異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

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247.1キュッーピー参分クッキング1(クラーケンの腕の薄造り)✔

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 港までクラーケンの体と腕を大量に持ち帰って来た。腕は十メートルもあり、根元の直径は一メートルと極太だ。吸盤も大きなものは五十センチもあり、鋭い爪がついているものまである。この鋭い爪が食い込んで一度捕まると逃げられないのだろう。

 こんな腕で掴まれたら穴だらけになりそうだ。これだけでも凶悪なのに、強力な腕力で潰されるなんて。さらに水魔法まで使うとなれば、人魚達が討伐を諦めたくなる気持ちも分からなくもない。

 クラーケンの討伐で海の精霊の力と変身の魔道具を使ったせいか、なんだか疲れが出ている。少し休んだ方がよさそうだ。どうも海の精霊と契約しても、海流をコントロールする時は俺の魔力を消費しているみたいだ。大きな事象を起こすにはそれ相応の対価がいるのは当たり前だな。海の精霊と契約すればやってもらえるくらいに考えていたが、どうも違ったみたいだ。やってくれるとは一言も言ってなかったな。次からはもう少しよく考えてから使うようにしないといけないな。海流の制御が面白くなって作り過ぎたのがまずかった。魔力の利用は計画的に。だな。

 クラーケンを何匹も討伐したけど、命は粗末にしてはいけない。残さずに全部食べてあげないとね。人魚達は小さいクラーケンは美味しいと言っていたけれど、大きなクラーケンも美味しいといいな。長い腕とか皮も硬いし筋肉質なんだよね。鋭い爪のある吸盤の辺りは流石に食べれないだろうな。

 少し休憩して体が楽になった。ということで、突然ですがキュッーピー参分クッキングの時間がやってまいりました。本日はクラーケンづくし料理を作っていきたいと思います。材料ですが、新鮮なクラーケンをご用意ください。手に入らない? その場合はタコをご準備ください。

 クラーケンの胴体はイカに近いけど、腕はどう見てもタコなんだよね。前世の記憶だと、タコとイカでは茹で方が違うんだよね。タコは弱火で長い時間をかけて、イカは短い時間で茹でる。タコの腕は全部が筋肉質なのでそのまま茹でたら、筋肉が収縮してゴムのように硬くなる。

 クラーケンもあれだけ腕が筋肉質で太いと、食べれないほど硬くなりそうなんだよね。確か大根で叩くとか、棒で叩くとかして筋肉の繊維を壊すと柔らかくなって美味しくなった筈だ。なぜ大根で叩くかだけど、大根には消化酵素のアミラーゼが含まれていて、これがタコの筋肉のたんぱく質を分解する作用があると言われていた。他にも炭酸や重曹を加えて茹れば、炭酸水素ナトリウムが作用して柔らかくしてくれたはずだ。大根と一緒に炊くのも柔らかくする方法のひとつだったな。強火で茹でると筋肉が収縮して硬くなってしまうんだ。

「食べるから運んでほしいと言う、アルフレッドの頼みだから運んでは来た。だが、流石にこの大きさのクラーケンは硬くて食えそうにないぞ! 試しにかぶりついてみたが噛み切れなんだ。小さなクラーケンなら、甘みもあって美味しいが、ここまで大きなクラーケンは食えたモノではないぞ! まさかここまで硬いとは想像もしていなかった!」

 王様の手には、歯型の付いた極太のクラーケンの腕の一部が抱えられていた。試しにと言っていたが、運んでくる途中でかぶりついたのだろう。海の中だから皮も剥がしていないからな。人魚に生まれなくて本当によかったな。普段も茹でずにそのまま食べるみたいだな。味気ない食生活は俺には無理そうだ。
「そんなに硬いですか?」

「硬すぎて嚙み千切ることができんぞ! アルフレッドは本当にこれを食べるつもりなのか?」

「食べれるといいなとは思っています。なんとか柔らかく調理する方法を考えてみます」

「そうか? 難しいと思うが、期待しておこう」

 今できる方法は……棒で叩く。これだろうな。薄くスライスすれば、筋肉繊維も切れるからいいかもしれない。まず、クラーケンの腕がどれくらい硬いのか、そのまま少しだけ試しに茹でてみよう。水に入れて温度高めで茹でてみた。……タイヤのように硬くてとても食べれそうにない。クラーケンの腕を輪切りにすればタイヤが作れそうだな。

 今度はよく叩いてから低温で茹でてみる。……そのままでは硬くてとても食べれそうにない。

 タコの皮は剥がさないが、イカは剝がすんだよね。クラーケンはタコとイカの性質を合わせ持っているようだな。

 まずはクラーケンの腕を棒で良く叩く。次に皮を剥いでいくと綺麗な白くて透き通るような身が現れた。これをウインドスラッシュでスライスする。

 低温設定で魔法を使い加熱していく。これを食べやすい大きさにカット。醤油をつけて食べてみる。

「あま~い! これ、めちゃくちゃ美味しい!」

 甘いと言っても、砂糖とかの甘さでは当然ない。イカとかタコから溢れてくる甘みだ。生なので早く食べないといけないな。みんなに叩いてもらって皮を剥ぎ取るように説明する。

 加熱は俺が魔法で温度調整するのがいいだろう。スライスも俺の方が綺麗で薄く仕上げることができる。なかなか綺麗なクラーケンの腕の薄造りが完成した。

「クラーケンの腕ってこんなに甘くて美味しいんだね」

「そうね。初めて食べたけれど、これは美味しいわね」

ミルトやミトにも好評のようだ。美味しそうに食べてくれている。

「いっぱいあるからどんどん食べてね。でも、醤油はそこまで出せないからね」

「醤油をつけると美味いが、なくても美味しいぞ!」

「本当。こんなに美味しいクラーケンは初めてね! この薄いのがいいのよね」」

「そうだな。大きなクラーケンは初めて食べる。それに、こんなに薄く切ったクラーケンを始めて見た! これは美味しい。小さなクラーケンより甘みが強くて濃厚だな」 

 人魚達は醤油が無くてもいいらしいな。王様もアクア姫、ネプトゥヌス王子まで美味しいと言ってくれている。

 どんどんウインドスラッシュでスライスしていく。

「次ができたから運んで!」

「はーい!」

 口伝てに島民も人魚達も集まり始め、即席のクラーケンパーティーになってしまった。
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