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第十四章「関ヶ原の戦い」
第八十二話「小早川」
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午の刻
家康公の本陣が前に移った事で徳川勢の勢いは増すも、それでも上方勢を撃ち破るほどのものではございませんでした。こうした中、笹尾山の石田三成の陣から狼煙が上がる。
「何かの合図か?」
拙者は、その狼煙を見ながら声を発する。
おそらくは、松尾山の小早川か南宮山の毛利に合図を送ったのであろう。もし、この状況で徳川勢の背後か側面を攻撃されてしまえば徳川の敗北が決まる。
拙者は慌てて家康公を見やる。
「殿」
家康公は目を瞑ったまま何かを考えておられる。
次の一手で戦局が変わる。家康公もその事は十分に理解しているのであろう。
家康公はゆっくりと口を開く。
「小早川の内応は黒田甲斐守に任せておる。甲斐守は何と言っておる?」
家康公の問いに近習の一人が答える。
「先ほど使い番をやったところ、黒田甲斐守は石田勢と交戦中のため忙しく、小早川の寝返りなど拙者の知った事か、と・・・」
近習の答えに家康公は大きな音をたて爪を噛む。
徳川勢の苦戦に続き、この回答。家康公の苛立ちも限界に達する。
そして次の瞬間、家康公の口から驚きの言葉が出る。
「小早川に鉄砲を射かけい」
!
驚く一同。拙者は慌てて家康公に問いかける。
「殿!そんな事をすれば、こちらに攻めてくるやもしれませんぞ!?」
「かまわん!鉄砲を射かけるのだ」
頑としてそう仰る家康公。
近習たちもどうしたらよいか悩んでいると家康公の怒号が飛ぶ。
「何をしておる!さっさと鉄砲を射かけるのだ!」
その声に驚いた近習たちは慌てて鉄砲隊に指示を出す。
「て、鉄砲隊、松尾山に向かって用意!」
急ぎ鉄砲隊は松尾山の小早川勢に向け火蓋を切る。
「撃てぇ!」
凄まじい豪音が辺りに響き渡る。
さて、この号砲が吉と出るか凶と出るか。
その結果はすぐさま表れました。
突如、大きな地鳴りが関ヶ原に響き渡りました。その原因は、そう松尾山の小早川。小早川勢は雪崩(なだれ)の如く松尾山を駆け下りていました。
どちらに向かう?こちらか、それとも敵方か?
小早川勢の動きを、その場にいる全員が固唾を呑んで見守る。
小早川勢の向かう先は・・・上方勢の大谷!
床几(しょうぎ)に座っていた家康公も思わず立ち上がる。
「でかした!」
勢いよく大谷勢に突っ込んで行く小早川勢。
「勝てる、勝てるぞ」
家康公も興奮を抑えきれない様子でした。
さらに喜びの報は続く。伝令の一人が陣の中に入り言上する。
「脇坂、朽木、小川、赤座の各隊もこちら側に寝返り大谷勢を攻撃!」
その知らせに家康公は口元がほころぶ。
「勝った・・・」
瞬く間に小早川勢の波が大谷勢を覆う。間もなくして再び伝令が現れる。
「大谷勢壊滅!」
そして、勝利を確信した家康公は指示を出す。
「全軍押し出せ!」
戦況は一変。徳川勢が勢いを増す。
大谷勢の壊滅により小西、宇喜多も崩れ、ほどなくして両者は敗走を始める。笹尾山の石田勢も何とか耐え忍んでおりますが時間の問題でしょう。
家康公の本陣が前に移った事で徳川勢の勢いは増すも、それでも上方勢を撃ち破るほどのものではございませんでした。こうした中、笹尾山の石田三成の陣から狼煙が上がる。
「何かの合図か?」
拙者は、その狼煙を見ながら声を発する。
おそらくは、松尾山の小早川か南宮山の毛利に合図を送ったのであろう。もし、この状況で徳川勢の背後か側面を攻撃されてしまえば徳川の敗北が決まる。
拙者は慌てて家康公を見やる。
「殿」
家康公は目を瞑ったまま何かを考えておられる。
次の一手で戦局が変わる。家康公もその事は十分に理解しているのであろう。
家康公はゆっくりと口を開く。
「小早川の内応は黒田甲斐守に任せておる。甲斐守は何と言っておる?」
家康公の問いに近習の一人が答える。
「先ほど使い番をやったところ、黒田甲斐守は石田勢と交戦中のため忙しく、小早川の寝返りなど拙者の知った事か、と・・・」
近習の答えに家康公は大きな音をたて爪を噛む。
徳川勢の苦戦に続き、この回答。家康公の苛立ちも限界に達する。
そして次の瞬間、家康公の口から驚きの言葉が出る。
「小早川に鉄砲を射かけい」
!
驚く一同。拙者は慌てて家康公に問いかける。
「殿!そんな事をすれば、こちらに攻めてくるやもしれませんぞ!?」
「かまわん!鉄砲を射かけるのだ」
頑としてそう仰る家康公。
近習たちもどうしたらよいか悩んでいると家康公の怒号が飛ぶ。
「何をしておる!さっさと鉄砲を射かけるのだ!」
その声に驚いた近習たちは慌てて鉄砲隊に指示を出す。
「て、鉄砲隊、松尾山に向かって用意!」
急ぎ鉄砲隊は松尾山の小早川勢に向け火蓋を切る。
「撃てぇ!」
凄まじい豪音が辺りに響き渡る。
さて、この号砲が吉と出るか凶と出るか。
その結果はすぐさま表れました。
突如、大きな地鳴りが関ヶ原に響き渡りました。その原因は、そう松尾山の小早川。小早川勢は雪崩(なだれ)の如く松尾山を駆け下りていました。
どちらに向かう?こちらか、それとも敵方か?
小早川勢の動きを、その場にいる全員が固唾を呑んで見守る。
小早川勢の向かう先は・・・上方勢の大谷!
床几(しょうぎ)に座っていた家康公も思わず立ち上がる。
「でかした!」
勢いよく大谷勢に突っ込んで行く小早川勢。
「勝てる、勝てるぞ」
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さらに喜びの報は続く。伝令の一人が陣の中に入り言上する。
「脇坂、朽木、小川、赤座の各隊もこちら側に寝返り大谷勢を攻撃!」
その知らせに家康公は口元がほころぶ。
「勝った・・・」
瞬く間に小早川勢の波が大谷勢を覆う。間もなくして再び伝令が現れる。
「大谷勢壊滅!」
そして、勝利を確信した家康公は指示を出す。
「全軍押し出せ!」
戦況は一変。徳川勢が勢いを増す。
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