Pomegranate I

Uta Katagi

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第三章 探求

ヒエログリフ

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 そういえば、いっちゃんがよく言っていた。僕は将来、8種類の言葉を話せるようになりたいって。英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、中国語、韓国語、日本語、そして手話。人とコミュニケーションを取るツールが言語だとすると、手話も言語の一種だと思うと言っていた。

 これも凄いなと思ったが、こうして世界各国のことを調べていたことを知って、少し納得できた。きっと、神話の体系や星座の起源を知るにつけて、どうして世界にこんなにたくさんの言語があるのだろうと好奇心を持ったのだろうと思った。

 言語と言えばそれを表記するのは文字だ。その疑問に答えるかのように、文字の起源という本が段ボール箱から出てきた。文字って何だろう、これも考えたことのないことだったが、この本では、消え去る運命にある話し言葉を、どうしたら保持し、書き留めて、後世に伝承できるかという課題があり、そのために文字が発明されたとあった。

 なるほど、詩も研究者になったかのように、その書籍を読み続けた。現代のような文字が創造される前は、石や木に切り込みを刻むようなことが行われていたようだ。意味のある表現の痕跡、エクリチュールというらしい。フランス語の書くという動詞のecrireの語源だ。秘密、神秘という意味もあるらしい。それらが、メソポタミアで楔形文字に進化してきて、現在のアルファベットに繋がっているという。

 いっちゃんが遺したメッセージも、意味のある表現の痕跡、エクリチュールだ。暗証番号の秘密もある。メッセージを書き留めて、それをファイルにして遺している。何よりも貸金庫というのは、よく考えたものだと思う。

 段ボール箱の中にヒエログリフ入門という本を見つけた。昔、いっちゃんから、「ヒエログリフで、『詩』ってこう書くんだよ」って言われたことがある。ヒエログリフは古代エジプトで使われていた文字で、記号のような文字だ。その知識にも驚いたが、この本が情報源だということに気づいた。この本には、ヒエログリフの50音対照表があって、簡単にローマ字のように翻訳できるようだ。詩は、その表を見て、自分の名前をヒエログリフに翻訳してみた。


      
 そう、確かこんな文字だった。この文字を見て、いっちゃんが、「うずらの雛がパンを食べてワシになるみたいで可愛いね」と言ったことを覚えている。続けていっちゃんは、「ギリシャ神話によると、鷲は神様の命を受けて、情報収集の役割を果たしていたから、将来、詩ちゃんも何かを見つける使命を帯びるかもね」と話した。

 ギリシャ神話とは、いっちゃんを攫っていった鷲の話しだ。七日間物語にもその話は出てくる。私がゼウスを嫌いになった黒鷲の話だ。

 でも、ふと思った。いっちゃんが言っていたのは、私がワシになること。もしかして…。それって、私が誰かを攫うということ?そう考えて、ドキッとした。
  
 ティーカップに残った冷たい紅茶を飲み干しながら詩は想いを巡らせた。カップの底には、黄色いゆずが残っている。

 「きっとそうだ。この状況にピッタリだ。」私は、今、いっちゃんが残した大切なものを見つける使命を帯びている。そして、ワシになって、今度は私がいっちゃんを取り戻せるかも知れない…
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