68 / 97
第三章 探求
洗濯
しおりを挟む
昨夜、入浴のときに浴室の洗濯籠に入れておいた衣類を種類ごとに洗濯ネットに纏めて、順番に洗濯機に入れていく。お気に入りの爽やかな香りのする洗剤を所定の場所に投入して、洗濯ボタンを押した。これまでずっと茶室の図書館の資料を探求してきて、ついにここまで来たかと思った。
そう、大型連休の初日の朝、いよいよ最後の段ボール箱を開ける日になった。今日新たな発見があり、ついに暗証番号のヒントが見つかるかも知れない。もちろん、ヒントが見つからない可能性の方が高いことも理解している。期待と不安が入り混じった感情は、まるで宝くじの当選番号を確認するときの感情のようだった。
リビングに戻り、浴室から自動洗濯の水音が聞こえる中、少しドキドキしながら、最後の段ボール箱のガムテープを剥がした。箱を開けると、一番上に『饗宴』という本があった。著者はプラトン。この本にはたくさんの書き込みがあった。その内容を見て、これがいっちゃんが何度も言っていた人間球体説を唱えている本だとわかった。
人間は独りでは不完全。残りの片方となる相手を見つけることで完全になれる。人生は、その残りの片方を見つけるための旅路。プラトンの『饗宴』の中では、その内容を相手に問いかけるような形式で記載されている。こんな昔によくそういうことを考えついたものだと思う。今でもその考え方は実際に人に影響を与えている。偉大な哲学者は凄い。
他にも、哲学者のフロイトやエーリッヒ・フロムが書いた本が入っていた。ここは哲学研究所FI/7だ。なかでも、ユング心理学という本は、その表紙が可愛いイラストで記載されていて、学校の教科書のような表紙の他の本とは違って、ひと際、目を引いた。中を開くと、夢には意味があるとか、無意識の世界が大切だとか興味深い項目の頁が列挙されている。この間の変な夢も気になるし、あまり書き込みはないけれど、後で読んでみようと思った。
更に、段ボール箱から本を取り出していくと、旧約聖書の創世記や般若心境の宇宙などという宗教に関する本があった。創世記を開くと、最初の見出しは天地創造となっており、『はじめに神は天と地を創造した。』と書いてあり、なるほど、これはまるで神話だなと思った。そうか、多分、いっちゃんの中では、宗教の世界観も神話の一部なんだ、だからこういう書籍も研究対象にしているのだなと思った。そう、ここは宗教学研究所FI/8だ。哲学研究所と合わせて、そのパスワードはポルックスだ。
ここで、芽依ちゃんの言葉を想い出した。神様の子ポルックス、天界と冥界を行き来し、不死の命を分け合って人間の命を持つ兄弟と一緒に過ごしたという神話上の存在だ。この最後の箱には、貸金庫に繋がる何かがあることを期待させる。
学問としての哲学書以外にもこの箱には、人間がこの世界をどう捉えているのかという思想に関する本が入っていた。中には、占星学などの占いの本もある。朝のテレビニュースで、今日の何座は何位とかいうランキングを発表しているのも星占いだ。
そういえば、いっちゃんは、朝の星占いをこまめにチェックしていた。自分の星座だけでなくて、私の星座の占いの内容も毎朝チェックしてくれていて、私の星座がその日の一位のときは、朝から「詩ちゃん一位だよ☆」とメールをくれた。
反対にランキングが思わしくないときは、「今日も頑張ろうね」とか気遣うメールをくれた。どんなときも、私をいつも前向きにしてくれる。そんな心遣いが嬉しかった。
そう、大型連休の初日の朝、いよいよ最後の段ボール箱を開ける日になった。今日新たな発見があり、ついに暗証番号のヒントが見つかるかも知れない。もちろん、ヒントが見つからない可能性の方が高いことも理解している。期待と不安が入り混じった感情は、まるで宝くじの当選番号を確認するときの感情のようだった。
リビングに戻り、浴室から自動洗濯の水音が聞こえる中、少しドキドキしながら、最後の段ボール箱のガムテープを剥がした。箱を開けると、一番上に『饗宴』という本があった。著者はプラトン。この本にはたくさんの書き込みがあった。その内容を見て、これがいっちゃんが何度も言っていた人間球体説を唱えている本だとわかった。
人間は独りでは不完全。残りの片方となる相手を見つけることで完全になれる。人生は、その残りの片方を見つけるための旅路。プラトンの『饗宴』の中では、その内容を相手に問いかけるような形式で記載されている。こんな昔によくそういうことを考えついたものだと思う。今でもその考え方は実際に人に影響を与えている。偉大な哲学者は凄い。
