異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

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212.3邪神教との戦闘3(ギリギリの戦い)✔ 2024.2.28修正 文字数 前3,304後2,471減833

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 邪神教の結界は壊しにくいが、物量で押し切ることは試していない。地下で上下左右が土の壁に囲まれているなんて、俺に試してみろと言っているとしか思えない。

 土魔法を発動させて結界を押し潰しにかかる。結界はよく耐えてはいるものの、壁と擦れる音なのか、ピキピキと変な音が聞え出した。土はいくらでもある、結界を圧縮して行けば長くはもたないはずだ。

 ついに耐えきれなくなった結界が壊れてしまった。無理に破壊したので魔道具にも影響があってもおかしくない。爆発に注意しながら先に進むと、扉の陰から矢が何本も飛んで来た。兵士が盾で防ぎ矢を打ち返している。

 矢に当たった兵士が出てしまった。毒が塗られていたのだろう、体の自由が聞かなくなったようで倒れてしまった。他の兵士が抱えて後ろに下がって行く。

 だから、俺が倒すと言ったんだけど聞いてくれないからな。心臓に近い腕をキツク縛ると、矢を引き抜く。血を吸い出してピンクスライムポーションを傷口に注いだ。今回は傷口を直ぐに塞がない方がいい、血と一緒に周りの毒を出した方がいいからだ。あとで止血するしかない。

 ウインドスラッシュを発動させて弓を無効化した。魔物が硬くて無理でも、弓を破壊することならできるからね。

 弓が壊れると一気に形勢が傾いた。兵士の射る矢がビュンビュンと放たれる。魔物の目や口までは硬くはないようで、矢が刺さり始めた。あれなら兵士達でも倒せるな。

 そう思った時だった。二匹の魔物が矢を剣で薙ぎ払いながら突っ込んで来た。矢は打ち払われて当らない、兵士たちに被害が出始めた。加勢に向かう。

 二匹の魔物は連携の取れた攻撃で俺の斬撃を防ぎ、反撃してくる。この魔物強いぞ、今までの魔物とは一味違う。みんなを守りながら戦える相手ではない。

「みんな、外に出て‼」

 二匹の魔物は俺の前後を取るように位置取りしている。後ろから切りかかって来たかと思えば、前から剣が迫って来る。首や顔のすぐ横を毒の塗られた剣が何度も行き交っている。俺は剣と棒手裏剣を使い、必死に受け流がし続ける。人間だった頃は暗殺者とかだろうな、嫌らしいほど連携が取れている。こいつらが聖人や聖女を襲っていたのかもしれない。

 ナイフまで投げてきた。狙いやタイミングが絶妙だ、手慣れている。だが、絶妙すぎるため、タイミングが読みやすい。このまま耐えてタイミングを探る。

 襲ってくるタイミングに合わせて、ウインドスラッシュを発動させた。この距離で避けるのかよ! 魔物は体を逸らして渾身のウインドスラッシュを回避した。まんまと俺の策略に嵌まったな。逸らしたからだが向かう先には土魔法で作った槍が待ち構えている。

 嘘だろ、これも避けるのかよ! だが、まだ次がある。槍は轟音を上げてバラバラになり、辺りかまわず破片をばらまいた。即席で造った爆裂弾だ。飛んで来る鋭利な破片を土魔法の壁で防ぐ、スリル満点だ。

 鼓膜がキーーーンと鳴り続けている。針のように細い破片は魔物を針山に変えていた。流石に想定できなかったみたいだな。

 ウインドスラッシュを連射すると、今度は綺麗に直撃した。突き刺さった鋭利な破片が体に押し壊れては、頑丈な体も耐えきれなかったようだな。ついに切り裂くことができた。それでも切りかかって来るなんて、ものすごい執念と生命力だな。

 力のない剣先が俺の体の横を通り過ぎて、魔物はそのまま地面に倒れ込んだ。後ろからも魔物が迫って来る。一匹だけなら対処できる自信がある。

 剣で受け流しながら、ウインドスラッシュで関節を狙う。関節は硬くなんてできないからな。どんどんと切り傷が増えてついに倒すことができた。魔力が急激に膨れ上がるのが見える。こいつ自爆する気だ。

 今から走っても地上には間に合いそうにない。密閉空間で爆発なんて洒落にならないぞ。

 さっき壊した厚い壁の向こうに飛び込み、体を土魔法で覆っていく。あともう少し、そう思ったところで轟音と共に突風が押し寄せてきた。

 ギリギリ間に合った。外はどうなっているだろうか? 十分ほど待ってから、体を覆っていた土の壁を取り除く。造った壁を取り除いても一向に光は入って来ない、埋まってしまったみたいだな。周りを土魔法で固めて、押し潰されないようにする。

 そのまま、上に向かってドンドンと掘り進める。階段を作りながら堀進めると、モウモウと立ち込める土埃の中に光が見えた。やっと、地上に出たみたいだ。

 三階建ての建物は完全に崩れて瓦礫と化しており、俺が出て来た上には空があった。土埃が酷いな、周りの建物にも大きな被害が出ていそうだぞ。

 水魔法を使い雨を降らせると、立ち込める土埃を無理やり抑え込んだ。瓦礫の中から立ち上がると、歓声が巻き起こり、ベルン公爵軍の兵士達が駆け寄ってきた。みんな怪我をしているが無事なようだな。

 この瓦礫の様子からすると、地下で生き残っている者はいないだろう。だが、聞いていた人数よりも少なかったから、どこかに脱出通路があるはずだ。って、あそこの小屋から煙が上がっている。

「あそこ!」

 兵士が俺の指さした先に殺到して行った。体中が痛いし埃だらけだ。ちょっと休みたい。水を作り出して頭と目を洗い、うがいをして瓦礫の上に寝転がった。どうにか生き残れたぞ。生き埋めになったときは正直ダメかと思ったからな。少しだけ休憩したら次の町へ向かわなきゃ!

 結局、脱出通リからかなりの数に逃げられてしまったらしい。残っていた奴らは、仲間を逃がすために時間を稼いでいたんだろうな。

 きっと、あの爆発も想定済みだったのだろう。魔物の魔力だけでこんなに大きな爆発が起こせるとは思えない。埃の収まった周りを見ると、想像を超えた被害が出ていた。まるでガスタンクが爆発したようなありさまだ。もしかして、本当にガス爆発だったかもしれないぞ、魔物の爆発がガスに引火したと考えるならこの規模の被害も納得できる。

 他の場所は大丈夫だろうか? 心配だな。しかし、耳鳴りが酷い、癒しの魔法でもかけておくかな、体の中で魔力を循環させる。少しずつだが痛みが引いて行く、耳鳴りが収まり次第、次に向かおう。
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