異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

文字の大きさ
130 / 415
連載

205.2暗雲2(テロ警戒と邪神教対策)✔ 2024.2.16修正 文字数 前3,289後2,388減901

しおりを挟む
 まず最初に町の警備を強化し、入領、入国も増員して荷の検査もやらせるように指示を出した。数日なら問題ないが長期間行うとなれば、新たに兵士を雇う必要がある。十人組に相談して、責任を持って推薦できるような男性をお願いしたんだけど、任せてくださいと言って、やたらと張り切っていたんだ。

 カイル兄さんの日課である訓練が終わる時間だ。今日は採用するための面談を行う予定になっているため、手伝ってもらうようにお願いに行こう。

 屋敷の裏から外に出ると、訓練場から声が聞えてきた。連絡橋を渡りながら訓練場を見下ろすと、カイル兄さんと騎士や兵士以外にも訓練する人が見えた。魔力鑑定眼を発動させてみたが、魔石や魔力の多い人はいなかった。

 まだ一時間近くあるのに、やる気が漲っているみたいだ。十人組の顔もあり、それぞれが剣の相手をしている。ローグさんの息子の顔も見えるな。任せてくださいとか言っていたが、張り切るはずだ。みんな子供や兄弟を連れて来ていた。

「おはようございます。張り切っているみたいだね。予定時刻より早いけど、みんないるみたいだから始めてもいい?」

「「「お願いします」」」

 十人組と参加者が声を揃える。まるで練習でもしたかのような返事だ。

 訓練場の端でカイル兄さんが汗を拭いている姿が見えた。

「カイル兄さん、剣の相手になってあげてよ」

「俺が? そういうのは前持って言ってほしいな。アルがやれと言うならやるけどね」

 折角汗を拭いたのに。と、言いたげな表情をしていたが十人全員の相手をしてくれた。みんな、剣の訓練をやっていたんだな。一週間やそこらでできる動きではない。よく見ると手に剣だこのある者もいた。かなり長期間やらないとああはならない。

「カイル兄さん、相手をしてみた感想を聞かせてよ」

「剣の腕はまだまだだが、騎士学校に通ってもいないんだから、これだけできれば上出来だろ。これから訓練すればもっと上達するぞ」

 カイル兄さんは滴る汗を拭いながら答えてくれた。全員、合格みたいだな。みんなほっとした表情をしている。

 次は弓の腕前を見せてもらったが、剣よりも上手だった。やっぱりこっちが本職だからだな。

 みんな、身内を連れてきていたため、顔も知っているから安心できる。俺に雇ってもらえるように以前から剣の訓練をさせていたとしか思えないな。

 一番若いのはローグさんの息子だった。面談で聞いてみたら、ローグさんに毎日、剣と弓矢の訓練をさせられたと笑顔で答えてくれた。自分たちのように兵士になれるからと毎日言われていたと嬉しそうに話してくれたんだ。

 どうやら、この町で一番人気の就職先はうちの兵士になることのようだな。カイル兄さんに剣の訓練はお願いすればいいな、朝の訓練に参加させるだけでもかなり違うはずだ。今すぐには無理だけど騎士学校も考えようかな。

 全員に採用すると伝えると、大喜びしていた。早速、荷物のチェックの方法を教え始めたのには驚かされたよ。この分なら直ぐに戦力になってくれそうだよね。

 邪神教の自爆テロが起きたことも説明し、危険な仕事であることも再度伝えておいたが、誰も辞退するようなことはなかった。

 念のため、レックスにもテロについて念話はしておいたが、爆発の意味が伝わらなかったのか、真面目に取り合ってはくれなかったよ。

 ハイルーン町の警備については、お父様とカイル兄さんに任せることにした。荷物や人のチェックは十人組に任せることにする。マスクや大沼ガエルのゴム手袋を支給し、必ず着用するように説明しておいたんだ。何か疑問や問題があったら相談するように伝えておいたからね。

 王城に飛んで来たが、王都の街を巡回する兵の数が増えているようだな。うちと同じように警備を強化しているのだろう。

 国王陛下にお披露目パレードを延期するように進言すると、メダリオン王国と他国との検問も強化したから大丈夫だとかなり抵抗されたんだ。でも、粘り強く危険性を説明すると、しぶしぶではあったが納得してもらえた。アルテミシア様も悲しそうにしていたが、邪神教徒を捕まえてからなら、安心してできますからと説明したら、すんなりと理解してくれた。

 製塩所の視察と言う名の温泉旅行についても、延期するように言っておいた。お披露目パレードの延期よりも国王陛下の抵抗が激しくて疲れたな。「今は気を引き締めて邪神教の撲滅を目指さなければなりません」と言ってなんとか納得してもらったんだ。メダリオン王家は全員で来るつもりのようで、王妃様の落胆ぶりが一番すごかったな。

 キャスペル殿下の姿が見えないので、アルテミシア様に聞いてみたら、邪神教の捜査に参加していると言われた。キャスペル殿下らしいのではあるが、王太子が最前線に立つのはどうなんだろうか? 自爆される可能性もあるんだから警護する側はかなり神経を使っていそうだよね。

 王城の書庫に保管されている過去の記録も確認させてもらった。当時の状況や病状、対処方法や治療方法なども読んでおきたかったんだ。

 国王陛下の名前でグラン帝国やアスラダ国にも注意喚起してもらうようにお願いしておいた。

 メダリオン王国内では、ブルースライムの浄化施設の設置が急速に進められているんだ。おかげでかなり町街の糞尿の匂いも改善されていると喜んでもらえた。これは流行り病を押さえるために有効なんだ。

 グラン帝国の町街にも、ブルースライムの浄化施設の設置をマシューさんが行っている最中だ。皇帝の後押しがあるから普及のスピードも速いんだ。俺が貰った領地や新しく建設中の帝都には設置済だと聞いているからね。

 ピンクスライムポーションとブルースライムの消毒液を配ろうとしたら、情報が洩れている可能性があると第一騎士団長が言うので、信用のできる人にだけ配ってもらうようにお願いしておいた。

 俺が今できることはこれくらいかな。ベルン公爵の街に男爵のお見舞いに行こう。
しおりを挟む
感想 895

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

【完結】転生したら、なんか頼られるんですが

猫月 晴
ファンタジー
旧題:転生したら、なんか頼られるんですが。俺は楽しんでいただけですよ? ブラック企業に勤めていた会社員の江崎塁。彼は、帰宅途中交通事故に遭って死亡したことを、謎の白髪の少女に告げられた。 矢継ぎ早に自身が転生することを告げられ、訳の分からないまま気を失う。 次に目を覚ましたのは、知らないはずなのに、どこか見覚えのある高級そうな部屋だった。 なんと江崎塁は、エルティードという名の幼児に転生したのだった。 魔法の使える世界で楽しく、時にはトラブルに巻き込まりして過ごす中、いつしかエルティードは頼られるようになっていく。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。