拒絶少女は世界を拒絶する

私は拒絶する。

私は…

それから2年は本当に幸せだった。
お店の店主のご厚意で
奥の部屋を借り暮らした。

動けなかった小さな彼女も
ハイハイからヨチヨチに
いまではタタタッ！である。

そんな幸せの真っ只中…
店主さんが留守の時
やつは現れた。

「こんばんわ。トウヤ君」

お店の扉が開いた瞬間聞き覚えの無い声と
見たことの無い男が立っていた。

「迎えに来たよ」

そう男が言うと
彼は慌てて『逃げろ！』と叫んだ。

銃声が響く

彼の体を突き抜けた弾丸は
七菜に当たった


「七菜！？」

何が起こったか分からないって顔をした
七菜は…こっちを見ながら

「ママ…いたいよ…ママ」

と、言った

「早く逃げろ！」

分かってる…でも！

彼の腕をもう一人の男が掴んでいるのが見えた
抵抗している彼をいとも簡単に
扉の外に連れて出ていった。

しばらく銃を持った男は何かを考えたあと
こちらに銃口を向けた。


「トウヤ君をありがとう。」

私が七菜を庇うように抱き締めると
聞き覚えのある声が聞こえた


「セツナ！大丈夫！？」

「タマミさん…」

タマミさんは銃を持った男を殴り飛ばしたが

「…邪魔だな」

今度はタマミさんに銃口を向ける
冷たくなる七菜を抱き締めながら
連れていかれた秋兎を考えながら
射たれそうなタマミさんを見ていたら

私の内側から何かが広がるのがわかった…
覚えがある…この感覚は…あの女を
母を殺した時の感覚だ。


「…やっと手に入れた幸せを奪わないで！」

私がそう叫ぶと何かは広がり
お店にはタマミさんだけが残されていた。


消えた、七菜に動揺しながらも
ひどい吐き気とふらつきをおぼえながら
…そんな途切れていく意識の中で
私は理解した。


「私は世界を拒絶したんだ。」