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宝の地図で借金返すって本気か!?

24話

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昨日の言い合いのお陰で少しすっとしたせいか、それともバラキエルとの戦いで疲労していたせいか。
俺は普段よりも寝付きが良かった。まだ、光や音が気になって起きてしまうのだけれど。

にしても外が少し賑やかだな。そのせいで起こされたというのが本音なのだが。

俺が目を開けると、隣で寝ていたリリーが目を開けていた。
いつも快活なリリーも周囲に気を配ってか小声で話しかけてくる。
「あ、起きたか。リーダーおはよう。今日は眠れたか?」
俺は黙って頷いた。

「リリー。その、昨日はありがとう。なんか、少し救われたような気がした。」
「お、おい!なんか改まって言うなよ!照れるだろ!」
「朝から何をイチャイチャしてるの?二人とも。もう少し静かにイチャイチャしてくれないと嫉妬あまり殺しちゃうわよ。」

こえぇよ。
悪魔の王に言われてると思うと、普段より恐怖が倍増する。

「おぉ、おはようミシェル。別にイチャイチャなんかしてねぇからな!」
「可愛いわね、相変わらず。」
いつの間にリリーが弄られる側になったんだろう。なにか必死になっているリリーを相手にそれをからかう構図。それがなんとも。

「親戚のおばさんって感じだな。」
「あら、ミツル。ぶっ殺されたいのかしら?」
しまった、つい口をついて出てしまった。

そんなこんなでぎゃあぎゃあと他愛もないやりとりをしている、いつも通りの朝を過ごした。ガブは因みに寝ている。
「おい、ガブもうそろそろ起きろ!今何時だと!」

俺は言葉を詰まらせた。今何時なんだ?
俺は壁の時計を見て時間を確認する。

12:00だ。
「おい!リーダー大変だ!授賞式の時間だぞ!」
いや、洒落にならん。外が騒がしかったのはそのせいだったのか。
「もうみんな揃っているわ!早く着替えて行きましょう!」
急に慌ただしく動くメンバー。リリーとミシェルがその場で着替え始めたので、俺は一応目を背けておいた。別に見てもなんとも思わない…けど。

目をそらした先にはガブが寝転がっている。因みにまだ起きていない。こいつは一体どれだけ寝るつもりなんだ。
「おい!起きろガブ!もう12:00だ!授賞式の時間だぞ!」
「もう、どうでもいいですよそんなの。私はここで寝てるので皆さんで行ってきて下さい。」
しばいてやろうかこの堕天使。なんでこいつの羽は黒くならないんだ。

そうこうしていると、ドアを物凄い勢いで叩かれた。
「冒険者の皆さん!もう式典の時間ですよ!何しているんですか!早くしてください!」
慌てた声の主は町長だった。 
「今いく!少しだけ、待っててくれ爺い!」
リリーが答える。待たせてる身の癖になんて偉そうなんだ。

「もうこっちはいけるぞ!リーダー!急ごう!」
ミシェルとリリーが着替えが終わったようだ。
「おい!ガブ!もうみんな準備できたんだぞ!?早く行こう!」
あぁ、もうめんどくさい。俺だってここで寝ていたい。部屋からでて余計な式典とか行きたくないのに!
「嫌です。皆さんだけで行ってきて下さい。」
どうしてくれようかこの堕天使を。
おい、これもう立場逆だろ。お前うつ病なんじゃないのか? 

俺は仕方がないのでガブの首根っこを掴むと、そのまま階段から引きずり下ろして行った。
「いたたたたたたた!痛いです!背中砕けます!」


俺たちは10分遅れで広場についた。
「おぉ!冒険者さん達だ!」
「いやぁ、ひやひやしたぜ!やっぱりヒーローは遅れて来るもんだな!」
そんな大層な身分じゃない。寝坊で式典に遅刻するヒーローとか聞いたことないぞ。

俺たちは表彰式の中心に立った。
会場がざわついている。

「おい、なんであの天使はパジャマなんだ!?」
「いや、あれは天使の私服なのだろう。やっぱり人間とは感性が違うんだ。」
そんなわけあるか。そんな理由で丸め込まれるやつなんていない…
「そんなもんか。まぁいいや。」
適当かよ。こいつらどこまで適当なんだ。

「おい!あの天使枕も持ってないか?」
俺はふとガブの方を見る。左手にしっかりと枕を抱えていた。 
「おい、ガブ。お前なんで枕なんか持ってんだよ。」
「おぁ!鞄かと思ってました!」
モノボケか。ていうより、普段鞄持ってないだろ、お前。誰の鞄だと思って持ってきたんだよ。

コホン!
町長が咳払いをする。
「それでは冒険者諸君。此度の…えーと、あれだ。」
ん?なんだ?台詞とんだのか?勘弁してくれよ、早くこんな式典終わらせてくれ。

「まぁ、そのあれだ!ありがとう。」
…え?いや思い出すかカンペ見るかしろよ。諦めるなよ。なんでこんな大袈裟に人集めてセリフは適当なんだよ。

町長は手元に持っていたメダル?のようなものを俺たちに1枚ずつ渡す。
「それはこの町の認可メダルです。あなた方が誠実な人である証になります。」
いや、遅刻した挙げ句に1人パジャマに枕抱えたパーティが誠実なわけあるか。
一応、ありがたく俺たちはそのメダルを懐にしまう。

「褒美として、お金を差し上げたいところなのですが、何分先日までの感染症騒ぎで財政は芳しくなく…。なんでもお願いを聞きますので、私たちに出来ることであればなんなりとお申し付けください。」

まぁ、そうだよな。むしろ、こんな大々的に式典開いてくれただけで十分だが。

そうだ。

「帰りを手伝って欲しい。馬車でクランケットの町まで送ってくれないか?」
帰りくらいは何もなく帰りたい。そう思った俺は強度の高い馬車と戦闘ができる方を馬車の運転手として用意してもらうようにお願いした。
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