異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

文字の大きさ
325 / 415
連載

319.1グラン帝国潜入調査1(準備)✔

しおりを挟む
 サーシャとアルテミシア様は疲れてすぐに寝ると予想したんだけど、途中からお母様も参加していたみたいで、話が盛り上がったと言っていたんだ。

 三人は年齢も離れているんだけど、何をそんなに話すことがあったんだろうか? 俺を見る目に何かあるように感じて気になってしまう。いったいどんな話をしたんだろうか? 

 暗いうちにチビとベビに送ってもらわないと騒ぎになるから、早い朝食になってしまった。食卓に置かれたオイルランプの光がゆらゆらと揺れながら室内を照らしている。

 朝食はサンドイッチを作ってみたんだ。ゆで卵をカットしてマヨネーズを加える。キャベツにレタス、ハムにチーズもスライスして挿んだからかなりの厚みになったんだ。

 サーシャとアルテミシア様用には西洋辛子は入れていないが、俺達の卵とマヨネーズには入れて少しピリ辛にした。

 紅茶は牛乳を注いでロイヤルミルクティーを入れてみたんだ。サーシャもアルテミシア様も気に入ったようで良かった。二人とも砂糖も入れていたから、甘いのが好みなんだろうね。

 そういえば、薬草と一緒にコーヒー豆とカカオに似た植物を持って帰って来たんだが、焙煎してみないとね。運がよければ、コーヒーとチョコレートも再現できるかもしれない。ココアも飲めるかもね。

 魔法で焙煎するよりも直火の方がいいかな? 少しずつ、色々な方法を試した方がよさそうだね。上手くいくようなら次に魔大陸に行ったときに、苗を購入して帰ろうかな。

 朝食を食べたら、アルテミシア様をお城に送らないとね。きっと、家族が心配しているはずだからね。
 
「アルフレッド様、このサンドイッチと、ロイヤルミルクティーはよく合います。サンドイッチは色々な食材を挿んでマヨネーズを入れるだけでこんなに美味しくなるものなのですね! 城の料理人にも作り方を教えてください。父と母、兄にも食べさせてあげたいので、サンドイッチも持ち帰れるようにしてもらえないでしょうか?」

 アルテミシア様は申し訳なさそうにしている。きっと勝手に泊まったから、両親へ謝罪の気持ちもあるんじゃないだろうか。

「三人分ですね、直ぐに作ります!」

 アルテミシア様がぱっと笑顔になった。やはり笑っている方がいいな。サーシャは今もアルテミシア様の横の席を確保して離れようとしない。いつもなら俺の横なんだけどな、張り合ったりはしていないが負けた気がするのはなぜだろうか。

 アルテミシア様を送るついでに、エリクシアを小分けにした容器、五十本を持参するつもりでいる。

 第一騎士団、第二騎士団、第三騎士団、近衛騎士団、魔法師団に渡すことにした。消費期限もあるし、上級ポーションよりも効果が高いから喜んでくれるはずだ。味が生臭くて酷いんだけど、そこは『良薬口に苦し』ということで諦めてもらおう。

 昨日見たグラン帝国の状況について、陛下に報告するか悩んだんだけど、もう少し調べてからにしようと思っているんだ。不要な誤解や心配を生み出すといけないからね。

 エンゲルベルト皇帝も、ボルトマン将軍も悪い人とは思えないんだよね、きっと何か考えがあるんだろう。怪しいようなら報告するし、次はない事は伝えているんだから、排除するつもりで対処させてもらうよ。そうならないのが一番だけどね。

 アルテミシア様を城に送ろうとしたら、サーシャが一緒に行くと駄々をこねて困らせたんだ。今まではそんなことは一度もなかったんだけどね。前回、直ぐ帰ると言って二週間も帰らなかったから、信用を無くしてしまったのかもしれないな。

 チビとベビは夜目が利くので、暗い中での飛行に問題はないんだ。ちなみに、俺も夜目は利く方なんだよ。

 朝早くて日も出ていない、スピードを出して飛行すると結界の魔道具を発動させても、ドレスやスカートでは寒そうだ。もう一枚毛布を持ってくるべきだったよ。サーシャをアルテミシア様が抱いてくれて助かったんだ。

 無事に城に到着した。まだ暗くて、陛下や団長は眠っているみたいだから、会わずに帰るよ。アルテミシア様にポーションと使用方法について書いた紙を渡してお願いしておいた。

