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宝の地図で借金返すって本気か!?

17話

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急に雰囲気が変わった。こちらをにらむ眼光が鋭く光っている。それは獲物を狙う狩人の目だ。

「逃げられないって、まだ軽くふざけただけじゃないか。何がそんなに。」
鼓動が早くなる。焦りが言葉を勝手に生み出す。逃げるために本能が俺に語らせた。

「俺が堕天しているってことがばれたらいかんのよ。この黒い羽がその象徴になっている以上、見られたらアウトだ。」
バラキエルが淡々と語る。

黒い羽を不気味に靡かせる堕天使。正直、ガブが堕天したとしても勝てそうな気しかしないから堕天使を嘗めていた。でも、対峙してわかる。これは強い。

「バラク!そんな変なこと言わないでください!堕天なんてやめて改心すれば軽い天罰で済むじゃないですか!?」
ガブが諭す。
「それは出来ねぇな。仕方ない。どうせ死ぬお前らだが、冥土の土産に俺の置かれている状況を話してやるよ。」

バラクが口を開こうとした時、女性の声がダンジョンに響く。
「ちょっと待った!」
リリーだ。こいつはいったい何を。

「お前らが天使だってのはよくわかった。そしたらここで私らを殺すのは得策じゃないんじゃないのか?ガブがお前の堕天をゴッドにチクるぞ。」
ここで交渉に入ったか。リリーが勇ましい目をしながら、バラキエルに持ちかける。

「お前らはここに来るまでにいったい何を見てきたんだ。大量のゾンビと戦ってきただろう?」
バラキエルは不敵に笑う。
「あれは全員魂があの世にいってない。それも俺の秘密に関係しているのよ。どのみちお前らは助からねぇんだし、黙って聞いとけ。」

そこまでお見通しだったということなのだろうか。まるで答えを初めから用意していたかのように即座に回答した。

「俺は今、ドラゴンの手先になっている。」
空気が凍るのがわかった。ガブが真っ先に反応した。
「なんですって!天界でも問題視されているあの古のドラゴンの手先ですって!バラク!貴様!」
それは恐ろしい剣幕で、今までのガブからは想像もつかない。というより、龍は天界でも対処できないのかよ。なんで俺に倒させようとしているんだ神は。

「そう怒るなよガブ。お前もすぐに俺と一緒に居させてやるからさ。」
言葉にならない怒りに震えるガブをミシェルが抑える。
「続けろ。手先ってのはどのドラゴンのだ。」
リリーが続きを催促した。 ん?どの?そんなにたくさんいるのか?

「お前はさっきから冷静だな。ただ、どのドラゴンというのはおかしいな。全員が古の龍の手先だ。古の龍がトップ。その手先に氷の龍と炎の龍がいる。そして、そいつらと契約してやつらと協力する代わりに力を貰ったのよ。」

「それが、ゾンビ化か。道理で見ない魔法だと思った。」
「赤髪の美女。惜しいが足りないな。それだけじゃ説明になってない。」
おいまて、なにすんなり美女とか言っているんだこの堕天使は。
うつむくリリー。お前もこの空気で赤くなるな。何してんだお前らは。

「死者の魂の保留。」
怒りをなんとか静めた様子のガブがいつにない低い声で話す。
「死者の魂の保留…?」
質問を投げ掛けようとした俺にバラキエルが食いぎみに話す。

「流石は天使。お前らが嫌う理由がよくわかっているな。そこのくそガキがこの世界に来た理由にも関係しているんだが、まぁ、その話はいいや。」
その話めちゃくちゃ気になるぞ。なんだそれ教えろよ。リリーとミシェルも今の発言に引っ掛かっている。
「別の世界から来た…?」

俺の思いとリリーとミシェルのを置いて、バラキエルの話は進む。
「まぁ、簡単に言うと、俺たちは天界に魂を送らないようにも出来るって訳だ。そのお陰で天界には俺の堕天もばれない。龍としても一見すればこの世界は冒険者と龍の近郊を保っているように天界からは見えるわけだ。」

この話のまずさを、俺は理解してしまった。つまり、龍がいざ活動を始めたとき、天界はバラキエルの存在という奇襲を食らうはめになる。つまり、バラキエルがいれば。

「天界の敗北もあり得る…」
「そうだ。鬱の兄ちゃんも思いの外、頭が回っているな。」
こいつ、どこまで俺のことを知ってやがる…。

「フハハハハハハハ!ようやく!俺を堕天なんてさせてくれた心の狭い神に報復が出来るって訳だ!今からでも楽しみで仕方ねぇ!その前祝いに秘密を知ったお前らをゾンビにでもして、来る日にゾンビ兵として天界に送り込んでやるよ!」
「貴様!心の芯まで堕ちましたね!バラクめ!」
その瞬間、ガブが怒り心頭に駆け出していった。
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