【完結】触れたら最後

イツキカズラ

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43. あったかい

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 クリスマス3日前。街はすっかりクリスマス模様でいたる所がキラキラと輝いている。

「な~今年もクリスマスは寂しいもん同士イルミとマーケット行こうぜ」
「俺パス。みのりんとデートでーす!」
「俺もパス」
「ごめん一平、俺も当日は無理」
「はあ~⁉え?久!お前バイトか⁉まさか…抜け駆けか⁉そんな素振りなかったじゃねーか!つーか葉大!お前はなんだかんだ俺たちを優先してくれると思ってたのに!本命か⁉ついに本命かよ!くっそおおおお…!俺にクリボッチになれってえのか!彼女―!!俺の彼女どこですかー!」
「哀れだな阿川」

 井口がふっと笑う。阿川は悔しそうに顔をゆがめ、ガタッと大きな音を立てて立ち上がった。

「くそっ!わかった!当日は良い…!お前ら今日空いてるよな⁉今日行こうぜ!男だけでもいい!俺にクリスマスの思い出をくれ!あわよくばここで俺の彼女を…いや、未来の嫁を見つけ出してみせる!」

 そんな阿川の提案から逃れられず午後に4人でイルミネーションを見に行くことになった。正直、欲を言えば付き合って初めてのイルミネーションを恋人らしく二人で見たかった。



「暗くなるまで時間あるし俺取りに行きたいもんあるから一旦帰宅していい?すぐ戻る」

 葉大が立ち上がると井口がごそごそと何かを探し始めた。カバンの中をかき回した後財布を取り出す。

「おー、俺も今のうちにコンビニ行こうかな」
「なんか必要ならついでに俺が買ってこようか」
「菓子のおつかい頼んだわ」
「りょーかい、メッセージ入れといて」

 ふたりが視線を戻したのを見計らったように小さく手招きされて目を見合わせる。来いということらしい。

「俺も一旦帰る。なんか……荷物、重いし置いてくる」
「おー?」

 すぐ戻るって言ったのに俺も?取りに行くもんって俺が何か葉大の家に忘れ物をしたのか、などと思考する。けれど思い当たる節はない。

「取りに行くもんって何?俺の?」
「そう、久の」

 何かあるにしてもどうせすぐ行くのにそんなに緊急性の高いものなのだろうか。スマホも携帯も持っていたはず。日が高い位置にあるのに肌寒くてダウンの襟に首を埋めて歩く。前を行くカップルがピタリとくっついているのが視界に入って何とも言えない気持ちになる。別に外でベタベタしたいわけじゃない。でも、手を繋ぐことすら憚られる気持ちが自分の中でより形を露わになるから冬という季節が嫌いだ。なんの躊躇いもないように見えるふたりを少しだけ、うらやましく思った。

「ちょっとソファーとか座ってて」

 部屋に入っていく葉大を見送って言われたとおりソファーに腰掛ける。少し待っているとすぐに紙袋を下げた葉大が戻ってくる。

「本当はクリスマスに渡そうと思ってたんだけど、今日冷えるから。俺だけ先に渡す感じになっちゃったな、ごめん」

 そう言って差し出された紙袋を受け取る。中を開けるとマフラーと手袋が入っていた。

「俺にくれんの?」
「もちろん。久寒がりなのにいつも上着着てるだけだからこういうのがいいかなって」
「さんきゅ」
「うん。いっぱい使って」

 淹れてくれたホットコーヒーを飲み終えてまた玄関へと向かう。葉大がマフラーと手袋を着けてくれた。「やっぱ似合う」そう言って笑う葉大を好きだと思った。帰りは行きよりずっと暖かくて心までぽかぽかと春の陽を浴びているようだった。
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