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325. メダリオン三世の仕事(愚痴)✔
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アルフレッドが魔大陸に向かい、十ヶ月が過ぎた。アルテミシアは心配するあまり、よく眠れないようで元気がない。
他にも色々と支障がでており、早く無事に帰って来てほしいと、女神様に祈っていたところだった。
アルフレッドは龍二匹と共にメダリオン城に飛んで来ると、帰国みやげだと神薬エリクサーを渡してきた。いや、エリクシアと言っておったかな? 呼び名などはどうでもよいな。
キャスパルの失われた右脚が生えてきたではないか。ワシはキャスペルを不憫に思ってはいたが、神薬エリクサーなど人間が生み出した妄想だと決めつけておった。
絵本のように一瞬で元通りになるわけではなかったが、一週間ほどで元に戻ったのだ。ワシが趣味で育てている野菜よりも早く生えたのには、驚くことしかできなんだ。
アルフレッドは賢者様のように空を飛んでみせ、伝説の龍を連れてくるなどと、驚かされてばかりではあるのだがな。
今回もワシはアルフレッドに助けられたのだ。魔法騎士を目指しているキャスペルの脚を取り戻してくれたのだからな。
魔蟻の脚で作られた義足というモノにも助けられたが、あれはフラムソードとの相性が最悪なのだ。魔蟻は火に弱いため、フラムソードの火力を上げることができんのだ。
キャスペルの魔法騎士としての成長はここまでで終わるだろうと内心思っておったのだ。
だが、見事にワシの予想を覆してくれた。さらに、コーラス・クラフト男爵の脚までも元通りにしてみせた。あいつの喜びようもすごかったからな、馬を貸して欲しいと騎乗して帰って行きおった。馬は快気祝いだと男爵にくれてやったからな。
数本のエリクシアを小分けにしたモノも受け取ったのだが、これが驚くほど効果の高いポーションだった。
アルテミシアと王妃には、真珠のイヤリングとペンダントトップ、銀の細かなチェーンのネックレスをプレゼントしていた。ワシにもプレゼントはないのか?
チョコレートを五個貰ってたな、きっとあれがワシへのプレゼントだったのであろう。
ここまでは、いいのだ……問題はここからだ。
ワシが悪いのだ。まだあると思い込んで皆に食べさせたため、ひと粒しか食べれなんだ。ワシはなんと愚かなことをしたのだろうか。
食べさせたはいいが、王妃から毎日のようにチョコレートを催促されてしまい、困っておる。
まあ、これはワシが撒いた失態であるためしかたがない。
アルフレッドのやつ、王妃の顔に何かやりおったのだ。乳液とシャンプーリンスにコンディショナーの時にも、貴族の間で騒動になったようだが、今回はあの時の比ではない。
王妃は毎月お茶会を開催しておるのだが、早速、やってくれた。真珠のイヤリングにペンダントトップ、細かなチェーンのネックレスを見せびらかすように身に着け、開催したのだ。
王妃は皺が消え、確実に若返って見える。これが騒ぎにならんはずがない。王妃め、分かってやりおったのだ。
当然のことではあるが、この噂は瞬く間に国中の貴族の間に広がった。自領に向けて緊急鳩便を飛ばした者もいたのではないだろうか、異常な速さで広がっていったようだからな。
トドメになるのが、『ごめんなさい、言わない約束をしているため、答えることができないのです!』と、チラッとワシの顔を見ながら言いおったのだ。
ワシは何も言っておらん。……こともないな。確かに言ったような気もする。
その結果が、この書簡の山だ。ワシは普段あまり仕事などしておらん。重要なモノだけが届き、目を通し署名するくらいなのだ。
だが、この書簡を見てくれ、全てが同じないようなのだ。『アルフレッドの公妾を進めたいため認めて欲しい』
以前にも、同じようなことがあり、アルフレッドは公妾を望んでいないと、突っぱねたのだ。
だが、それならば、兄と妹との婚約を認めて欲しいときおった。そう、公爵家などの婚約や婚姻は、国内のパワーバランスを保つためにワシが認めることになっておるのだ。
かつてこれほど多くの願いが届いたことなどない。本人たちも知らん上に、アルフレッドを怒らせでもしたらと思うと……ワシに調整などできるわけなかろう!
