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伝説と衝突って本気か!?

5話

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真っ黒だった羽を白くしたバラキエルが俺たちの家の中にいた。
おそらく、堕天使から天使になったのだろうが…
 
「なんで、お前が生きているんだ?」 
動揺の色を隠せないリリーが尋ねる。
「あぁ、天使が下界で死んだらゴッドに回収されるのよ。で、ゴッドの命令で帰ってきたってわけだ。」
なんなんだそれは。やっぱり天使はチートだな。
 
ミシェルの晩御飯の準備の音を聞きながら、俺たちはバラキエルに質問を質問を重ねていく。
「ゴ、ゴッドはどんな命令を?それに、あなた堕天の罰はどうしたのよ。」
「1度に2個も聞くなよな?全く、慌てん坊な俺のハニーちゃんめ。」
「本当に止めてください。殺意が湧いてとどまることを知らないので。」
 
どんな言葉使ってんだこいつは。
歯を食い縛りながらギンとガブはバラキエルを睨み付ける。
バラキエルは呆れたように笑うと、話を進めた。
 
「んじゃ、まずは罰に関して。俺が操っていた死体の魂はあのあと一気に天界へと送られた。まぁ、俺がストップさせていただけだしな。それの対処を毎晩天界で責任をもって行うこと。これは罰というよりは事後処理だな。」
 
なんだ、バラキエルによって操られていた人たちはちゃんと成仏されるわけか。
俺は安堵のため息をついた。
 
「そんで、もう一つの罰がお前の鬱の治療を手伝うってこと。これが今のところの罰だ。」
「ちょっと待ってください!ミツルさんのお手伝いはあくまで私たちの業務であって、罰なんかじゃありません!」
 
天界では罰扱いとか、流石にメンタルにくるな。そんな扱いならもう放っておいてくれよ。
 
「私、ゴッドに掛け合って来ます。納得がいきませんので。」
「まぁ、落ち着けって。要するに言うと、罰は保留ってことだよ。ミツルの治療が済んでから改めて判断を仰ぐってことだ。」 
「それでも…」
ガブは言葉に詰まった様子でいる。
それもそうだ。この話の流れでいくと、バラキエルが仲間に加わるということになる。
 
そんな、微妙な雰囲気の食卓にミシェルの料理が運ばれて来た。
「なぁ、これ全部お前が作ったのかよ!?すげぇなお前。見た目も良くて料理も出来るのかよ!」
「あらまぁ!流石は天使さん!嘘がつけないのね?さぁ、どんどん食べて?」
「おぅ!お、これうめぇな!お前らこんな良い女がパーティにいるとか恵まれてんな!」
「もぅ!お上手なんだから!」
 
はい、1人落ちた。なるほど、バラキエルはこうやって1人ずつ買収していく作戦か。
…てか、さっきの空気からよくお前はそんなテンションで話せるな。すげぇよ、お前。
 
リリーが沈黙を破り、言葉を発する。
「お前な。ついこの前私たちはお前に殺されそうになっていたんだぞ?なのに、そいつをあっさり…」
話途中のリリーにバラキエルが耳元で何か言っている。
 
「な!?なんで!あ、いや、違う!そんなんじゃ!」
なんだなんだ?急にリリーの顔が赤くなっていくぞ?
 
バラキエルは続けて耳元で続ける。
「いや、それはやめて!わかった、わかったから!てか、違うんだけどな!?そんなんじゃないぞ!?」
「なんだ、赤髪。そんなんじゃないなら話して良いよな?」
「勘弁してくださいぃ。」
涙目になって、リリーはしおらしくなってしまった。
なんかこいつ最近急にいじられキャラになったな。
 
まぁ、なにはともあれ、二人目も無事に落とされてしまった。
 
「さぁ、後はお前らだけだぞ?」
なんでこいつにこんな勝ち誇った顔をされねばならんのだ。
まぁ、でもこれはゴッドの命令なんだよな。だとしたら、納得がいかないところがある。
 
「なぁ、ゴッドはお前にとりあえずの罰として俺のところにお前を送ったんだよな?」
「あぁ、そうだが?どうした、鬱の少年よ。」
もう少年って年でもないし、その呼び方はやめろ。
 
「いや、ガブの言うとおりなんだがな?俺たちの手伝いは罰でなく業務なんだよな?ガブは業務としてしていることをお前は贖罪としてやるっていうのはおかしくないか?」
そう、もしそうなれば、ガブはなにもしていないのに罰を業務だからという理由で受け入れていることになる。
 
「まぁ、色々あるのよ。とりあえず、お前たちのために言っておくがここで俺を受け入れておかないと偉い目にあうぞ。」
バラキエルの目が真剣なものになる。
 
「理由を言ってもらえないのか?」
「それは出来ないな。」
これはまじでなんかあるのか?交渉か?
 
俺は少し考えてから仕方ないと思い、OKを出すことにした。
 
「英断に感謝するよ。よろしくな、鬱病!」
「その呼び方は変えろ。」
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