奴隷を買うために一億円貯めたいので、魔王討伐とかしてる暇ありません~チートって金稼ぎのためにあるもんでしょ?~

服田 晃和

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第2章 国家転覆?

第23話 蛇の目

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 オルフェさんから逃げるように冒険者ギルドへ向かった俺は、掲示板に貼られた依頼書を端から端まで確認した。ナバス平原とは反対方向へ向かうような依頼を見つけ、即座にそれを受注して門へ戻っていく。

 そしてその依頼書をオルフェさんに見せた後、は無事に門を通ることが出来たのだった。

 ◇

 オルテリアを出発してから約一日が経過した。俺は今回受けた『夜光石の採掘依頼』の目的地であるゴワイロ洞窟に向かって、着々と歩みを進めている。

 なぜネムのいるナバス平原に向かわないかって?それについては説明する必要なんてないだろう。

「ありがとうございます、ユウキさん!こうして依頼に同行する許可をくださって!」

 一晩の野営を終え、朝食を食べ終えた俺の元へやってきたオルフェさん。ここには風呂も無い筈なのに髪は艶やかで、彼女からは花の香りが漂ってきていた。

 一般人なら、彼女の後ろで鼻を伸ばしている部下達のように頬を染めていることだろう。しかし今の俺は違っていた。

「いえいえ……でも、本当大した事しないですよ?ゴワイロ洞窟に行って夜光石採ってくるだけですから。本当に同行する意味なんて一つもないですよ?」

 オルフェさんが貴族だということも忘れて嫌味満載の言葉をぶつけていく。かぼちゃの癖して勘が良いのか、まさか俺についてくるとは思わなかった。

 そんな俺の嫌味など意に介さず、オルフェさんは優しく微笑みを浮かべて見せる。

「十分素晴らしい依頼ですよ!我々も張り切って調査させて頂きます!」

 そう言うとオルフェさんは出発の準備をしている部下たちの元へと戻っていった。俺は傍に立って俺達の会話を眺めていた強面の男性の元へ近寄り、小声で尋ねた。

「あの……ギルデロイ様はああ仰ってますけど、皆さんも本当に大丈夫ですか?デナード伯爵の件で調査にいらしてたんですよね?私の依頼に同行していたら、時間がもったいなくありませんか?」
「ふん!我々はオルフェ様の指示に従うのみ!オルフェ様が是といえば、全力でそれを全うする!それが特務調査団の使命だ!貴様は黙って依頼を遂行していろ!!」

 俺の問いかけに対しキレ気味に反応する男性部下。部下の方が反対意見を述べてくれれば、上手いことオルフェさんに告げ口して調査団の連中を巻けると思ったのだが、そううまくはいかないようだ。

 仕方なく俺は出発の準備を進めていく。こうなったら最速で洞窟へ向かい、一秒でも早くオルテリアへ帰還して別の作戦を練らなければ。

「ユウキ・イシグロ!こちらの準備は完了したぞ!貴様も用意が出来たのなら、直ぐに出発するぞ!」
「あ、はい!では皆さん、今から目的地へ向かいます!よろしくお願いします!」

 調査団の連中に指示され、俺は集団の先頭を進み始める。そして歩くこと半日。俺達は目的の洞窟へ辿り着いた。

「へぇーここがゴワイロ洞窟ですか!洞窟というより……縦穴ですね!」

 目の前にある大きな穴を見てそう呟くオルフェさん。他の連中も「ほぉー」と感心した様子で眺めていた。

「この穴は高さ三十メートルあるんです。穴を降りたら夜光石が採掘できるポイントまで直ぐなんですが、穴を降りれる人が中々居ないので、高ランクの依頼になっています」
「三十メートルですか!それはかなりの深さですねー!ユウキさんはどうやって降りるんですか?」

 そう言って俺の目を見ながら首をかしげるオルフェさん。今回の質問は俺の懐を探るような感じではなく、率直に疑問に思ったからという感じの目だった。

 だからといって気を許して全てを語ってはいけない。ここでも慎重にいかなければ、疑いが強まってしまうからな。

「私は『滑空』の魔法が使えるので、降りる時はその魔法を使っております。その代り、帰りは頑張って登るしかないんですけどね」

 本当は魔法なんか使わなくてもそのまま自由落下で降りれるし、帰りは『飛翔』魔法で飛んで帰ってこれる。だが普通は生身で三十メートルも落下できないし、『飛翔』魔法は高度な風魔法なので使用出来ることは伏せておきたい。

「それは大変ですね……では今回は同行させて頂いたお礼として、私達が『飛翔』魔法でサポートいたしましょう!貴方達、ユウキさんに『飛翔』魔法を!」

 俺の発言を信じてくれたのか、オルフェさんは心配そうに呟いた後、部下達に声をかけ始めた。オルフェさんの部下が俺に向けて魔法を詠唱し始める。程なくして詠唱が終わり、俺の体に『飛翔』魔法が付与された。

「申し訳ございません。私なんかのために『飛翔』魔法なんて使って頂いて……」
「気にしないでください!さぁ一緒に行きましょう!」
 
 オルフェさんの掛け声を合図に、一斉に縦穴を降りていく。降りていく最中、何故かオルフェさんが俺の事をじっと見てきていたが、理由は分からなかった。

 三十メートル地点に到着すると、壁側に大きな横穴が開いていた。その先に灯りは一つもなく暗闇が続いている。その先へ向かうため、俺は右手の平を上に向けて魔法を発動させた。

「──『光灯火』」

 眩い光を発した光の球が手のひらから打ち出され、洞窟に向かって進んでいく。その球からポツポツと光の雫が垂れ落ちていき、地面に付着してその場を明るく照らしていった。

「光魔法ですか……道中でもお使いになっておられましたが、魔法がお上手なんですね!」
「ありがとうございます。その代り戦闘の方はからっきしなんですけど」

 乾いた笑いで何とかごまかすが、オルフェさんの目は蛇のように俺をじっと見つめていた。光魔法といっても中級の魔法だし、そこまで怪しまれると思わなかったのだがこれでもマズかったようだ。

 その場をごまかそうと俺は会話を続けた。

「この横穴を進んでいくと夜光石の採掘ポイントがあります。中に灯などありませんので、気を付けて進むようにしてください」
「ありがとうございます!我々の事は気にせず、ユウキさんは普段通りに行動してくださいね!」

 オルフェさんはそう言っているが、彼女の言葉を真に受けてはならないと俺の勘が言っていた。彼女は俺の一挙手一投足を見張っている。より慎重に行動しなければならない。

 ならないのだが、ここは敢えてもう一つ魔法を使っておくことにした。普通の冒険者であるならば、この魔法は使わない筈が無いからだ。

 俺は『探知』魔法を発動し、横穴に向かって魔力を放出していく。波のように広がっていく魔力によって。洞窟の状況を確認していくのだ。

 その様子を見ていたオルフェさんが、何か気になったのか声をかけてきた。

「今使ったのは『探知』魔法ですか?」
「え?そ、そうです。洞窟内に魔物が湧くこともありますので、念の為確認しておこうと……変でしたでしょうか?」
「いえ!私達のために気を使って下さりありがとうございます!」

 オルフェさんはそう言うと、横穴に向かって歩き始めた。俺も彼女の後ろについて進み始める。その後暫くは、たわいもない質問をされて俺がそれに答える時間が過ぎた。

 普段絡みのない冒険者の話は興味があったのか、オルフェさんは食い気味に話を続けていた。

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