アルフレッドとアルテミシアが婚約し、王家だけ独占する。陰で聞こえてくるのだぞ。
再度、公妾を貰う気はないかと訊いたら、かなり怒っておったからな。
ポート公爵家を優先するしかないであろうな。あそこは長男を亡くし、そこからは女性ばかり生まれている。第二騎士団長のクリス・フォン・ポートの頑張りは自他ともに認めるところであるからな。アルフレッドの兄カイルより年上になるのがちと気になるかな、アルフレッドが嫌がるだろうか?
あそこは女性が六人いるから、その中で決めてもらえばよいだろう。よし、これをポート公爵とアルフレッドの父ジェイミーに送るか。
翌日、マルベリー公爵からもカイルと婚約をと届いたが、ポート公爵に認める書簡を出している。仕方ない、その旨、緊急鳩便を出しておくか。
アルフレッドが、ポート公爵から急ぎの書簡を届けにきた。予想はしていたが、クロードをスノーレットと婚約させることを認めるようにと書いてあった。
スノーレットは、アルテミシアの競争相手であったな。ポート公爵よ、それを望むのだな。アルテミシアのこともある、認めねばならまいな。
流石のワシでも、妹のサーシャとの婚約願いは……アルフレッドの溺愛ぶりを知っとるからな。まだ七歳だぞ、恐ろしくて認めることなどできはしない。というか、こいつらはアルフレッドを敵に回したいのだろうか。
あ! マシュー商会の定期便でアルフレッドに公妾を貰う気はないかと送っていたな。会って話をして怒っていたが、そろそろ手元に届くのではないだろうか。怒らねばよいが。
胃が痛くなってきた。血でも吐くようなら、とんでもなく不味いらしいが、小分けしたエリクシアを飲むかの。
他にも色々と支障がでており、早く無事に帰って来てほしいと、女神様に祈っていたところだった。
アルフレッドは龍二匹と共にメダリオン城に飛んで来ると、帰国みやげだと神薬エリクサーを渡してきた。いや、エリクシアと言っておったかな? 呼び名などはどうでもよいな。
キャスパルの失われた右脚が生えてきたではないか。ワシはキャスペルを不憫に思ってはいたが、神薬エリクサーなど人間が生み出した妄想だと決めつけておった。
絵本のように一瞬で元通りになるわけではなかったが、一週間ほどで元に戻ったのだ。ワシが趣味で育てている野菜よりも早く生えたのには、驚くことしかできなんだ。
アルフレッドは賢者様のように空を飛んでみせ、伝説の龍を連れてくるなどと、驚かされてばかりではあるのだがな。
今回もワシはアルフレッドに助けられたのだ。魔法騎士を目指しているキャスペルの脚を取り戻してくれたのだからな。
魔蟻の脚で作られた義足というモノにも助けられたが、あれはフラムソードとの相性が最悪なのだ。魔蟻は火に弱いため、フラムソードの火力を上げることができんのだ。
キャスペルの魔法騎士としての成長はここまでで終わるだろうと内心思っておったのだ。
だが、見事にワシの予想を覆してくれた。さらに、コーラス・クラフト男爵の脚までも元通りにしてみせた。あいつの喜びようもすごかったからな、馬を貸して欲しいと騎乗して帰って行きおった。馬は快気祝いだと男爵にくれてやったからな。
数本のエリクシアを小分けにしたモノも受け取ったのだが、これが驚くほど効果の高いポーションだった。
アルテミシアと王妃には、真珠のイヤリングとペンダントトップ、銀の細かなチェーンのネックレスをプレゼントしていた。ワシにもプレゼントはないのか?
