学院最弱底辺の僕にだけ従う最強生徒会長

塞翁が馬

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冷静になったら恐怖が増した件

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 誰にも見られずに――
 なんとか寮の自室まで戻ってきた。

 

 部屋のドアを閉めた瞬間、僕は自分の胸を押さえた。

 

 心臓がうるさい。

 

 白銀の魔女を連れ込んだ、という現実のせいだ。

 

 四畳半の部屋の真ん中に、
 あのセラフィーナ・ルクレールがちょこんと座っている。


 

 

 ……状況が異常すぎて笑えてくる。

 

 「はぁ……とりあえず……無事……?」

 

 問いかけると、セラフィーナはこくりと小さく頷いた。

 

 その動きが、いちいち上品で腹が立つ。

 

 いや、腹が立つとかじゃない。
 おかしいのは僕の方だ。

 

 なんで僕の部屋にいるんだよ、この人……。

 

 さっきまで泥だらけだった制服の裾を、
 自分でそっと払って整えている姿は、
 やっぱりどう見ても“完璧な生徒会長”だ。

 

 「……いやいや、待て待て待て。」

 

 僕は一人でブツブツ言いながら頭を抱えた。

 

 落ち着け。
 とりあえず状況を整理しよう。

 

 僕はさっき、裏庭で膝をついた生徒会長を見た。

 意味不明な封印の紙片と小箱。

 その直後、彼女が僕を“主さま”と呼んだ。

 

 そして今。

 

 “白銀の魔女”が、庶民中の庶民の寮部屋に正座している。

 

 ……やっぱり意味わからん!

 

 「……あの……」

 

 僕は恐る恐るセラフィーナを見た。

 

 彼女は膝に手を置いて、背筋をピンと伸ばしている。

 

 「何か、ご命令を。」

 

 「いや、命令とかじゃなくて!
  むしろ質問したいのこっちなんだけど!?」

 

 僕の声が裏返った。

 

 すると、セラフィーナは小首をかしげて
 まるで“何をおっしゃっているのですか”という顔をする。

 

 怖い。
 可愛いけど、怖い。

 

 「えーと……まず……さっきの……あれは……何?」

 

 「……服従の契約、です。」

 

 即答された。

 

 「……えっ……服従……って……。」

 

 「私の一族には、代々“服従の呪い”が受け継がれております。
  秘密を知った方にのみ、絶対服従する定めです。」

 

 「定めって。あんな大真面目に。」

 

 「はい。」

 

 「……え、じゃあ、僕が……命令したら何でも……?」

 

 「はい。」

 

 即答だ。怖い。

 

 「じゃあ……ジャンプして?」

 

 僕がふざけ半分で言うと、
 セラフィーナは何の迷いもなくすっと立ち上がり、
 軽くピョンと跳んだ。

 

 やめろ。
 完璧超人が部屋で無表情でジャンプするな。

 

 「……すみません、今のナシ! ナシで!」

 

 「……かしこまりました。」

 

 声は相変わらず氷みたいに冷たいのに、
 従順すぎて逆に怖い。

 

 「……とにかく! 何がどうなってんのか教えて!」

 

 僕が手を振り回すと、
 セラフィーナはすっと正座に戻り、
 静かに口を開いた。

 

 「……秘密を知った者に逆らえば、
  私の一族は滅びます。」

 

 「いや、物騒すぎるだろ……!」

 

 「そして、主さま――あなたは、
  私のすべての命を握るお方です。」

 

 その目がまっすぐ僕を射抜く。

 

 “主さま”。
 やめてくれ、鳥肌が立つ。

 

 「……いや、僕なんかに従ったら余計ヤバいって……。」

 

 心臓のドキドキは収まらない。

 

 彼女は完璧だ。
 でも、その完璧さが今はとんでもなく不安定に思えた。

 

 狭い寮の一室に、
 学園最強の“秘密”が座っている。

 

 ――誰にも見られてはいけない。

 

 でも、これから先は……?

 

 僕の頭は、もう追いつけなかった。

 

 端末のポケットの中で、
 《評価値更新予定》のランプだけが
 無機質にまた点滅していた。
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