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344.ひとりで住むには大き過ぎる白亜の神殿(女神様不貞寝する)✔
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女神様が地上を見下ろしており、少し元気がない、「はぁ~」と大きなな溜息をついた。
「アル様は帰っちゃいましたが、また料理を作ってくれると約束してくれたのでよかったですね!」
ベルはそんな女神様のことを気遣っているようだ。
「ベルこそ一緒に行かなくてよかったの? 十年ぶりですよ、ベスともう少し一緒にいてもよかったのですよ!」
女神様は無理に笑顔を作ろうとしているように見える。
「そんな……女神様は千年以上ぶりでしょう。残していくなんて心配で私にはできないです! それにルーナが裏側に行っちゃったから帰れないでしょ! ひとりで思い出のある場所にいるなんて……」
「ベルは優しいわね! 実を言うと残ってくれて嬉しかったのよ」
女神様はベルの両手を掴んで目をウルウルさせている。
「だって、アル様に会ってしまわれたので、ひとりボッチは耐えられないでしょ! 記憶は戻っておられないようですが、賢者アールス・ハインド様の力は感じることができましたから」
「まるで私の心の中が見えているようです、どちらが神なのかわからないですね!」
女神様もベルも苦笑いを浮かべ微妙な空気になってしまった。……どちらからともなく先ほど食べた料理の話題に変わっていた。
ルナには賢者アールス・ハインドの建物があるだけで、女神関連のモノは何もない。女神は地上に影響を与えるようなことは許されていないためだが、食事を振舞われるだけならば、どこにも影響を与えることはない。
女神様は賢者アールス・ハインドが存命中に何度か訪れたことがあり、邪神を倒す方法について話し合った懐かしい思い出の場所だった。
女神は建物に入ると、机の上に積まれた木簡を手に取りじっと見つめている。ベルはそんな女神様を見守り続ける。
「ベル、ルーナが見えてきましたから私は帰ります。あなたはベスの元にお行きなさい! あの方の力になってあげて!」
「私が直接助けてもいいのですか?」
ベルは少し驚いている。神の使いが邪神討伐に手を貸すことは禁じられているはずだからだ。
「そ、それは……」
女神様は難しい表情をしており、言葉が続かなくなってしまった。ベルはそれ以上追及することはせず、神獣の姿に戻ると結界を発動させる。何度も振り返り、手を振り続けている女神様の姿を見ながら地上へと向かった。
ベルの姿が見えなくなると女神様も光に包まれ、ルーナへと旅立つ。ルナは誰もいなくなり時が止まったかのように静かな時間を取り戻している。
ルーナにたどり着いたが、もちろん誰も出迎える者などおらず、ひとりで住むには大き過ぎる白亜の神殿が女神ルーナを出迎えた。
女神ルーナは先程別れたばかりのアルフレッドの事が気になって仕方がない。
「家族とはどんなものなのでしょうか? 一緒に美味しい食事をしたり、他愛のない会話を楽しむ……楽しかったですね! ベスにはベルがいますが、私には誰もいない……」
強がってベスの元に行くように言ってはみましたが、ひとりとはこんなに寂しいモノなのですね。何千年も感じたことの無い不思議な感情に女神ルーナは戸惑っていた。
「なんでしょう、こんな気持ちになったことはなかったのに……」
気づかないうちに口から言葉が漏れ出していた。
地上ではベスとベルが仲良く歩いており、ベスの背中にはサーシャが跨っている。アルフレッドはその後ろをつき添うように歩いており、女神ルーナはしばらくその姿を追い続けた。
レックス家族のこともいつも以上に気になり、意識を向ける。すると魔狼の子供達のじゃれ合う光景が飛び込んできた。
「かわいいわね、はぁ!」
女神様は今日一番の大きな溜息をつくと、地上を観察することを止めた。
「まずは邪神をどうにかしなければいけませんね!」
