫に入っています。お肉も冷凍庫に入ってますので好きなだけ使ってください。ただし、足りないものがあったからといって外に出てはいけませんよ。必要なものがあればあの電話でコンシェルジュに頼んでください。すぐに持ってきてくれますから」
「わかりました」
社長秘書として動き回っていただろう要さんに人を使えというのはかなり難しいことだろうが、一人で外に出させるわけにはいかない。一応コンシェルジュにも外には出さないように声をかけておいたほうがいいな。
「今日も十八時には帰宅予定ですから、帰る前に必ず連絡しますね。遅くなる場合も必ず連絡します」
「冬貴さんが帰ってくるのを楽しみにしてます」
「要さん……っ」
この部屋で数時間も一人っきりにさせたくないのが本音だ。
仕事に行きたくないなんて思ったのは初めてだな。
要さんを抱きしめて、温もりを伝え合う。
そっと見上げてくれた要さんの唇にチュッとキスをしてもう一度要さんを抱きしめる。
「帰ったらまたこうして出迎えて欲しいです」
「は、はい……」
素直に気持ちを口にすると要さんが了承してくれた。
「では、行ってきますね」
本当は離れたくない。
それでも行かなければいけない。
要さんとのキスの余韻を味わいながら後ろ髪引かれる思いで家を出た。
コンシェルジュに要さんのことをしっかりと話をして駐車場に向かうと
「冬貴!」
私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「えっ? あ、周平さん。おはようございます。ここで会うのは珍しいですね」
周平さんは私が出勤するよりも一時間ほど遅い出勤だから、朝の駐車場で出会うことはほとんどない。
その上、私も要さんと離れがたくてゆっくりしていたから、私の出勤に合わせて出てきてくれたわけではなさそうだ。
「敬介と一緒にモーニングを食べようと思って少し早めに出たんだ」
「ああ、なるほど。そうなんですね。楽しんできてください」
助手席から笑顔を見せる浅香さんに声をかけると嬉しそうに頷いてくれた。
「ちょうど冬貴に話したいことがあったからここで会えて良かったよ」
「何かありましたか?」
「お前に恋人ができたお祝いを贈ろうと思って倉橋くんに連絡したらすぐにでも届けられると言ってくれたんだが、今日は何時ごろなら家にいる?」
「えっ? お祝いですか? そんな……っ、申し訳ないです」
「気にするな。私の気持ちだから受け取ってくれたらいい。これはかなり便利だぞ。お前も絶対に必要なものだ」
「倉橋くんとおっしゃってましたが、一体どんなものですか?」
倉橋くんがいろいろなものを開発しているのは知っているがそれが多岐に渡るため、どれを指しているのか全くわからない。だが、周平さんがここまで絶賛するものとは一体なんだろう。
すると周平さんは私にだけ聞こえる声でそれを話してくれた。
「えっ!! それ、ちょうど昨夜思ったばかりです!!」
まさかこのタイミングで勧められるとは思ってもなかった。
「ははっ。やっぱりな。じゃあ、昨夜は最後まで済んだのか?」
「いえ。まだそこまでは……。要さんはすべてが初めてですからもう少し時間をかけて安心させてからにしたいと思っています」
「そうか、まぁ私も敬介とのそれには少し躊躇っていたからな。お前の気持ちもよくわかる。だが案ずるより産むが易しだぞ。あまり心配しすぎると却って相手を不安にさせるものだ。あまり躊躇いすぎるのもよくないぞ」
「周平さんの体験談、心に留めておきます」
周平さんが浅香さんとの関係を進めるのに躊躇った理由は、もしかしてアレだろうか?
一緒にサウナに入った時に見たアレはかなりの大きさだったからな。
私もかなりのものだが周平さんに比べればまだマシだろう。だが周平さんで大丈夫なら、要さんに痛い思いをさせることはないかもしれない。
「ははっ。そうしてくれ。それを実行するときに倉橋くんのそれはかなり便利だからな。今のうちに用意しておいたほうがいいだろう」
「はい。ありがとうございます。今日は十八時には帰宅予定です」
「そうか、なら二十時ごろ搬入させよう。彼はその間風呂にでも入らせておくといい」
「そうですね。ありがとうございます。あ、そういえば涼平くんは今、東京ですか?」
「ああ、石垣での試食会があるまではしばらくここにいるようだよ」
「そうなんですね。わかりました、ちょっと連絡してみます」
「何かあったのか?」
「いえ、その……八尋さんに少しご迷惑をかけたので、恋人さんと一緒に召し上がっていただけるように美味しいものでも贈ろうと思いまして……」
「ははっ。そういうことか。お前の牽制はかなりのものだったからな」
「お恥ずかしい……」
あの時の敵意剥き出しの牽制が周平さんに聞かれていることも考えられなかったのだから、あの時の私は相当頭に血が上っていたんだろう。贈り物で許されるとは思っていないが、今はただ恋人さんとの時間を楽しんでもらいたい、それだけだ。
「冬貴さんのお弁当……今日も食べられるなんて嬉しいです」
頬を染めて笑顔を見せてくれる。
これが本心だということはよくわかっている。
あの映像でも私のお弁当を嬉しそうに冷蔵庫から取り出してくれていたからな。
「要さんが喜んでくださるなら毎日作りますよ」
「嬉しいです。あ、あの今日の夕食……冬貴さん、何かリクエストはありますか? と言ってもそこまでレパートリーがあるわけじゃないんですけど、頑張って作ってみます」
私のためにそこまでしてくれる気持ちが嬉しい。
