異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

文字の大きさ
368 / 415
連載

355.2 邪神教の城2(分けあって信者やっています)✔

しおりを挟む
 信者たちが慌ただしくしているお陰で怪しまれずにすんでいるが、落ち着いたら気づかれる可能性が高い。まだ、聖剣エクスカリバーを手に入れていないので邪神と鉢合わせするわけにはいかないんだ。

 今回は少し離れた場所から邪神教の動きを確認する計画だったが、まさか潜入することになるなんて。降って湧いたチャンスではあるが、気づかれる前に脱出しないと警戒させることになってしまう、それは避けたいんだ。

 地下を歩いてみると部屋がいくつもあり、漏れ聞こえた話し声からすると魔道具の実験も行われているようだ。

 部屋から出てくる際に武器や魔道具を抱えている、保管庫のようだな。部屋の前では厳重に警備しており、中に入る際に合言葉とナイフを確認している。

 何度か遭遇することができたため、聴力と視力を強化すると合言葉も聞き取れた。見せているナイフも分かった。ナイフだが、邪神教の拠点を潰した際に手に入れたナイフと同じ形をしている。柄をバラスと『髑髏の目から蛇が頭を出した彫刻』が描かれているナイフだ。

 保管庫に入ることができれば聖剣エクスカリバーや棺を見つけることができるかもしれない。これだけ知ることができただけでも十分な収穫なので撤退するべきだな。

 入って来た場所に戻ってみたが出入口は閉じられており、出入りする者はいなくなっていた。知られずに外に出ることは難しいだろう。

 フラトゥスも一緒なので戦えば倒せるがそれでは警戒させるだけになってしまう。抜け出すチャンスを窺いもう少し様子をみることにする。

 集合するようにと声が掛かりゾロゾロと信者が集まりだした。隠れる場所もないため諦めてフラトゥスと共に後について歩く。身バレするようなら戦うしかないが、それまでは信者として行動するしかないな。

 広い部屋に入ると司祭らしき男が一段高くなった場所に立ち見回すようにしている。部屋のドアが閉じられると邪神教について熱弁を振るい出した。

 部屋の中に怪しい匂いと煙が立ち込め、信者の様子がおかしくなってきた。幻覚剤か麻薬とかの類なのだろう、焦点の定まらない者や異様に興奮している者が出始めている。

 俺の意識にも障害が出始めた。周囲に気が付かれないように癒しの魔法を体の中に循環させる。こうやって洗脳しているのかもしれないな。フラトゥスを座らせて頭に手を触れると、気づかれないように力を抑えながら癒しの魔法を流し込む。

 途中から司祭はマスクのようなものを口に当てており、この煙を吸わないようにしているようだ。

 周りの信者は呆けたような表情をしている者が多くなっている。表情を真似ると、フラトゥスにもマネするように小声で言う。理解はしてくれたが表情がぎこちない、真似るのは簡単ではないようだ。

 俺達がパズズ国での邪神教の拠点潰しをおこなったために活動に支障が出ており、他国にいた信者を招集したそうだ。丁度その招集に巻き込まれたんだな。

 喋り続けていた司祭から信者に変わった。これから適性確認を行った後に配属されると説明しているが、周りの信者は様子がおかしくなっており理解できているか怪しいものだ。

 脱出はできそうにない、成り行きに任せるしかないな。適性検査は力を抜いて目立たないようにするが、力加減ができるかフラトゥスのことが心配だ。

 長距離走に剣術、魔法適正も確認している。魔道具の開発に興味があるなら挙手するようにと言っている。興味はあるが流石に手を上げる気にはならない。何名か手を上げた信者がいたが必要な人数に達していないようだ。

 顔を確認しながら信者の横を歩いて移動していたが、俺の横で信者が立ち止まった。

「これは隷属の魔道具か?」「そうみたいだな」

 ジロジロと見られていたが『偽りの姿の魔道具』を『隷属の魔道具』と勘違いしているようだ。説明を行なっていた信者が値踏みするような目つきをしており、信者二人で話し合っている。

「こいつにしよう」「これで魔道具を製造する人数は揃った」

 俺は魔道具の開発に配属されることになったみたいだ。フラトゥスは力が強かったし、あの身長だからだろう実働部隊に配属されたようだ。


 ここに来て一週間が経過してしまった。心配させているだろう、なんとかして状況を伝えられるといいのだけど。

 フラトゥスと顔を合わせたので、外に出れたら隙を見て、状況を伝えに戻るように依頼しておいた。

 保管庫とは違う部屋で魔石爆弾の製造を教えられている。隷属の魔道具をしていると勘違いしているからだろう、重要な作業を任されているのではないだろうか。

 オーガやオークの魔石が多い、ひたすら魔石に魔力を込める作業をさせられている。毎日どれくらい作業しているのか分からないが、食事と睡眠は取れているだけましなのかもしれない。

 これだけ多くの魔石を保有しているという事は、迷宮に潜って魔物を討伐しているんだろうな。

 寝る場所とトイレとこの部屋を行き来するだけの生活が始まって二週間が経った。保管庫の確認がしたい。

 出来上がった魔石爆弾を保管庫に移動させるように指示があった。やっと違う部屋を見ることができそうだ。
しおりを挟む
感想 895

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。