異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

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連載

271.2森の賢者2(話に夢中なケンタウロス)✔

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 ホルスさんは、ケンタウロスもヤークも四本足だからか、あったこともないヤークが死んだことをかなり悲しそうにしていた。

「色々とオレ様の知らないことを聞かせてくれ」と言い、そこからは、なぜ、ドワーフから意見を求められたのか? 龍とどうやって知り合ったのか? 人間の生活は? ホルスさんから質問が止まりそうにない。

 ベビがかまってもらえないため、上空のチビの背中に飛んで行ってしまった。チビも退屈そうについて来ている。

〈お肉を獲りに行って来るダォ!〉〈一緒に行って来るノ〉

〈あまり遠くに行かないでね〉〈はーいなノ〉〈ダォ!〉

 チビとベビが飛んで行ってしまった。

 ホルスさんは荷車を牽きながら話かけて来る。たまに上半身を捻っては背中に乗せている俺をチラチラと見てくる。その度に荷車の軌道が少し右側に寄り慌てて修正している。よそ見運転は危険なので止めてほしい。

 最初こそゆっくり走っていたが、段々とスピードが上がり、時速三十キロメートルは出ているのではないだろうか? ガタガタと後ろが酷い音を立てている。車軸や車輪が耐えられるか心配だが、それよりも、後ろに乗っているミーメ達が心配だ。護衛のヤーク車とかなり離れており、安全上の問題もあるだろう。

「エルフやドワーフは大丈夫ですかね?」

「ん! まずいな、話が楽しすぎて忘れていた。少しスピードを落とそう。いつもは荷物を運ぶだけだからな」

 スピードがゆっくりになった。魔蜂蜜酒の樽なら揺れても問題がないだろうけど、後ろはケロケロしていそうだな。俺は後ろの荷車に飛び移る。ミーメ達は真っ青な顔をしており、乗車している者は全滅に見える。
 
「みんな大丈夫? 直ぐに癒しの魔法をかけるよ!」

 ノールが力なく首を縦に動かした。俺は急いで癒しの魔法をかける。みんな症状が同じなら一度に癒しの魔法をかけれるのではないだろうか?

 マイバイブルのラノベのイメージはエリアヒールだ。全員の三半規管を落ち着くイメージをしていく。更に水と風の魔法により、小さな水玉を作り出すと露出している体を湿らせる。体温も気化熱を利用することで、一度以上は下げることができる。

 三十分もすると、みんなの顔色が改善し、体が起こせるようになってきた。荷車の車軸や車輪の確認もしてみたが、思いのほか丈夫なようで壊れそうではなかった。どのような材質で作られているのだろうか? 売ってほしいな。

「すまなかった。話に夢中になり後ろに乗せているのをすっかり忘れていた。これからはゆっくりと走るから心配するな」

 ホルスさんが申し訳なさそうにしている。

「お願いします。危うく死ぬところでした。話には聞いていたのですが、まさかここまで酷いとは思っていませんでした!」

 ノールが苦笑いを浮かべている。ケンタウロスを薦めたことを思い出しているのだろう。

〈アルフレッドさん、ミーメ姉さんに癒しの魔法をお願いできますか?〉

 ミーメの調子が悪いみたいだ。ノールが心配そうな顔で念話してくる。

〈いいよ!〉

 ミーメの頭の上に両手を広げて、三半規管が落ち着くイメージをしていく。耳石が三半規管に中に入り悪さをしているのかもしれない。何度も寝返りをさせてみる。再度癒しの魔法を行使すると、徐々に顔色が戻り始めた。

〈ありがとう。酷い目にあったわ! アルフレッドの癒しの魔法は凄いわね。やっぱり聖人なのよね!〉

〈違うよ。普通の人間だから〉

〈ふーん。まあいいわ! 借りひとつね! どこかで返すから憶えておきなさい!〉

〈姉さん。助けてもらったのに、憶えておきなさいはないですよ!〉

〈ノールは黙っていなさい! ワタシが忘れるといけないからアルフレッドに憶えておいてもらうだけよ!〉

 ミーメがいつもの元気を取り戻してきたみたいだが、やっぱりノールは苦労している。トールとオールも辛そうなので、癒しの魔法を行使する。

「ありがとう。助かったよ! ケンタウロスに依頼するのは注意するように帰ったら伝えるよ!」

 トールとオールが苦笑いしている。

〈乗って初めて死んじゃうと思ったわ! 母様が言っていた通りね。ワタシは二度とケンタウロスに依頼はしないから!〉

 ミーメが、ケンタウロスに念話が聞こえないことをいいことに、好き勝手言い始めた。ノールが俺に目で謝って来る。ここでホルスさんの機嫌を損ねれば大惨事間違いなしだろう。

 ホルスさんの様子が気になり、振り返ると目が合った。俺の動きに合わせてホルスさんの目が追って来る。何もやらかしていないと思うのだがなんだろうか? 

「癒しの魔法がすごいな! 聖女様だったのか?」

「聖女じゃないよ! それに男だし!」

「癒しの魔法が森のエルフよりも使えるなんて自慢していいぞ!……」

 ホルスさんはそう言うと、俺を見つめたまま動かなくなった。

「町までエルフを届けたら、オレ様の村に来てくれ! ちゃんと金は払うから癒しの魔法をかけてもらえないだろうか?」

「怪我人ですか? いいですけど」

「そうか、それは助かる」

 ホルスさんは直ぐに俺を持ち上げて、背中に乗せると嬉しそうに速度を上げた。

「スピード出し過ぎ! もっとゆっくり走って! エルフが乗ってるから!」

「すまない。嬉しくてつい!」

 街道をゆっくりと走っていると、ゴブリンに似た動物が襲ってきたが、ホルスさんとエルフ達が弓矢で危なげなく倒した。ホルスさんの弓はエルフのモノより一・五倍はあり、矢も長くて太い。威力もあり、射程も長いが、エルフの風の精霊魔法には及ばない。

「近づかれたら困るでしょ?」

「そうだな。普段はもっと速く走るから近づかれたりはしない。できるだけ離れた場所で倒すようにしている。近くに来たら足で蹴飛ばすか踏みつけることになるだろうな」

 笑いながら質問に答えてくれた。
それから町に着くまでの間、癒しの魔法について質問攻めにされた。

「悪いが、アルフレッドを借りるからな」

 ホルスさんは、町に着くなりおもむろに荷車を外すと俺を乗せたまま猛スピードで走り出した。後ろからトールとオールの声が聞こえたが、しかし、スピードは落ちることはなくホルスさんは走り続けている。

 荷車がなくなるとさらにスピードが上がる。口を開くと舌を噛んでしまいそうだ。俺は振り落とされないように上半身にしがみつく。流石に質問も飛んで来なくなった。
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