チョコレートを五個貰ってたな、きっとあれがワシへのプレゼントだったのであろう。
ここまでは、いいのだ……問題はここからだ。
ワシが悪いのだ。まだあると思い込んで皆に食べさせたため、ひと粒しか食べれなんだ。ワシはなんと愚かなことをしたのだろうか。
食べさせたはいいが、王妃から毎日のようにチョコレートを催促されてしまい、困っておる。
まあ、これはワシが撒いた失態であるためしかたがない。
アルフレッドのやつ、王妃の顔に何かやりおったのだ。乳液とシャンプーリンスにコンディショナーの時にも、貴族の間で騒動になったようだが、今回はあの時の比ではない。
王妃は毎月お茶会を開催しておるのだが、早速、やってくれた。真珠のイヤリングにペンダントトップ、細かなチェーンのネックレスを見せびらかすように身に着け、開催したのだ。
王妃は皺が消え、確実に若返って見える。これが騒ぎにならんはずがない。王妃め、分かってやりおったのだ。
当然のことではあるが、この噂は瞬く間に国中の貴族の間に広がった。自領に向けて緊急鳩便を飛ばした者もいたのではないだろうか、異常な速さで広がっていったようだからな。
トドメになるのが、『ごめんなさい、言わない約束をしているため、答えることができないのです!』と、チラッとワシの顔を見ながら言いおったのだ。
ワシは何も言っておらん。……こともないな。確かに言ったような気もする。
その結果が、この書簡の山だ。ワシは普段あまり仕事などしておらん。重要なモノだけが届き、目を通し署名するくらいなのだ。
だが、この書簡を見てくれ、全てが同じないようなのだ。『アルフレッドの公妾を進めたいため認めて欲しい』
以前にも、同じようなことがあり、アルフレッドは公妾を望んでいないと、突っぱねたのだ。
だが、それならば、兄と妹との婚約を認めて欲しいときおった。そう、公爵家などの婚約や婚姻は、国内のパワーバランスを保つためにワシが認めることになっておるのだ。
かつてこれほど多くの願いが届いたことなどない。本人たちも知らん上に、アルフレッドを怒らせでもしたらと思うと……ワシに調整などできるわけなかろう!
アルフレッドとアルテミシアが婚約し、王家だけ独占する。陰で聞こえてくるのだぞ。
再度、公妾を貰う気はないかと訊いたら、かなり怒っておったからな。
ポート公爵家を優先するしかないであろうな。あそこは長男を亡くし、そこからは女性ばかり生まれている。第二騎士団長のクリス・フォン・ポートの頑張りは自他ともに認めるところであるからな。アルフレッドの兄カイルより年上になるのがちと気になるかな、アルフレッドが嫌がるだろうか?
あそこは女性が六人いるから、その中で決めてもらえばよいだろう。よし、これをポート公爵とアルフレッドの父ジェイミーに送るか。
翌日、マルベリー公爵からもカイルと婚約をと届いたが、ポート公爵に認める書簡を出している。仕方ない、その旨、緊急鳩便を出しておくか。
アルフレッドが、ポート公爵から急ぎの書簡を届けにきた。予想はしていたが、クロードをスノーレットと婚約させることを認めるようにと書いてあった。
スノーレットは、アルテミシアの競争相手であったな。ポート公爵よ、それを望むのだな。アルテミシアのこともある、認めねばならまいな。
流石のワシでも、妹のサーシャとの婚約願いは……アルフレッドの溺愛ぶりを知っとるからな。まだ七歳だぞ、恐ろしくて認めることなどできはしない。というか、こいつらはアルフレッドを敵に回したいのだろうか。
あ! マシュー商会の定期便でアルフレッドに公妾を貰う気はないかと送っていたな。会って話をして怒っていたが、そろそろ手元に届くのではないだろうか。怒らねばよいが。
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