エリート警察官僚はようやく見つけた運命の相手を甘やかしたくてたまらない!

波木真帆

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今日の目的

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「えっ、歩夢くん。桜守大学なの? てっきり芸大に行くと思ってた。そう言ってなかった?」

要さんの声が聞こえてくる。
どうやら話は大学の話になったようだ。

「うん。本当は芸大に行こうと思ってたんだけど、担任から桜守なら芸術学部があるからそっちがいいって熱心に勧められたんだ……」

舞川さんは桜守か。
確かにイメージにピッタリだな。
あの高校から芸大はあまりいないから一人で行かせるのは心配なところはあるし、担任が必死に進路を桜守に勧めたのもよくわかる。

「そうなんだ。それで、歩夢くん。桜守はどうだった?」

「はい。すごく楽しい大学生活を過ごせました。教授たちも生徒もみんな優しくて……」

「そっか、よかった。実は、桜守学園の理事長は俺の父親なんだよ」

「「ええっ!!」」

浅香さんの突然の告白に要さんも舞川さんも目を丸くして驚いている。
この話を聞いていた新海も私たちの隣で同じように驚いているのがわかる。

「あ、あの今の話って……本当なんですか?」

「ああ、もちろん。本当だとも。桜守学園を創設したのは敬介の高祖父の父にあたる、つまり浅香家の四代前の当主が創設したんだよ」

周平さんの話に絶句してしまっている新海だが、まぁ、それも当然か。
桜守学園の名は桜城大学と同じくらい、日本人なら知らない人はいないからな。

考えてみれば、桜城大学ができたのはほぼ変わらないのだから、その当時に幼稚園から大学までの一貫校を作るのはかなり大変なことだっただろうな。

新海同様、あちらもあまりのことに話が止まっていたが、やはり浅香さんはそんな空気を変えるのが上手い。

「俺は大学は桜城に行ったから、桜守の大学は知らないんだ。だから楽しかったって言われるのは嬉しいよ」

「敬介さん、桜城大なんですね。そこも楽しかったですか?」

「うん。すっごく楽しい教授がいてね…………」

元々桜城大学志望だった要さんは浅香さんの話に興味津々だ。
そんな様子を嬉しそうに舞川さんが見つめている。

なんだか浅香さんが長男、要さんが次男、そして舞川さんが三男の三兄弟みたいだな。

「そろそろ彼の気持ちも落ち着いた頃だろう。話を始めようか」

「そうですね」

周平さんの声掛けで私たちは、スイーツを食べながら楽しそうに話をしている三人の元に向かった。

「要さん」

「あ、冬貴さん」

幸せそうな笑顔で見上げられ私も思わず笑みが溢れる。

「楽しそうでよかったです」

「はい。今日連れてきてもらえて嬉しかったです」

「これからもいつでも会えるようになりますから安心してください。それで舞川さんにお話があるので、少しだけ時間をください」

「あ、そうですよね。すっかりおしゃべりに夢中になってしまって……」

というわけでようやく今日の集まりの目的とも言える、話が始まった。

「改めて、今日はわざわざ足を運んでくれてありがとう。私はこういうものだ」

さっと名刺を取り出して、舞川さんに手渡す。
舞川さんは綺麗な所作でそれを受け取り、名刺に目を通した。

「えっ、Clef deクレ ド Coeurクールの社長兼、デザイナー……」

「ああ、ここにいる冬貴から舞川さんの再就職先の相談を受けたが、舞川さんにはぜひ私の会社に入ってもらいたい」

「――っ、わ、私がClef deクレ ド Coeurクールに、ですか?」

思いがけない言葉に、舞川さんは新海と目を見合わせて驚きの表情を見せている。

「実はちょうどジュエリー部門を立ち上げようと思っていたところだったんだ。ここにいるイリゼホテルグループのオーナーの敬介と共同で話をまとめていたところなんだよ」

「えっ……イ、イリゼホテルの、オーナー?」

今度は浅香さんに驚きの表情を向けている。
こんなすごい二人に一度に会える機会はそうそうないのだから驚くのも無理はない。

「周平さん、ここからは俺に話をさせて」

「ああ、頼むよ」

驚きすぎて声も出せない様子の舞川さんを気遣ったんだろう。
本当に浅香さんは気遣いができる人だ。

「あのね、周平さんの手がけた一点物のドレスは、うちのホテルでしか着られないことになっているんだけど、せっかくならそのドレスにもっと付加価値をつけようと考えていたんだ」

「付加価値、ですか?」

「うん。周平さんのドレスと対をなすような、なんて言ったらいいかな。ドレスのイメージにピッタリ合うような婚約指輪や結婚指輪。それにドレスに合わせてつけられるようなネックレスやティアラなんかをデザインしてくれる人を探していたんだよ。それで、いくつか歩夢くんのデザインしたジュエリーを見せてもらったんだけど、すごくイメージにピッタリで……だから、ぜひ周平さんの会社に入って専属ジュエリーデザイナーとして働いてほしいって思ってる」

「私のデザインをそんなに高評価していただけるなんて……」

あまりの出来事に信じられないのだろう。
身体が震えているのがわかる。

それを新海が優しく受け止める。
手を握り、肩をだき、それだけで安心した表情に変わっていくのがわかる。

「仕事は基本的に在宅でやってもらって打ち合わせその他はリモートでも構わない。出社する場合は新海くんの都合に合わせても可能だ。ひと月の固定給はこれを考えている。それプラスデザイン料ももちろん支払わせてもらうよ。どうだろう?」

周平さんは用意していた資料を舞川さんの目の前に置いた。

「えっ!! こ、こんなに? そんなっ、私なんかにこんなお給料をいただくなんて……」

ちらっと資料を覗くと。固定給は月に五十万。それプラスデザイン料を加算されるとなれば、かなりの高待遇だろう。
だが、セレブたちから合計九桁目前のデザイン料をもらっていた舞川さんの実力なら当然のことだろう。

「君にはそれだけの実力がある。その実力をうちで遺憾無く発揮してほしい。君のデザインを待っている人がいるんだ」

その言葉に舞川さんは大粒の涙をこぼし、大きく頷いた。
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