異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

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193.レックスの爆弾発言2(レックス王を辞する)✔ 2024.2.3修正 文字数 前2,536後2,650増114

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 ウーヌス、ドゥオ、トレース、クアトに脛に巻いていた猪の革を二枚とも奪われてしまった。何時間か経ったが未だに噛みついて引っ張り合いを続けている。君たちの玩具にあげるよ、返してもらってもそんなにボロボロでは使い道なんてないからね。

 レギナはというと子供たちを見守るように伏せており、まったく動こうとしない。疲れているようだな。出産して体力が落ちているのか、それとも子育てに疲れているのだろう。

 このままレックスの家族を見守るなら、今日も別荘に泊まることになりそうだ。

《アルフレッド、帰ったぞ、変わりはないか?》 

 レックスが風を纏いながら姿を現し、突風が吹き抜けた。

《ウーヌス、ドゥオ、トレース、クアトはメチャクチャ元気だね。きっと今夜は疲れてよく寝るよ》

《そうか、元気過ぎるから、相手するのが大変なんだ。おっ、狩の訓練か? 猪の革をやってくれたのだな、なかなかいいではないか》

 レックスはレギナの横にどっかりと座ると、ガウガウと鳴き声を上げている。翻訳先生は働く気はないようで俺の耳にはガウガウとしか聞こえてこない。静かになった、話は済んだみたいだな。

《魔狼迷宮の用事は済んだの?》

《ああ、魔狼王を辞めて来たぞ!》

《えっ!! 辞めた!?》

 レックスが魔狼王を辞めたと言ったように聞こえた。念話なので聞き間違いはないはずだ。

《辞めたって、どういうこと?》

《長い間、魔狼の王をしていたがオレ様がいる限り次のものがなれん。ここで暮らすと決めたのだから、辞めて統率力のある魔狼に譲ってやった!》

 レックスが誇らしげにしている。

《王なんて簡単に辞めたりできるものなの?》

《何百年もやったからいいだろう、お前が王をやれと言って帰って来た》

 押しつけられた魔狼は戸惑っていそうだな。レックスがフリーダム過ぎる。力が拮抗している魔狼同士で揉めていなければいいけど。

 本気でここに家族と住むつもりのようだから、小屋を早めに広げてやろう。王家用に新しい別荘を造るのも決まりだな。早めに作業に入ろう。

 予定している温泉の湧きでる場所はここから二キロ程しか離れていないが、道も存在していないんだ。馬車が通行できる最低限の道幅で造るつもりでいる。

 まだ、子供たちが大きくないので急がなくてもいいけど、レックスの小屋の増築を優先することにしよう。今ある小屋の奥の壁を壊して、左右の壁を土魔法で五メートル伸ばすことにした。相変わらず土魔法は使いやすくて建築には欠かせないよね。奥の壁をもう一度造って、最後に屋根も延伸すれば完成だ。これだけ広くなれば余裕で住めるでしょ。

 レックスからお礼を言われ、子供達には遊んでほしそうに猪の革を足元に置かれた。仕方ないな、引っ張りっこがやりたいんだろ。少しなら付き合ってやるよ。

 ウーヌス、ドゥオ、トレース、クアトは力が強いんだ。俺の体重が軽いこともあるが、身体強化魔法を発動させても猪の革の引っ張り合いには勝つことができなかったよ。

 なんとかしてひっくり返してやろうとしたんだけど、いいように引きずられてしまった。そのため、お腹を見せてくれないので、オスなのかメスなのか確認できないでいる。そのうち確認してやるからな。

 翌日から新しい温泉と別荘の作業を始めたが、ここには動物も魔物の姿もない。そういえば、あっちも俺が露天風呂を作ってから、浸かれるようになると増えたんだったな。

 露天風呂は景観に配慮して、できるだけ自然石を運んで来た。男女に分かれて入れるようにふたつ造ってはあるが、目隠しのための壁はまだ設置していない。そのうち、魔物や動物が入りに来るようになるかもしれないな。

 別荘の建築予定地や道の伐採に整地までも、全てレックスがやってくれた。伐採した木材がまた大量に出たので、今回は、ログハウスにしようと思っている。

 ウインドスラッシュの扱いも慣れたモノなので、チェーンソーよりも使い勝手がいいんだ。材木を組み上げるのはチビとベビがやってくれた。毎回思うんだけど、チビとベビは生きたクレーンだからね。建設業かクレーンのリースを始めたらひと財産が作れること間違いなしだ。

 レックスの子供たちがチョロチョロとしていて危ないな。怪我されても困るのでケージに入れて隔離しよう。かなり子供たちに嫌がられたがレックスとレギナも協力してくれた。

 ほぼ完成したな。後は安全のために塀と堀で囲うかどうかなんだ。国王陛下たちの滞在期間が終わったら、元に戻すことにしよう。土魔法のラウンドダウンで掘りを造りつつラウンドアップで塀を造った。慣れたものだな、俺もこれだけで暮らしていけそうだ。

 騎士団の野営地も整地しておく、ここも後で植林すればいいな。辺りに危険がないか確認して回ったところ、魔蜂と魔蟻の巣を見つけた。魔蜂の巣は遠くに運んでおいたが、魔蟻は討伐させてもらった。巣穴は貯蔵庫やもやしの栽培に使えないか考えている。

 放置すると魔物が住み着いてしまうから、無理なら土魔法で埋めてしまおう。

 レックスやチビとベビが手伝ってくれたおかげで、十日程で完成させることができた。

 レックスにそのうち大勢の人が来ることを説明した。すると魔物が近づかないように伝えてくれると言ってくれた。というか、早く行ってくれれば新しい別荘を造らなくてもよかった気がするんだけどな。

 受け入れ準備は済んだが、王都から馬車で来るとなると、ハイルーン村まで六日、そこから別荘まで三日も掛かる。宿がないから野営も必要になるんだ。別荘に一泊するとしても往復で二十日も必要になる。宰相の了解が出るとはとても思えないな。

 製塩所の視察を理由にしているから更に四日必要だ。もう、一ヶ月だな。業務が滞ること間違いなしだから絶対に無理だろう。国王陛下と宰相のせめぎ合いが目に浮かぶようだ。

 塩を王都に運ぶための経路を使えば短縮できる。王都からポートの港町が五日、帆船で一日、製塩所の見学なんて一時間で終わるからね。どうしても温泉に入りたいだろうから、ベスに馬車を牽いてもらえば別荘まで数時間で到着できる。これなら半分の日数に短縮できるんだ。我ながら完璧な計画ができた。早速王城に提案しに行って来よう。

 この案をお城に提案したところ、宰相が飛び上がりそうなほど喜んでくれた。国王陛下との折衝で疲弊していたのだと愚痴を聞かされたんだ。

 次期も一月は寒いので野営とか大変だと説明し、騎士団からも言ってもらった。その甲斐もあり、四月以降で日程調整が行われている。護衛の騎士や魔法師たちはテントだから野宿は寒すぎるからね。
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