異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

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312. アルテミシア様に会いに行こう(殿下の脚はプニプニです!)✔

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 会いに行ったら、いきなり抱き着いて来られて腕の中で泣かれてしまった。

「アルフレッド様が怪我をされていないか、アルテミシアを忘れてしまわれたのではないかと心配で、夜も寝れなくなっておりました!」

 確かに不眠症にでもなられているのか顔に疲れが見える。なんか悪いことをした気がしてきたぞ。

「心配させてしまいましたね! ほらこの通りどこも怪我はしておりませんよ!」

 腰に抱き着いたまま見上げてくる。癒しの魔法を行使しておこう。俺の両手から温かな光が溢れ出すとアルテミシア様に吸い込まれていく。

「あーなんて気持ちがいいのですか? アルフレッド様にこうして会えてよかった。魔大陸は危険なところだと皆が言うものですから、どうしても心配に……」

 アルテミシア様が心配するようなことを誰が教えたんだよ! 目にまた涙が浮かんでいるではないか。

「陛下からキャスペル殿下の脚が治るまで城に滞在するように言われていますから、一週間ほど毎日会いに来ます。機嫌を直してください! そうだ! ふわふわパンケーキをお作りしましょう!」

 機嫌を直してもらうには、やっぱりスイーツでしょ! アルテミシア様はふわふわパンケーキがお好きでしたよね。

「今ではふわふわパンケーキも料理人が作ってくれるようになりました。帰ったばかりで気を使う必要はありません!」

「魔大陸で買い求めたプレゼントがあります!」  

 シルクスパイダーの生地を袋から取り出すと、好きなドレスを作られるように説明する。

 アルテミシア様はシルクスパイダーの生地を受け取ると指で摘まんだり撫でたりし始めた。

 シルクスパイダーの生地は軽くて丈夫、日光に翳すとキラキラと光を反射して輝く。メダリオン王国でも高級品として知られている。今回持ち帰ったものは最高級品なので輝きも肌触りも最高の品だ。

 機嫌が直ったかな? 少しだけ甘えたような声で、魔大陸での冒険話を聞かせて欲しいと言われた。

 さっき、陛下たちにした話をもう一度することにした。一度話しているのでスラスラと話せたよ。しかし、これがよくなかったんだ。

 危ないことばかりしたと言われ、またもや目に涙が浮かび始めた。涙には弱いんだよね。 俺は慌てて真珠のアクセサリーを渡すことにした。シルクスパイダー製の巾着袋を手渡す。

「可愛い袋ですね、何かしら?」

 アルテミシア様が、巾着袋の紐を緩めて土製の箱を取り出す。この箱が見た目以上に重い。ハイルーン印に気が付かれた。蓋を開けるとシルクスパイダーの布が見える。布を左右に広げると銀の細いネックレス、真珠のペンダントトップと二つのイヤリングが現れた。

 王族仕様にと、真珠が縦に三つ連なっている。見つめるアルテミシア様の目がキラキラと輝き始め、一気に機嫌が直ってしまった。真珠の力はすごいぞ!

 着けてほしそうにされるので、まずは留め具の説明を行ない、後ろに回るとネックレスを首に、両耳にイヤリングをお付けした。

 エリクシアの話をして、これからキャスペル殿下の脚を治すことを伝えた。

 また泣かれた。今度はうれし涙のようだ。よかった、もうプレゼントは残っていない。

 王妃様が部屋に来られた。アルテミシア様の目は真っ赤になっているが、王妃様の視線は、アルテミシア様の首元と両耳を行ったり来たりしてから俺にニッコリと微笑まれた。

「王妃様にもあります!」

「そうですよね! まあ、うれしい!」

 王妃様の笑顔が俺には怖いくらいにニッコリしているように見えた。なぜだか、乳液とシャンプーリンスにコンディショナーの話を始める王妃様。

 肌の張りがとか、シワをどうのと要望に変わっていく、コラーゲンだったっけな?

 あっ! それよりも絶対に効果のあるやつが今手元にあるな。でも、シワを伸ばすために使うのは違う気がする。

 キャスペル殿下の脚を浸ける前に、少しだけ小分けにしておこうかな。だって養母様(王妃)の圧が半端なく強いんだ。俺には耐えられそうにない。

 殿下の右足に麻酔をし、塞がった部分を薄く切除した。すぐに癒しの魔法で止血だけするとエリクシアの入った容器に浸けた。

 俺は計算を間違えていたようでひとつで足りるみたいだ。浸ける前に百CCほどの瓶を三本土魔法で造っておいた。

 王妃様には他言無用と次に入手は難しいことも何度も説明し、今後、無理を言わないと確約を貰った。毎日、気になる場所に少量を塗るように指示した。もちろん、事前に腕を使いアレルギーテストは済ませている。

 毎日三回もアルテミシア様に会いに行くことになった。キャスペル殿下は下半身に何も着けていない。恥ずかしがっていたが、毛布を巻いて過ごしていた。トイレがあるから仕方ないんだ。人間諦めることが必要な時もあるからね。

 城の料理だが、どれも美味しくなっている。調味料セットがいい仕事をしていた。更に新しい調味料の開発にも取り組んでいるそうだ。

 一週間が経過した。途中で二度ほど確認したが、今日あたりでキャスペル殿下の脚は元に戻るはずだ。

「キャスペル殿下、ゆっくりと脚を上げてください!」

 脚が少しずつエリクシアから出て来る。ちゃんと生えているようだ。肌が綺麗でツルツルしている。エリクシアで光って見えるだけだった。

 脛が見えてきた。足首、甲、指、踵、全部綺麗に揃っているな。キャスペル殿下がまじまじと見ている。

 俺はシルクスパイダーの布でエリクシアを丁寧に拭き取る。肌はスベスベのツヤツヤです。

「ゆっくり動かしてみてください!」

「わかった! しかしこれはすごいな! 無かった脚が生えている! 絵本の話は本当だったんだな!」

「そうですね! ほら、こんなにツルツルでスベスベですよ!」

「止めてくれ! ちゃんと感覚はあるから! まだ、少しどのように動かすか考える必要があるようだが、動くぞ!」

 キャスペル殿下の脚はプニプニとしており、生まれたての赤ちゃんのような肌をしていて気持ちがいい! もっと触っていたいが怒られそうなので止めておこう!

 後ろで見ていた陛下や王妃様、アルテミシア様も喜んでいる。

 陛下は上機嫌で、俺の肩をバシバシと叩いてくる。陛下痛いです。

 アルテミシア様の目にはまた涙が浮かんでいる。

 王妃様がなんともいえない絵顔で俺を見つめてくる。顔の皺が無くなって、一週間前より確実に若返っているな。俺のプレゼントした真珠のアクセサリーも付けている。

 やっと俺の仕事が終わった。ブルースライムを連れて帰ろう。ベビとチビは今日も街中に出かけているが、騎士団長に迷惑を掛けていなければいいんだが!
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