異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

小鳥遊 ソラ(著者名:小鳥遊渉)

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217. 戦勝パーティー(三ヶ国+神聖教会+アルフレッド)✔ 2024.3.7修正 文字数 前3,392後2,905減487

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 早いもので、異神国パズズの邪神教施設に攻め込んでから、ひと月が経過した。メダリオン王国の会議室にグラン帝国、魔法大国アスラダ、神聖教会の重鎮が顔を合わせている。長い歴史の中で初めてのことだ。

 目的は邪神教についての報告と、戦勝パーティーという名で親睦を深めるためだと聞いている。俺は国王陛下の命令による参加だ。

 主催者である、メダリオン三世の挨拶から始まった。

「皆、よく集まってくれた。まさかこのような日が訪れようとは思ってもみなんだ。邪神教の施設も、ほとんどは潰せたと聞いている。まだまだ、安心はできんが皆で協力してくれることを願っている……」

 挨拶が終わると、拍手と歓声が巻き起こり、国王陛下は満足そうに右手を上げた。するとそれが合図だったようで拍手と歓声は静まり、続いて参加者の紹介と挨拶に移った。

 グラン帝国からはボルトマン将軍が、魔法大国アスラダは第一王子、神聖教会は司祭様がそれぞれ挨拶をおこなっている。和やかなムードを保ったまま、報告が始まった。

 流行り病の状況報告では、グラン帝国の担当者が、たったの二週間で終息させたと、自慢げに報告していた。

 魔法大国アスラダの担当者の口から、「終息させた」という言葉は聞くことはできなかったが、新たに発症する者はなくなったため、遠からず終息するだろうと、終始明るい表情での報告だった。

 異神国パズズの流行り病の終息に向けて協力しているが、感染してから時間が経ち過ぎていたため、未だに多くの病人を抱えたままだ。隔離治療を始めてからは新たな発症報告はない。このまま治療を続けていけば終息はさせられるだろう。

 そういえば、大沼ガエルの手袋や長靴、マスクなどが大好評になり、生産が追い付かないとマシューさんが飛び回っていたな。過労で倒れなきゃいいけど心配なんだよ。

 賠償の話が始まったが、異神国パズズが各国に損害賠償を支払うことで決まったそうだ。

「自分たちも被害者だ」とか言って、突っぱねそうな要求なのに、よくすんなりと受け入れたな。

 突然、横っ腹をツンツンとされて、第一騎士団長の顔が俺の耳元に近づいて来た。

「あれはな、グラン帝国の皇帝が、受け入れなければ攻め滅ぼすと脅したのだ」

 聞いてもいないのに、小声で教えてくれた。念話が使えるのか? 一瞬、戸惑ってしまったが、俺の顔には『疑問に思っている』と書いてあったのだと笑われた。そんなにわかりやすかったのだろうか? 

 第一騎士団長はそれ以上は何も言わずに、離れていくと何事もなかったように座っている。

 邪神教の施設に残っていた資料の調査報告が始まった。何か分かったかな?

 いくつかの施設の地下から、古い木簡が発見されていたが、魔大陸に邪神教の施設があるのではないかと報告があった。実は壊れた馬車から発見された木簡にも同じようなことが書かれていたんだ。

 白い帆船のエルフが来た時に聞いてみよう。魔大陸にはエリクサーもあるらしいから、サーシャの病気やキャスペル殿下、コーラス・クラフト男爵の欠損した足も治してあげたい。そのまま、一緒に魔大陸に行くのもいい! 

 魔大陸に気持ちが向かっていたら、どんどんと話が進んでいた。

 邪神教の信者の中には騙されていた人や、洗脳されていた人までいたみたいだ。中には立て続けに不幸な出来事が起きて、女神のせいにして勧誘しているケースまであった。だが、これは邪神教が裏で不幸な出来事を起こした疑いがもたれている。カルト集団はどこの世界にもあるんだな。

 病原菌を燃やす為だったとはいえ、書類関係が燃えて、邪神教の研究内容や、拠点に繋がる資料が残っていなかったのは残念だったな。でも、これで病原菌テロの心配はしなくていいだろう。

 会議は淡々と進んで終わりを迎え、戦勝パーティーの会場に向かって移動する。

 ちゃんとした料理もあるが、その中にハンバーグやオークステーキが見えた。デザートには、ふわふわパンケーキやプリンも出される予定になっていると、キャスペル殿下が教えてくれた。

 俺の席はキャスペル殿下のすぐ隣だ。国王陛下の挨拶で始まると、後は自由に食べ始めている。食事の間は音を立てるのはマナー違反なのか静かだな。

 料理について問い合わせる人がいたみたいだが、クレームではなかったみたいだ。

 デザートと紅茶が運ばれて来ると、話し声がし始めた。やっと親睦を深める時間のようだな。

 国王陛下が突然立ち上がると、辺りを見回した。ざわざわとしていた話声は消えてシーンと静まり返る。何を話し始めるのかとみんな注目している。

「皆に知らせておく、今回の作戦で多大な功績を上げていることは皆も知っているところだが、アルフレッド・ハイルーン公爵は、我が娘、アルテミシアと婚約した。邪神教のテロがあり、発表が遅れてしまったが、近く国内にも発表し、パレードを行う予定だ。今後は他国に出向くことも増えるだろう。そのように伝えてほしい」

 国王陛下がニコニコしながら着席する。遅れて、拍手と祝いの声がかけられた。

 この場で発表するのかよ。ボルトマン将軍と神聖教会の司祭様が、わざわざ祝福の言葉を言いに席まで来てくれた。

 もしかして、俺が呼ばれた理由って、このため? さっきの国王陛下の話からすると、今後も伝書鳩役をやらされそうだな……。

 ボルトマン将軍が、俺がグラン帝国の公爵になっていると、変なところで張り合い始めている。神聖教会の司祭様は楽しそうに聞いていたが、アスラダ国の第一王子が話に加わり、話が変な方向に進み始めた。

 聴力を強化していると全部聞こえてくる。予想はしていたが、アスラダに帰国次第、公爵位を授けることを検討すると言い出した。俺で張り合う必要なんてないのに……話に割って入れる雰囲気ではない、聞えていないふりをしよう。聞きたくない内容が聞えてくるため、聴力強化を解除した。

 婚約パレードの準備もしないといけないな。婚約指輪とか渡さないといけないのだろうか?

 帰ったら、お母様に相談しないとだな。

「キャスペル殿下は、婚約の予定はないのですか?」

 隣に座るキャスペル殿下に、突然聞いてみたら、メチャクチャ慌てている。

「い、今のところ婚約の予定はないな。だが、早く決めろと急かされてはいるがな」

「そうなんですね。それで、候補者はおられますか?」

「……公爵の令嬢を数人、進められてはいるのだが……」

 もしかして、ポート公爵家の六姉妹だろうか? 聞いてみたいが、変な間があったので止めておくかな。

 キャスペル殿下が先に婚約してパレードをやってくれればいいのに。そうすれば、俺のパレードはやらなくてもいいかもしれない。

 キャスペル殿下が、サーシャのことを気にかけてくれており、早く治るようにと言ってくれた。距離が離れていなければ見舞いに来そうな勢いだ。帰りには見舞いの品もくれるそうだ。

 キャスペル殿下と話し込んでいたら、国王陛下が近づいて来た。婚約パレードの日程が決まった話かな?

 全然違った。延期になっていた温泉視察、違った製塩視察の催促だった。温かくなってからって言っていたからな。準備はしてあるから、いつ来られてもいいけど、このタイミングで来る気だなんて、どうしても温泉に入りたいんだな。
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