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248.見慣れない男の子(海の精霊)✔
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男の子を注意深く観察する。どこかで会ったことがあるんだよね。どこだっけな。脳をフル回転させて記憶を遡る。……雰囲気? 顔の輪郭? 上手く説明できないが海の精霊とどこか似ている。まさかな。念のため魔力鑑定眼を発動させてみよう。
「あれ? 体が透けている?」
思わず声に出てしまった。男の子の体全体が海の精霊と同じ青い光に覆われている。
思い出した。
海面から立ち上がった水柱が人の形になったことがあった。あの時の海の精霊の顔だ! 男の子をもっと透明にすれば、あのときの海の精霊にそっくりだ。
海の精霊と契約した時に何かと繋がった気はしていた。その繋がりを目の前にいる男の子から感じている。どうして直ぐに気がつかなかったのだろうか。目が合うと男の子はにっこりと微笑みながら手を振ってくれる。
「こんなに美味しいクラーケンの料理が食べられるんだからさ! 僕と契約してくれてありがとう!」
「僕と契約? 海の精霊様であっていますか?」
「そうだよ! なかなか魔力が多くて親和性の高い人とかいないから簡単には契約なんてできないんだよね! たまには海の外もいいね! 体があるって最高の気分だよ!」
男の子の姿をしている海の精霊は嬉しそうに見つめてくる。
お礼を言わなければ。
「シーサーペントの時もクラーケンの時も、助けてもらってありがとうございました!」
「いいんだよ! そんなことぐらい! いつでも言ってよ! 海の外でこの姿を保つのは君が大変だから、そう長くはいられないけどさ。また美味しいものを食べさせてもらえると嬉しいな! この体が作れるほど魔力量が多くて僕と親和性の高い人なんて滅多にいないからね! 君は本当に最高だよ!」
心の底からの笑顔というのは、まさにこの男の子の笑顔だな。男の子がニカッと笑うと太陽の光も取り込んでいるのかキラキラと輝いている。なんだこの破壊力のある笑顔は!
俺と男の子のやり取りに気がついたのだろう。周りから「グハッ!」「ウ!」とか聞こえてくる。見回すと人魚達もエグザイルエルフ達も男の子の笑顔にメロメロのメロだ。
透き通る笑顔とはこのことだな。だって俺の魔力鑑定眼では透けているように見えているからね。どうやって実体化しているのだろうか? 気になるな。
少し前から魔力が漏れ出ていると感じていたが、海の精霊に搾取されているとは思わなかった。魔力のコントロールがおかしくなったのかと、実は焦ったが疲れる理由が判明してよかった。二度も助けてもらったしこれくらいは甘んじて受け入れよう。魔力の搾取に慣れ過ぎて感覚が麻痺している気もしないでもないな。
魔力の搾取といえばレックス、ベビ、チビ、ベスは元気にしているだろうか? これだけ距離が離れていても、たまに魔力を搾取されているように感じることがあるんだ。いったい何をやっているのか心配になる。でも逆にベスから魔力みたいなものが流れ込んでくることもあるんだよね。……サーシャは魔法が上達しただろうか? 会いたくなってきたな。
海の精霊とお話し中なのに、色々と考え事をしちゃったな。申し訳ない。
「海の精霊様との契約は簡単にできるものなんですね!」
「うーん……簡単にはできないよ! 今回は君の同意を取り付けることができれば契約できるように事前に準備していたからね! 僕が君と契約したいと願ったのさ! 僕にはポセイドンという名前もあるから名付けも不要だったからね!」
「願った!? ポセイドン様がですか? 僕なんかと?」
「そうそう! なんかではないよ! 君のような稀有な存在はいないと思うよ!」
「父の名前もポセイドン様にあやかって、ポセイダルになったと聞いています!」
アクア姫が王様の名前の由来を教えてくれた。ポセイドンはギリシャ神話の海の神だったと思う。自動翻訳先生の仕事だから俺の記憶に符合するポセイドンを当てはめた可能性もあるな。名前が合っているのかは怪しいかもしれないぞ。
「美味しいものも食べたし挨拶もしたからそろそろ海に帰るよ。この姿は疲れるんだよね……君が! こんなに美味しいモノがまた食べれると思うとワクワクして来たよ! 長い付き合いになりそうだからさ! また、会おうね!」
男の子の姿をしたポセイドン様は、楽しそうに手を振りながら海へとダイブした。すると漏れ出ていた魔力の流出も収まる。海面を確認してみたが既に姿はどこにも見えなかった。ポセイドン様が言っていた通り、大量の魔力が搾取されていたみたいだ。
「魔力の流出が収まって良かった!」
クラーケンを倒すのも、海流の制御ができるようにならなければあんなに簡単にはいかなかった。そう考えると海の精霊と契約できたことは良かった。等価交換の法則ではないが、大きな事象を起こすとそれに見合う対価を求められる。
……もっとよく考えて行動しなければ。魔力が欠乏すると死ぬこともある。何度もお母様にも言われたのに。あのまま続けられていたら……この世界に来てまで過労死なんて、二度とごめんだ。考えるだけでも恐ろしい。
海の精霊様の実体化は、よほど衝撃的な光景だったのだろう。未だに人魚達もエグザイルエルフ達もポカンと立ちつくしたままだ。いや、全員と目が合うという事は、みんな俺を見ているのか。
「あれ? 体が透けている?」
思わず声に出てしまった。男の子の体全体が海の精霊と同じ青い光に覆われている。
思い出した。
海面から立ち上がった水柱が人の形になったことがあった。あの時の海の精霊の顔だ! 男の子をもっと透明にすれば、あのときの海の精霊にそっくりだ。
海の精霊と契約した時に何かと繋がった気はしていた。その繋がりを目の前にいる男の子から感じている。どうして直ぐに気がつかなかったのだろうか。目が合うと男の子はにっこりと微笑みながら手を振ってくれる。
「こんなに美味しいクラーケンの料理が食べられるんだからさ! 僕と契約してくれてありがとう!」
「僕と契約? 海の精霊様であっていますか?」
「そうだよ! なかなか魔力が多くて親和性の高い人とかいないから簡単には契約なんてできないんだよね! たまには海の外もいいね! 体があるって最高の気分だよ!」
男の子の姿をしている海の精霊は嬉しそうに見つめてくる。
お礼を言わなければ。
「シーサーペントの時もクラーケンの時も、助けてもらってありがとうございました!」
「いいんだよ! そんなことぐらい! いつでも言ってよ! 海の外でこの姿を保つのは君が大変だから、そう長くはいられないけどさ。また美味しいものを食べさせてもらえると嬉しいな! この体が作れるほど魔力量が多くて僕と親和性の高い人なんて滅多にいないからね! 君は本当に最高だよ!」
心の底からの笑顔というのは、まさにこの男の子の笑顔だな。男の子がニカッと笑うと太陽の光も取り込んでいるのかキラキラと輝いている。なんだこの破壊力のある笑顔は!
俺と男の子のやり取りに気がついたのだろう。周りから「グハッ!」「ウ!」とか聞こえてくる。見回すと人魚達もエグザイルエルフ達も男の子の笑顔にメロメロのメロだ。
透き通る笑顔とはこのことだな。だって俺の魔力鑑定眼では透けているように見えているからね。どうやって実体化しているのだろうか? 気になるな。
少し前から魔力が漏れ出ていると感じていたが、海の精霊に搾取されているとは思わなかった。魔力のコントロールがおかしくなったのかと、実は焦ったが疲れる理由が判明してよかった。二度も助けてもらったしこれくらいは甘んじて受け入れよう。魔力の搾取に慣れ過ぎて感覚が麻痺している気もしないでもないな。
魔力の搾取といえばレックス、ベビ、チビ、ベスは元気にしているだろうか? これだけ距離が離れていても、たまに魔力を搾取されているように感じることがあるんだ。いったい何をやっているのか心配になる。でも逆にベスから魔力みたいなものが流れ込んでくることもあるんだよね。……サーシャは魔法が上達しただろうか? 会いたくなってきたな。
海の精霊とお話し中なのに、色々と考え事をしちゃったな。申し訳ない。
「海の精霊様との契約は簡単にできるものなんですね!」
「うーん……簡単にはできないよ! 今回は君の同意を取り付けることができれば契約できるように事前に準備していたからね! 僕が君と契約したいと願ったのさ! 僕にはポセイドンという名前もあるから名付けも不要だったからね!」
「願った!? ポセイドン様がですか? 僕なんかと?」
「そうそう! なんかではないよ! 君のような稀有な存在はいないと思うよ!」
「父の名前もポセイドン様にあやかって、ポセイダルになったと聞いています!」
アクア姫が王様の名前の由来を教えてくれた。ポセイドンはギリシャ神話の海の神だったと思う。自動翻訳先生の仕事だから俺の記憶に符合するポセイドンを当てはめた可能性もあるな。名前が合っているのかは怪しいかもしれないぞ。
「美味しいものも食べたし挨拶もしたからそろそろ海に帰るよ。この姿は疲れるんだよね……君が! こんなに美味しいモノがまた食べれると思うとワクワクして来たよ! 長い付き合いになりそうだからさ! また、会おうね!」
男の子の姿をしたポセイドン様は、楽しそうに手を振りながら海へとダイブした。すると漏れ出ていた魔力の流出も収まる。海面を確認してみたが既に姿はどこにも見えなかった。ポセイドン様が言っていた通り、大量の魔力が搾取されていたみたいだ。
「魔力の流出が収まって良かった!」
クラーケンを倒すのも、海流の制御ができるようにならなければあんなに簡単にはいかなかった。そう考えると海の精霊と契約できたことは良かった。等価交換の法則ではないが、大きな事象を起こすとそれに見合う対価を求められる。
……もっとよく考えて行動しなければ。魔力が欠乏すると死ぬこともある。何度もお母様にも言われたのに。あのまま続けられていたら……この世界に来てまで過労死なんて、二度とごめんだ。考えるだけでも恐ろしい。
海の精霊様の実体化は、よほど衝撃的な光景だったのだろう。未だに人魚達もエグザイルエルフ達もポカンと立ちつくしたままだ。いや、全員と目が合うという事は、みんな俺を見ているのか。
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