【完結】触れたら最後

イツキカズラ

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63. ついムキになった

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 夕飯を終え、紗世も自室へ戻った後、父さんと母さんとまた机を挟んで向かい合っていた。

「それで?話ってなんだ」
「紹介したい人がいる。俺、恋人がいて、男なんだけど、ちゃんと付き合ってる。向こうの家族にも会った。だから俺も家族に紹介したい。…知ってほしい」

 相変わらず心臓は破裂しそうだったけれど、今度はハッキリと言えた。頭の中で何度も練習しただけある。

「…もう一回言ってくれるか?」
「付き合ってる彼氏がいる。連れてくるから…認めてほしい」

 小さな沈黙が流れる。それでも、俺は父さんの顔を目を見ていることができた。

「男同士で付き合って…結婚や子どもはどうするんだ」
「どうするって言ったって…できないもんはできないし、なくていいと思ってる」
「今はそう思ってるだけだろう。独り身で生きていくつもりか?」
「肩書はそうだとしても、一緒に生きていけるだろ」

 思わず強くなった語気に気付いて口を結ぶ。喧嘩になってはダメだ。
 沈黙が流れる。父さんは固く口を閉じて何かを話す気配はない。

「二人とも一旦冷静になって、また後日話しあわない?ね、ふたりとも落ち着きな」

 母さんがそう言うと、父さんは立ち上がって扉のほうへと向かった。

「…時間をくれ」
「…っ」

 続けて立ち上がった俺をなだめるように母さんの手が肩に置かれた。

「ちょっとお父さんも動揺してるだけ。本気なのはちゃんと伝わってるし、大丈夫よ」
「…わかってる」



 二日後の朝。
 相変わらず父さんとの間にはピリピリとした空気が流れていた。紗世の「眠い」「おなか空かない」というぼやきと食器のぶつかる音だけが部屋に響いている。朝食を終えるとガタッと音を立てて父さんが立ち上がった。

「…久。夜話せるか」
「…ん」
「そうか。じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃーい、気を付けて」
「いってら」

 それだけ言い残してさっさと会社へと向かう父さんの背中を視線で追った。

「兄ちゃん、なんかやらかしたの?」

 隣に座っていた紗世がこそこそと俺に目配せをしながら話しかけてきた。どうせ近いうちにバレるのだから今言ってもいつ言っても同じだ。小さく深呼吸をする。

「いや。…俺が付き合ってんのが男って言ったらこうなった」

 そういうと恋人を家に連れてくるつもりだと話した時とまるっきり同じ目が俺を見つめる。そりゃ驚く。彼女を連れてきて思い込みではあるが結婚までするのではないかと思っていた兄の相手が男だとわかれば驚く。驚くどころか嫌悪感まで抱くかもしれない。

「…黙ってて悪かった」
「…まじ?」
「まじ」
「イケメン?」
「え……まぁ。お前も好きな顔」
「好きな顔?!え、遠山くん似ってこと!?兄ちゃんやるじゃん…」

 予想外の質問と反応に困惑している間に勝手に紗世の好きな俳優似ということになってしまった。訂正する間もなく紗世が向かったキッチンから「えー金山くん?ママは違うと思う。どっちかっていうと…」とか「ママ顔知ってんの?!」とか聞こえてきてさっさとヨーグルトをかきこんで出かけることにした。
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