女神は独り言を漏らすとふかふかのベッドに飛び込んだ。ベルもいないため、このまま不貞寝することに決めたようだ。
「アル様は帰っちゃいましたが、また料理を作ってくれると約束してくれたのでよかったですね!」
ベルはそんな女神様のことを気遣っているようだ。
「ベルこそ一緒に行かなくてよかったの? 十年ぶりですよ、ベスともう少し一緒にいてもよかったのですよ!」
女神様は無理に笑顔を作ろうとしているように見える。
「そんな……女神様は千年以上ぶりでしょう。残していくなんて心配で私にはできないです! それにルーナが裏側に行っちゃったから帰れないでしょ! ひとりで思い出のある場所にいるなんて……」
「ベルは優しいわね! 実を言うと残ってくれて嬉しかったのよ」
女神様はベルの両手を掴んで目をウルウルさせている。
「だって、アル様に会ってしまわれたので、ひとりボッチは耐えられないでしょ! 記憶は戻っておられないようですが、賢者アールス・ハインド様の力は感じることができましたから」
「まるで私の心の中が見えているようです、どちらが神なのかわからないですね!」
女神様もベルも苦笑いを浮かべ微妙な空気になってしまった。……どちらからともなく先ほど食べた料理の話題に変わっていた。
ルナには賢者アールス・ハインドの建物があるだけで、女神関連のモノは何もない。女神は地上に影響を与えるようなことは許されていないためだが、食事を振舞われるだけならば、どこにも影響を与えることはない。
女神様は賢者アールス・ハインドが存命中に何度か訪れたことがあり、邪神を倒す方法について話し合った懐かしい思い出の場所だった。
女神は建物に入ると、机の上に積まれた木簡を手に取りじっと見つめている。ベルはそんな女神様を見守り続ける。
「ベル、ルーナが見えてきましたから私は帰ります。あなたはベスの元にお行きなさい! あの方の力になってあげて!」
「私が直接助けてもいいのですか?」
ベルは少し驚いている。神の使いが邪神討伐に手を貸すことは禁じられているはずだからだ。
「そ、それは……」
女神様は難しい表情をしており、言葉が続かなくなってしまった。ベルはそれ以上追及することはせず、神獣の姿に戻ると結界を発動させる。何度も振り返り、手を振り続けている女神様の姿を見ながら地上へと向かった。
ベルの姿が見えなくなると女神様も光に包まれ、ルーナへと旅立つ。ルナは誰もいなくなり時が止まったかのように静かな時間を取り戻している。
ルーナにたどり着いたが、もちろん誰も出迎える者などおらず、ひとりで住むには大き過ぎる白亜の神殿が女神ルーナを出迎えた。
女神ルーナは先程別れたばかりのアルフレッドの事が気になって仕方がない。
「家族とはどんなものなのでしょうか? 一緒に美味しい食事をしたり、他愛のない会話を楽しむ……楽しかったですね! ベスにはベルがいますが、私には誰もいない……」
強がってベスの元に行くように言ってはみましたが、ひとりとはこんなに寂しいモノなのですね。何千年も感じたことの無い不思議な感情に女神ルーナは戸惑っていた。
「なんでしょう、こんな気持ちになったことはなかったのに……」
気づかないうちに口から言葉が漏れ出していた。
地上ではベスとベルが仲良く歩いており、ベスの背中にはサーシャが跨っている。アルフレッドはその後ろをつき添うように歩いており、女神ルーナはしばらくその姿を追い続けた。
レックス家族のこともいつも以上に気になり、意識を向ける。すると魔狼の子供達のじゃれ合う光景が飛び込んできた。
「かわいいわね、はぁ!」
女神様は今日一番の大きな溜息をつくと、地上を観察することを止めた。
「まずは邪神をどうにかしなければいけませんね!」
女神は独り言を漏らすとふかふかのベッドに飛び込んだ。ベルもいないため、このまま不貞寝することに決めたようだ。
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