そんな時に食べたいものは要さんですなんて答えたら嫌われるだろうな。
ついつい言ってしまいそうになる気持ちを抑えて、私は口を開いた。
「要さんが作ってくださるならなんでも嬉しいですが……そうですね、ハンバーグが食べたいです」
「ハンバーグ! はい! 任せてください!」
どうやら要さんの得意料理だったようだ。
その自信満々な表情がたまらなく可愛い。
「夕食の材料はすべて冷蔵庫に入っています。お肉も冷凍庫に入ってますので好きなだけ使ってください。ただし、足りないものがあったからといって外に出てはいけませんよ。必要なものがあればあの電話でコンシェルジュに頼んでください。すぐに持ってきてくれますから」
「わかりました」
社長秘書として動き回っていただろう要さんに人を使えというのはかなり難しいことだろうが、一人で外に出させるわけにはいかない。一応コンシェルジュにも外には出さないように声をかけておいたほうがいいな。
「今日も十八時には帰宅予定ですから、帰る前に必ず連絡しますね。遅くなる場合も必ず連絡します」
「冬貴さんが帰ってくるのを楽しみにしてます」
「要さん……っ」
この部屋で数時間も一人っきりにさせたくないのが本音だ。
仕事に行きたくないなんて思ったのは初めてだな。
要さんを抱きしめて、温もりを伝え合う。
そっと見上げてくれた要さんの唇にチュッとキスをしてもう一度要さんを抱きしめる。
「帰ったらまたこうして出迎えて欲しいです」
「は、はい……」
素直に気持ちを口にすると要さんが了承してくれた。
「では、行ってきますね」
本当は離れたくない。
それでも行かなければいけない。
要さんとのキスの余韻を味わいながら後ろ髪引かれる思いで家を出た。
コンシェルジュに要さんのことをしっかりと話をして駐車場に向かうと
「冬貴!」
私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「えっ? あ、周平さん。おはようございます。ここで会うのは珍しいですね」
周平さんは私が出勤するよりも一時間ほど遅い出勤だから、朝の駐車場で出会うことはほとんどない。
その上、私も要さんと離れがたくてゆっくりしていたから、私の出勤に合わせて出てきてくれたわけではなさそうだ。
「敬介と一緒にモーニングを食べようと思って少し早めに出たんだ」
「ああ、なるほど。そうなんですね。楽しんできてください」
助手席から笑顔を見せる浅香さんに声をかけると嬉しそうに頷いてくれた。
「ちょうど冬貴に話したいことがあったからここで会えて良かったよ」
「何かありましたか?」
「お前に恋人ができたお祝いを贈ろうと思って倉橋くんに連絡したらすぐにでも届けられると言ってくれたんだが、今日は何時ごろなら家にいる?」
「えっ? お祝いですか? そんな……っ、申し訳ないです」
「気にするな。私の気持ちだから受け取ってくれたらいい。これはかなり便利だぞ。お前も絶対に必要なものだ」
「倉橋くんとおっしゃってましたが、一体どんなものですか?」
倉橋くんがいろいろなものを開発しているのは知っているがそれが多岐に渡るため、どれを指しているのか全くわからない。だが、周平さんがここまで絶賛するものとは一体なんだろう。
すると周平さんは私にだけ聞こえる声でそれを話してくれた。
「えっ!! それ、ちょうど昨夜思ったばかりです!!」
まさかこのタイミングで勧められるとは思ってもなかった。
「ははっ。やっぱりな。じゃあ、昨夜は最後まで済んだのか?」
「いえ。まだそこまでは……。要さんはすべてが初めてですからもう少し時間をかけて安心させてからにしたいと思っています」
「そうか、まぁ私も敬介とのそれには少し躊躇っていたからな。お前の気持ちもよくわかる。だが案ずるより産むが易しだぞ。あまり心配しすぎると却って相手を不安にさせるものだ。あまり躊躇いすぎるのもよくないぞ」
「周平さんの体験談、心に留めておきます」
周平さんが浅香さんとの関係を進めるのに躊躇った理由は、もしかしてアレだろうか?
一緒にサウナに入った時に見たアレはかなりの大きさだったからな。
私もかなりのものだが周平さんに比べればまだマシだろう。だが周平さんで大丈夫なら、要さんに痛い思いをさせることはないかもしれない。
「ははっ。そうしてくれ。それを実行するときに倉橋くんのそれはかなり便利だからな。今のうちに用意しておいたほうがいいだろう」
「はい。ありがとうございます。今日は十八時には帰宅予定です」
「そうか、なら二十時ごろ搬入させよう。彼はその間風呂にでも入らせておくといい」
「そうですね。ありがとうございます。あ、そういえば涼平くんは今、東京ですか?」
「ああ、石垣での試食会があるまではしばらくここにいるようだよ」
「そうなんですね。わかりました、ちょっと連絡してみます」
「何かあったのか?」
「いえ、その……八尋さんに少しご迷惑をかけたので、恋人さんと一緒に召し上がっていただけるように美味しいものでも贈ろうと思いまして……」
「ははっ。そういうことか。お前の牽制はかなりのものだったからな」
「お恥ずかしい……」
あの時の敵意剥き出しの牽制が周平さんに聞かれていることも考えられなかったのだから、あの時の私は相当頭に血が上っていたんだろう。贈り物で許されるとは思っていないが、今はただ恋人さんとの時間を楽しんでもらいたい、それだけだ。
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