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宝の地図で借金返すって本気か!?

15話

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「う、嘘だろ…?」
ゾンビから取り出されたのは俺達も1人1つずつ持っているステータス帳だった。

「ちょっと待って、そしたら私たちは今までずっと冒険者の死体と戦ってたのか?ゾンビじゃなく…?」
リリーの顔が真っ青になっている。

要するに、俺達が今まで倒してきたのは前にここに入ってきた冒険者だったということか?そしたら俺たちは…

「こ、これって私たちが殺してしまったということになるのかしら…」
ミシェルが怯えた目をして言う。

大丈夫だ、俺達が倒す前から死んでいた。
一応はその場では言いはなったものの、その証拠はどこにもない。彼らが動いていた以上、何を持って死と判断できるのかがわからないからだ。

俺たちはその場では少し立ちすくんでいた。進まなくてはかえって危険であることはよくわかっている。ただ、その思いよりも戸惑いがこの場を支配していた。


「そ、そろそろ行くか。」
少し時間が経ってから俺は全員に声をかける。その声に反応するようにそれぞれの体は動き始めた。

少し歩いていくと、ゾンビが1人現れた。俺たちは先程の一件からどうしても攻撃しづらくなってしまっていた。とにかく、リリーがためらいながらもショットガンで撃ち抜く。

ある期待と恐怖のなか見たステータス帳には、ゾンビが記録されることはなかった。

「あの人たちが生きているとして、どうして私たちに襲ってくるのかしら。不思議だわ。」
たしかにそうだ。そして、それは彼らが生きていなかったとしても同じことだ。

「まぁ、誰かがコントロールしていると考えるのが妥当だろうな。このダンジョンを作った黒幕がいると考えるべきだな。」
リリーが、その長く美しい髪をいじりながらいう。髪をいじったり腕を組んだり、そんな動作が全員に見える。やはり、恐怖で落ち着かないのだろう。

「誰かをコントロールする魔法なんて存在するのかしら…私は聞いたことないわ。」
ミシェルはこちらに目線を配り、あなたたちは?と尋ねる。俺たちはそもそも知る由もない。

「そういう特殊なやつが存在して裏で糸引いてるってことだな。」
なにより、これだけの数の冒険者がどこからともなく集められたとは考えづらい。
つまり…

「ここの冒険者たちはこのダンジョン内で亡くなった、と考えるべきだよな。」
リリーのその発言は俺たちの空気を凍らせた。これだけの冒険者が過去にこのダンジョンに挑んでおり、そしてここで殺されたということだ。

「このダンジョンにその黒幕がいる可能性があるわね。」
なるほど、それで軍資金の話も納得ができるようになったな。つまり、この奥にいるとんでもないやつを倒してこいということだったのだろう。


俺たちはその後も適度に休息を取り、戦闘からは極力逃げて最後の扉の前に立った。
「この扉の奥だな。準備はいいか?」
俺が周りに確認する。3人が頷く。…あ、ひとりだけ首を振っている。ガブには普通は逆であることをそろそろ教えないとな。

俺は扉をそっと少しだけ開いた。
そこには黒い羽を生やした人形の生き物がいた…。まさかこれは…。

「お、やっと来たかぁ!随分とゆっくり…」
俺は一度状況を整理するために扉を閉じた。

「お、おいリーダー!何やってるんだよ!なんか中のやつがしゃべってる途中だったぞ!」
「いや、違うんだ。すこし驚いて…」
あの姿、間違いない。堕天使とかそういうのだ。ということはもしかしたらガブと知り合い…

俺はガブの方に目をやると、不思議そうな顔をしたガブが言う。
「どうしたんですか?ミツルさん。」
「いや、お前は覚悟をした方がいいと思うぞ。」
ガブが不思議そうに俺を見る。

俺は改めて扉を開ける。
「おい!俺が話してる途中でなんで閉じるんだよ!失礼だろ!」
黒い羽を生やした男が怒っている。

扉を開けきり、全員が部屋に入っていくとガブの動きが止まった。
「バ、バラク…」
あ、やっぱりそうなのか。
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