他にも、哲学者のフロイトやエーリッヒ・フロムが書いた本が入っていた。ここは哲学研究所FI/7だ。なかでも、ユング心理学という本は、その表紙が可愛いイラストで記載されていて、学校の教科書のような表紙の他の本とは違って、ひと際、目を引いた。中を開くと、夢には意味があるとか、無意識の世界が大切だとか興味深い項目の頁が列挙されている。この間の変な夢も気になるし、あまり書き込みはないけれど、後で読んでみようと思った。
更に、段ボール箱から本を取り出していくと、旧約聖書の創世記や般若心境の宇宙などという宗教に関する本があった。創世記を開くと、最初の見出しは天地創造となっており、『はじめに神は天と地を創造した。』と書いてあり、なるほど、これはまるで神話だなと思った。そうか、多分、いっちゃんの中では、宗教の世界観も神話の一部なんだ、だからこういう書籍も研究対象にしているのだなと思った。そう、ここは宗教学研究所FI/8だ。哲学研究所と合わせて、そのパスワードはポルックスだ。
ここで、芽依ちゃんの言葉を想い出した。神様の子ポルックス、天界と冥界を行き来し、不死の命を分け合って人間の命を持つ兄弟と一緒に過ごしたという神話上の存在だ。この最後の箱には、貸金庫に繋がる何かがあることを期待させる。
学問としての哲学書以外にもこの箱には、人間がこの世界をどう捉えているのかという思想に関する本が入っていた。中には、占星学などの占いの本もある。朝のテレビニュースで、今日の何座は何位とかいうランキングを発表しているのも星占いだ。
そういえば、いっちゃんは、朝の星占いをこまめにチェックしていた。自分の星座だけでなくて、私の星座の占いの内容も毎朝チェックしてくれていて、私の星座がその日の一位のときは、朝から「詩ちゃん一位だよ☆」とメールをくれた。
反対にランキングが思わしくないときは、「今日も頑張ろうね」とか気遣うメールをくれた。どんなときも、私をいつも前向きにしてくれる。そんな心遣いが嬉しかった。
15
あなたにおすすめの小説
皇帝陛下!私はただの専属給仕です!
mock
恋愛
食に関してうるさいリーネ国皇帝陛下のカーブス陛下。
戦いには全く興味なく、美味しい食べ物を食べる事が唯一の幸せ。
ただ、気に入らないとすぐ解雇されるシェフ等の世界に投げ込まれた私、マール。
胃袋を掴む中で…陛下と過ごす毎日が楽しく徐々に恋心が…。
声を聞かせて
はるきりょう
恋愛
動物の声が聞こえる彼女と冷たい第二王子の物語。完成しました。
「……反対されない、というのは、寂しいことだと思いますの。だから…私が反対してさしあげます」
サーシャは最上級の笑顔を浮かべた。そして、思い切り息を吸い込む。
「何でも思い通りいくと思うなよ、くそ王子!!」
「サ、サーシャ様!?」
なりゆきを見守っていたハリオが慌てたようにサーシャの名を呼んだ。一国の王子への暴言は不敬罪で捕まりかねない。けれど、言わずにはいられなかった。
そんなサーシャの言動にユリウスは一瞬目を丸くし、しかしすぐに楽しそうに笑った。
「お前面白いな。本当に気に入った」
小説家になろうサイト様にも掲載してします。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
【完結】エレクトラの婚約者
buchi
恋愛
しっかり者だが自己評価低めのエレクトラ。婚約相手は年下の美少年。迷うわー
エレクトラは、平凡な伯爵令嬢。
父の再婚で家に乗り込んできた義母と義姉たちにいいようにあしらわれ、困り果てていた。
そこへ父がエレクトラに縁談を持ち込むが、二歳年下の少年で爵位もなければ金持ちでもない。
エレクトラは悩むが、義母は借金のカタにエレクトラに別な縁談を押し付けてきた。
もう自立するわ!とエレクトラは親友の王弟殿下の娘の侍女になろうと決意を固めるが……
11万字とちょっと長め。
謙虚過ぎる性格のエレクトラと、優しいけど訳アリの高貴な三人の女友達、実は執着強めの天才肌の婚約予定者、扱いに困る義母と義姉が出てきます。暇つぶしにどうぞ。
タグにざまぁが付いていますが、義母や義姉たちが命に別状があったり、とことんひどいことになるザマァではないです。
まあ、そうなるよね〜みたいな因果応報的なざまぁです。
愛しの第一王子殿下
みつまめ つぼみ
恋愛
公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。
そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。
クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。
そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる