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249.3宝物回収3(人魚の切実な願い)✔
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潜水樽を港に向けて移動し始めたところ、上部のドームをネプトゥヌス王子がコンコンと叩き、両手をクロスさせたり、首を傾げたりしている。
トラブルが発生したと勘違いしているみたいだ。帰ると言っても水中のためか上手く伝わらない。仕方ないので下のハッチを指さす。するとネプトゥヌス王子が二度頷き、下へと向かった。
土魔法を使いハッチを開けると、ネプトゥヌス王子が顔をのぞかせる。
「アルフレッド! 不具合が発生したのか?」
「不具合はないけど金貨を百枚は回収できたので、後の宝物の権利は放棄して帰ろうと思って!」
俺は土魔法で作った箱を見せた。すると、ネプトゥヌス王子が少し驚いたように感じた。
「欲がないな! 変わった方法だが回収する力も見せてくれたからな!……時間さえあれば全部お前のモノになることは確実なのに。こういう場合はどうなんだろうか? ……後はこちらでやっておく! 港までは海亀に送らせるから、水が入らないように扉は閉めておいてくれ!」
ハッチを土魔法で固めると、待機していたのか海亀が近寄って来た。人魚達が潜水樽をロープで海亀に結び付ける。段々と潜水樽のスピードが上がり始めた。
港に到着すると、潜水樽を帆船に横付けしてロープで固定する。上部のハッチを開き金貨の入った箱をエグザイルエルフに受け取ってもらった。
「ありがとう。これだけ金貨がもらえれば十分だから。後の宝物は放棄するよ!」
「聞くだけ聞いておこう! ところでその樽は譲ってもらえないだろうか?」
ネプトゥヌス王子は潜水樽に興味があるようだ。元々、人魚達に渡すつもりだったので丁度いい。
「いいよ! 持っていけないし!」
「買った! おい!」
ネプトゥヌス王子が他の人魚に声をかける。すると人魚達が近くに寄って来て金貨を帆船の甲板に投げ込み始めた。これはさっきの沈没船にあった金貨だな。手伝えないから潜水樽を買ったことにしたのだろう。律儀な人魚だな。しかし、何枚あるんだろうか? まだ投げ込んでいる。……やっと終わったみたいだな。数百枚はありそうだ。
「すまない。時間的にこれだけしか回収できていない!」
「十分です。ありがとうございます!」
ネプトゥヌス王子も他の人魚達も満足したのか嬉しそうに笑っている。
こんな風にされてしまうと、カニでもクラーケンでも料理してあげたくなってしまうな。
「家は管理しておくから、早めに来て欲しい! カニ料理を待っているからな! ところで本当にアクアと一緒に暮らす気はないか?」
「すみません。婚約者がいるんですよ」
「そうか、残念だ!……」
何? 何か言いかけて止めた? しかし、ネプトゥヌス王子まで、こんなにアクア姫を薦めてくるんだろうか?
「なんですか? 言いかけて止められると気になるんですが」
一瞬、どうするか悩んだように見えたが、目を逸らさずにいる。
「シーサーペントとクラーケンにより、数が減ってしまってな。血が濃くなり過ぎて、他から血を入れる必要があるんだ! 相手として人魚が一番いいのだが、近くの人魚は全滅したのだろう会うことができない。そこで海の精霊と仲が良いアルフレッドを考えたんだ」
「差し迫った理由があったんですね! この後、魔大陸に行くので他の人魚に出会えたら、報告に寄りますよ」
「そうか! そうしてもらえるとありがたい!」
ネプトゥヌス王子が右手を差し出してきた。右手を差し出すとがっしりと握手してくる。
「頼んだぞ!」「人魚の存続のために必要なの。優しくてカッコイイ人魚を探してきてね!」
いつの間にやって来たのか、ポセイダル王とアクア姫まで握手を求めて右手を差し出してきた。
アクア姫が俺の手を離そうとしない。すると、ネプトゥヌス王子が握手中の手を両手で包むようにする。なんだこれ、不思議な状況になったぞ。
「お兄様! 邪魔しないで!」
アクア姫がキッと鋭い視線をネプトゥヌス王子に向けている。
「いいものだね握手というものは!」
ネプトゥヌス王子はアクア姫の視線は気にならないらしい。海の精霊と俺の握手を見てハマったのかもしれないな。嬉しそうなのでスルーするが、これは握手とはちょっと違うように思う。
新たな血を取り入れるために、人間が人魚に変身する魔道具も研究していたと教えてくれた。変身の魔道具が簡単に作れるはずないもんね。
ポセイダル王、アクア姫、ネプトゥヌス王子が手を振ると海の中に消えて行った。残っていた人魚達も手を振りながら海の中に段々と消えて行く。最後の人魚は尾びれを海面から出して振っていたからね。シンクロナイズドスイミングかラスベガスか何かのショーのようにも見えた。物語に出てくる人魚のイメージに合っている気がして、なかなかファンタジーな光景だったな。
「騒がしい人魚達でしたが、アルフレッドのお陰でいい繋がりができました。ありがとう! 人魚が絶滅の危機にあるなんて驚きましたね」
「この島の王族と直接会った者はいないと聞いてたけれど、本当の姿が人魚だなんて……会っていても誰も気づかないわよ!」
ミルトとミトが先ほどの人魚達の姿を思い返しているようだ。
「ところでミルト、食事の時に丁寧に挨拶していたけど、いつの間に人魚達を招待していたの?」
「え! アルフレッドが招待したのかと思い挨拶したのですが違っていたのですか?……さあ、明日こそは出港しましょう! 今からしばらくはお酒禁止です!」
ミルトの目が泳ぎ無理やり話題を変えた。人魚達がまさかのノンアポ訪問だとは思っていなかったのだろうな。
「「「なんだとー--」」」
エグザイルエルフ達が禁酒命令に一斉にブーブー言いだした。しかし、複数回の二日酔いが原因で出港が遅れていることは自覚していたようだ。ちゃんと出港の準備に取り掛かっている。
人魚達が帆船に投げてくれた金貨はエグザイルエルフ達が集めてくれた。どこの国の金貨か不明だが何枚あるか数えてみようかな。
今度こそ、明日には出港できそうだな。魔大陸までの残りの航海で人魚に出会えればいいけれど……。
トラブルが発生したと勘違いしているみたいだ。帰ると言っても水中のためか上手く伝わらない。仕方ないので下のハッチを指さす。するとネプトゥヌス王子が二度頷き、下へと向かった。
土魔法を使いハッチを開けると、ネプトゥヌス王子が顔をのぞかせる。
「アルフレッド! 不具合が発生したのか?」
「不具合はないけど金貨を百枚は回収できたので、後の宝物の権利は放棄して帰ろうと思って!」
俺は土魔法で作った箱を見せた。すると、ネプトゥヌス王子が少し驚いたように感じた。
「欲がないな! 変わった方法だが回収する力も見せてくれたからな!……時間さえあれば全部お前のモノになることは確実なのに。こういう場合はどうなんだろうか? ……後はこちらでやっておく! 港までは海亀に送らせるから、水が入らないように扉は閉めておいてくれ!」
ハッチを土魔法で固めると、待機していたのか海亀が近寄って来た。人魚達が潜水樽をロープで海亀に結び付ける。段々と潜水樽のスピードが上がり始めた。
港に到着すると、潜水樽を帆船に横付けしてロープで固定する。上部のハッチを開き金貨の入った箱をエグザイルエルフに受け取ってもらった。
「ありがとう。これだけ金貨がもらえれば十分だから。後の宝物は放棄するよ!」
「聞くだけ聞いておこう! ところでその樽は譲ってもらえないだろうか?」
ネプトゥヌス王子は潜水樽に興味があるようだ。元々、人魚達に渡すつもりだったので丁度いい。
「いいよ! 持っていけないし!」
「買った! おい!」
ネプトゥヌス王子が他の人魚に声をかける。すると人魚達が近くに寄って来て金貨を帆船の甲板に投げ込み始めた。これはさっきの沈没船にあった金貨だな。手伝えないから潜水樽を買ったことにしたのだろう。律儀な人魚だな。しかし、何枚あるんだろうか? まだ投げ込んでいる。……やっと終わったみたいだな。数百枚はありそうだ。
「すまない。時間的にこれだけしか回収できていない!」
「十分です。ありがとうございます!」
ネプトゥヌス王子も他の人魚達も満足したのか嬉しそうに笑っている。
こんな風にされてしまうと、カニでもクラーケンでも料理してあげたくなってしまうな。
「家は管理しておくから、早めに来て欲しい! カニ料理を待っているからな! ところで本当にアクアと一緒に暮らす気はないか?」
「すみません。婚約者がいるんですよ」
「そうか、残念だ!……」
何? 何か言いかけて止めた? しかし、ネプトゥヌス王子まで、こんなにアクア姫を薦めてくるんだろうか?
「なんですか? 言いかけて止められると気になるんですが」
一瞬、どうするか悩んだように見えたが、目を逸らさずにいる。
「シーサーペントとクラーケンにより、数が減ってしまってな。血が濃くなり過ぎて、他から血を入れる必要があるんだ! 相手として人魚が一番いいのだが、近くの人魚は全滅したのだろう会うことができない。そこで海の精霊と仲が良いアルフレッドを考えたんだ」
「差し迫った理由があったんですね! この後、魔大陸に行くので他の人魚に出会えたら、報告に寄りますよ」
「そうか! そうしてもらえるとありがたい!」
ネプトゥヌス王子が右手を差し出してきた。右手を差し出すとがっしりと握手してくる。
「頼んだぞ!」「人魚の存続のために必要なの。優しくてカッコイイ人魚を探してきてね!」
いつの間にやって来たのか、ポセイダル王とアクア姫まで握手を求めて右手を差し出してきた。
アクア姫が俺の手を離そうとしない。すると、ネプトゥヌス王子が握手中の手を両手で包むようにする。なんだこれ、不思議な状況になったぞ。
「お兄様! 邪魔しないで!」
アクア姫がキッと鋭い視線をネプトゥヌス王子に向けている。
「いいものだね握手というものは!」
ネプトゥヌス王子はアクア姫の視線は気にならないらしい。海の精霊と俺の握手を見てハマったのかもしれないな。嬉しそうなのでスルーするが、これは握手とはちょっと違うように思う。
新たな血を取り入れるために、人間が人魚に変身する魔道具も研究していたと教えてくれた。変身の魔道具が簡単に作れるはずないもんね。
ポセイダル王、アクア姫、ネプトゥヌス王子が手を振ると海の中に消えて行った。残っていた人魚達も手を振りながら海の中に段々と消えて行く。最後の人魚は尾びれを海面から出して振っていたからね。シンクロナイズドスイミングかラスベガスか何かのショーのようにも見えた。物語に出てくる人魚のイメージに合っている気がして、なかなかファンタジーな光景だったな。
「騒がしい人魚達でしたが、アルフレッドのお陰でいい繋がりができました。ありがとう! 人魚が絶滅の危機にあるなんて驚きましたね」
「この島の王族と直接会った者はいないと聞いてたけれど、本当の姿が人魚だなんて……会っていても誰も気づかないわよ!」
ミルトとミトが先ほどの人魚達の姿を思い返しているようだ。
「ところでミルト、食事の時に丁寧に挨拶していたけど、いつの間に人魚達を招待していたの?」
「え! アルフレッドが招待したのかと思い挨拶したのですが違っていたのですか?……さあ、明日こそは出港しましょう! 今からしばらくはお酒禁止です!」
ミルトの目が泳ぎ無理やり話題を変えた。人魚達がまさかのノンアポ訪問だとは思っていなかったのだろうな。
「「「なんだとー--」」」
エグザイルエルフ達が禁酒命令に一斉にブーブー言いだした。しかし、複数回の二日酔いが原因で出港が遅れていることは自覚していたようだ。ちゃんと出港の準備に取り掛かっている。
人魚達が帆船に投げてくれた金貨はエグザイルエルフ達が集めてくれた。どこの国の金貨か不明だが何枚あるか数えてみようかな。
今度こそ、明日には出港できそうだな。魔大陸までの残りの航海で人魚に出会えればいいけれど……。
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