鬼を討つ〜徳川十六将・渡辺守綱記〜

八ケ代大輔

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第十一章「信康切腹」

第五十二話「暗殺」

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この日も七之助は拙者の草庵に立ち入っておりました。
「半蔵、久しぶりじゃな」
拙者に声をかける七之助の表情は重く険しいものでした。
「七之助、如何致した?」
拙者は眉をひそめ問いかける。すると、七之助は顔を伏せて答える。
「折り入ってお主に助力してほしい事がある」
「助力?」
拙者が首を傾げると、七之助は顔を上げまじまじとこちらを見据える。
「・・・水野、信元殿の暗殺じゃ」
七之助の言葉に拙者は驚き声を上げる。
「は!?お主、何を言うとる?」
七之助は冷静を保ったまま拙者の問いに答える。
「実は先日、殿の元に織田信長から知らせが参った。『水野信元、武田と組して謀反の疑いあり。速やかにこれを誅すべし』と」
「おいおい、水野信元殿と言ったら殿の伯父に当たる方。そのような方を誅すなど・・・なぜ、信長も己の手でやらんのだ?」
「わからん。殿の忠義を確認したいのであろう。そして、もし否と答えれば徳川も潰す好機と考えておるのではないか?」
七之助の言葉に拙者は溜め息をつく。
「それ故、殿から儂に暗殺の命が下ったのだ。武に関しては、お主の方が腕はたつ。お主の力、儂に貸してはくれんか?」
そう言って七之助は拙者に頭を下げる。その姿に拙者は瞼を落とす。
「・・・断わる理由はどこにもないな」
「すまない、半蔵」
「なあに、義兄にだけ暗殺の汚名は着させんよ」
そして、我らは水野信元殿の暗殺を心に決めるのでありました。
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