 サンドイッチとロイヤルミルクティーのレシピも渡したよ。具材が違うだけで、城にも同じような料理があったから、実演なんて要らないよね。
 
 アルテミシア様に毛布を一枚貸してもらい、サーシャと一緒に包まったんだけど、一枚あるだけで寒さが違ったからね。

 屋敷に着くころに朝日が昇って来て綺麗だったよ。うつらうつらしていたサーシャを起こして、ベビのサングラスを使わせたんだ。

「太陽があんなに大きいの! 色も違うのサーシャは始めて見たの!」

「綺麗だね!」

 日の出を見せたらはしゃぐように嬉しそうにしていたからね。日の出と日の入りって、いつもよりも太陽が大きくなって、色も違っていてなんか幻想的なんだよね。


 前回のグラン帝国の侵攻の時は、マシューさんが事前におかしいと教えてくれたんだけど、今回は何も言って来ていないんだ。

 グラン帝国にマシュー商会が頻繁に出入りしているから、聞いてみないとね。流石に朝早いと迷惑になるからもう少しして行こうかな。

 まだ、五人分くらいは作れる食材があったから、サンドイッチとロイヤルミルクティーを持参しよう! 

 時間があるので、インディカ米の種籾を確認した。浮いている籾は少なかったから、明日には蒔いてみようかな。野鳥に食べられないように対策をしないといけないな。シルクスパイダーの糸を張ればいいか!

 コーヒーみたいな豆だけど、焙煎したら本当にコーヒー豆と同じ香りがした。

 早速、豆を挽きシルクスパイダーの布でコーヒーを入れた。お湯は魔力水を火う魔法で加熱した。辺りには挽きたてのコーヒーのいい香りが漂っている。

 香りを楽しみ、口に含む。下の上で転がしてみる、初めて焙煎したにしては上出来だな。苦みとほんの少し酸味がある。他の豆も焙煎しないとね。

 カカオみたいな豆も、焙煎してみたらカカオ豆だった。皮を取り除き、砕いてすり潰す。カカオバターが出てドロドロとしてきた。こちらもいい匂いが漂っている。

 ちょっとだけ舐めてみる。……『苦!』砂糖入れないと二が過ぎる。これならチョコレートもココアも作れそうだ。もっと細かくすり潰さないとザラザラとした食感になりとてもチョコレートのまろやかさが味わえないな。

 コーヒーとチョコレートがあるとデザートの種類が増やせるな。

 気が付いたらお昼が近かったよ。つい、夢中になり時間が経っていた。朝食のつもりで作ったけど昼食になっちゃったな。

 マシュー商会に向かい、マシューさんに会いたいと告げると、直ぐに呼んでくれた。

 サンドイッチとロイヤルミルクティー入りのポットを渡す。もちろんポットは魔法で温めておいたよ。

 丁度これから昼食だという事で、喜んでもらえた。五人前しかないけどみんなで食べてね。

 マシューさんに新しい家族ができて嬉しいよ。カリナさんは優しそうな人で安心した。マシューさんも優しいからお似合いの夫婦になるだろうな。

 マシューさんは仕事が生き甲斐みたいなところがあるから、過労死にだけは気を付けるように言っておかないとね。そうだ、エリクシアの小分けも十本プレゼントしておこうかな。

 サンドイッチとロイヤルミルクティーもハイルーンのお店で提供してはどうかと言い出したんだ。

 その辺は全てマシューさんに任せると言っておいた。直ぐに店員さんを呼んでサンドイッチのひとつを分解し始めたからね。イラストでも描くんだろうな。

 グラン帝国の状況について、根掘り葉掘り訊いてみたんだけど、結論から言うと、グラン帝国の侵攻の気配はないらしい。

 物流は確かに増えているけど、武器や飼葉、塩に麦の極端な増加はないそうだ。作物も不足していないし、飢えているようには見えないから大丈夫だろうというのが、マシューさんの見立てだ。

 だけど、開拓範囲が国境に近づいているのは間違いないんだよね。まだ国境を越えてはいないから、法的に問題はないんだろうけど……やっぱり自分の目で確認しに行く必要があるな。

『偽りの姿』の魔道具があるから身バレする心配は無いしね。

 俺だけでも戦力的には大丈夫だけど、一人では行かせてもらえないだろうから、ベビとチビを連れて三人で行こう。

 なんか楽しくなってきたぞ! やっぱり身分は『ちりめん問屋のご隠居』がいいかな?

 商人は外せないよね! 自由に歩いて怪しまれないのは……なんて名乗ろうかな? マシューさんに相談してみよう! 公爵が偽証はまずいよね! いきなり入国に問題が発生したぞ! 正しく申告したらお忍びで調査できないからな。

 そう考えると『ちりめん問屋のご隠居』も偽証で犯罪じゃん! 俺のグラン帝国との関係では、絶対に偽証入国はまずい気がしてきたぞ!

 自由に空から来るのは認められているからな……関所は通らずに、暗いうちに空から入国するしかないだろうな!
しおりを挟む
感想 895

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。