Pomegranate I

Uta Katagi

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第二章 伝言

見たことのない世界

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 何にでも興味を持つ彼は、私と出会う前に通信教育で作詞も学んでいた。彼が言うには、本当に良い詩って、当たり前のことはあえて文字にしないらしい。伝えたい主題があるとしても、直接的な表現ではなく、描写する風景や人の雰囲気で伝えるのが一流なんだと彼は話していた。

 作詞で生活をしているのを一流のプロだとすると、彼はもちろんプロではないが、確かに文章力はあったと思う。昔から学内外の調整事が上手だったのも、相手の心情を察した上で、物事を的確に表現する文章力があることが理由なのかもしれないと思うことがあった。特に、誰かに何かをお願いするメール文や、失敗したことを詫びる手紙の文章表現などは、初対面の人でも彼の文章を読むと、気持ちが伝わってきて、謝罪文なのに、なぜか心が温かくなると言っていた。
 
 その彼のことだ、このサイトに、僕は既に死んでいるとか直接的に書くのはセンスがないと思ってこういう表現にしたのだろうなと、彼の心情を推察した。

 更に続きを読んだ。

 『僕は、これから詩ちゃんが見たことのない景色を見せると約束したよね。これから一生をかけて、僕が知る世界の全てを詩ちゃんに知って欲しいと思ったからそう約束した。だけど、それがすぐに叶えられなくなったときのことを考えて、ここにその約束を果たすためのメッセージを記録しました。』

 これもリスク管理か… 凄いなと思いつつも、私と付き合いながら約束が果たせなくなくなることを想定していたなんて少し寂しく思った。

『なので、まずはここに記載した情報を全て受け取って欲しい。そして、その内容を理解した後に、神々の時代から受け継がれている大切なものを受け取って欲しい。詩ちゃんが今まで見たことのない世界への扉が見つかるから。』

 え?見たことのない世界の扉って何?
でも、いっちゃんがいなくなってしまった今、それを独りで見つけたとしても、どうしようもないじゃないの。そういう疑問が頭をよぎった。

 『人にプレゼントを渡すときって、ありふれたものでは感動を与えられない。その人の予想を超えるものを贈らないとね』というのが、彼の口癖だった。そうだ、彼は魔法使いだ。決して、期待を裏切らないはずだ。

 だから、私の想像を超えるものであることは確かだ。ここまでして彼が私に渡したかった大切なものを受け取ってみたい。神々の時代からというのも気になる。人間球体説でいう時代、今のように人間がまだ二つに分けられていなかった時代のことだろうか。

 そして、次の文章には、開封した封筒の中身についての具体的なことが記されていた。

 『そこにあるのは、大切なものを保管している貸金庫の鍵。そして、その貸金庫は、この世の中で僕しか知らないネット口座で運営されていて、この情報を受け取った詩ちゃんだけが見つけることができる暗唱番号で開けることができます。こうなってしまうと、扉を開くまでには少し時間がかかるから、ゆっくり慌てないで受け取りに来てくださいね。時間は十分にあります。』 
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