死体は考えた

黒三鷹

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 目を覚ますと白い天井が見えた。見覚えが無いのでどうやら自宅ではないらしい。カーテンで仕切られている様で息が詰まる様に思えた。そこでようやくここが病院だということに気付く。それ以外にも、気付いた事があった。体を動かすことが出来なかったのである。先程から、起き上がろうと何度も試してみたが、指一本動かす事さえ体は拒んだ。
 ふと、足音が聞こえた。
 「おはよう、起きてるかい?」
 課長のようだ。
 「返事は…できないのか。そらそうだ、を昨日の飲んだからなあ」
 アレ とは…?そこで思い出した。昨日、取引先から帰ってきた時に渡された缶コーヒーの事だ。
 「あの缶コーヒー、全部飲んだら60年は意識は残ったままで植物人間になる薬が入っていたんだよ。人体実験の一環でね。にしても何故俺が選ばれたんだと思ったろう?」
 当たり前だ、と言いそうになるも、今は言葉を発する事すら出来ない体だった。
 「近くに居たからだ。深い関係を持つ人間が周りに居なく、出来るだけ若い人間であれば誰でも良かったんだが、偶然お前が手から届く範囲に居たから、お前にした。」
 だが何故、それを誰かに飲ませる必要があるのか、という考えが脳内を埋めた。
 「成功すれば五千万貰えると聞いて引き受けたが丁度いいヤツが居なくてな…助かったよ」
 クックッと課長が笑う。課長は金に困っている様子は無かった筈だ。だが、今の表情を見ると、目がギラついてる様に見えた。ただ単に大量の金を懐に入れる事が楽しくて仕方が無いだけなのだろう。同時に、何か隠しているような不敵な笑みにも見えた。
 「俺は今から用事が出来たのでもう行くが、今後は看護婦の後ろ姿でも眺めて暇を潰すといい」
 じゃあ、お元気で。と去って行くのを追いかけたい衝動に駆られたが、体は沈黙したままで、強制的に気持ちは落ち着かされた。
このまま私は後60年、こんな場所に人生を捧げないといけないのか。
貯金も少しずつ出来てきて、やっと安定してきたというのに何て事をしやがる。
あの野郎、起き上がったらタダでは済まさない。
 絶望と憤りが頂点に達し、口からは荒い息が漏れ出るだけだった。

 少し時間が過ぎ、ふと思い出した。
さっき、「飲んだら」と課長は言っていた。だが私は十分の一程のしか飲んでいなかった。つまり、80年もこうして病院のベッドに埋もら無いのではないか、と思った。
そうとなれば希望が見えてきた。仕事の疲れも取りたかったし、妄想か何かで暇でも潰しておけばすぐだろう。
 そうして私は、妄想に耽った。


 
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