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6.見つかった仲間

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「私、グラッドさんを初めてみた時から、この人は鍛えてるなって思ってたんです。とてもいい師匠さんがいたんですね」

「全くもってその通りだよ」

 俺は笑って答えた。
 早くに両親を亡くして半ば路頭に迷っていた俺を拾ってくれたのが師匠だった。

 あの人は俺に生きる術を与えてくれた。いくら感謝してもし足りない。

「それにしても、前のパーティでは荷物持ちしかやらせてもらえなかったなんて信じられませんね! おまけに助けてもらっておきながらグラッドさんを追放するだなんて……」

「あの三人は元々荷物持ちをやってくれる人間を探していたんだよ。そこに俺が現れたんだ」

 エリンシアに説明した。
 位置替えのスキルの価値をまるで理解してくれなかったハムスたちに、俺は自分が荷物持ちとして役に立てることを実演して見せたのだ。

 あの時はとにかくどこかのパーティに入れてもらいたくて必死だった。

 師匠からはいい仲間を見つけろよ、と言われていたからな。

 今になって振り返ってみればソロでやるという手もあったとわかるが、当時は仲間を作ることで頭がいっぱいだった。
 師匠と別れて一人になったのが効いていたんだろう。

「力があるのに認めてもらえないのって辛いですよね……」

 エリンシアの表情が曇る。
 彼女自身もそうだったのだろう。

 俺も自分の力を周りが全く認めてくれないのには憤りと悔しさを感じていた。
 挙げ句の果てにはちゃんと活躍したのに追放だ。

 正直言ってやってられないと思っていた。

「確かにそうだな。でも、こんな風に君から認めてもらえたから、俺はもう大丈夫だよ」

 本心だった。
 エリンシアと悪口を言い合い、こうしてスキルを認められて今までの苦労を労ってもらえたので、気分はよくなっていた。

 ただ……

「だから、そろそろ手を放してもらえないか? どうにも落ち着かなくて……」

 俺は少し躊躇いながら言った。
 興奮していたせいだろう、彼女はさっきからずっと俺の手を握っていたのだ。

「えっ? ……ご、ごめんさい! 私ったら、つい……」

 エリンシアはサッと手を放した。

「……あの、私、気持ち悪いですよね……」

 彼女の声は、今までに聞いたことがないほど暗かった。

「いつもそうなんです。夢中になると周りが見えなくなるっていうか、一人で突っ走ってしまって……私、最強の冒険者になりたいんですよ。小さい頃からの夢なんです。そのために必死で努力もしてきました。でも、他の人からは「暑苦しい」とか「無駄に意識高い」とか笑われて、バカにされて……」

「そうだったのか……」

 エリンシアが俺なんかに付き合ってくれているのは不思議だった。
 積極的な性格だし、俺なんかに構わず、他のパーティに入れて貰えばいいんじゃないかと思っていた。

 でも、エリンシアも他人に理解してもらえなくて苦しんでいたんだ。

「私、変ですよね?」

 昨夜あれだけ派手に悪口を言っていた彼女が、とても弱々しく見えた。

「いや、そうは思わない」

 俺はキッパリと言った。

「気を遣ってもらわなくても――」

「いいじゃないか。最強の冒険者。俺、師匠から「立派な冒険者になって会いに来い」って言われてるんだけど、立派な冒険者っていうのがどういうものなのかさっぱりわからなくて困ってたんだよ。最強の冒険者なら、あの人も文句は言わないだろう」

「それじゃあ、私と……」

「エリンシア、俺と最強の冒険者を目指さないか?」

 手を差し出した。彼女は迷うことなく俺の手を握ってくれた。

「ええ。なりましょう、最強の冒険者に。言っておきますけど、私は面倒くさい性格ですよ?」

「心配いらない。それは昨日の悪口大会でわかってる」

 笑って尋ねるエリンシアに、俺も笑って答えた。

 師匠、俺はやっと仲間を見つけられました。
 会いに行きますよ。

 最強の冒険者パーティとして。

「では、今度は私の力を見せる番ですね」
 眼鏡の奥のエリンシアの瞳がキラリと光った。

 その時、複数の足音が聞こえてきた。

 グレイハウンドだった。
 さっきのボスが率いていた群れだな。

 ボスよりは小さいが、数は三匹。
 固まって、こちらの様子をうかがっている。

「ちょうどいいですね」
 エリンシアは一人でグレイハウンドたちと対峙した。

 お手並み拝見だな。
 彼女がどんなスキルを持っているのかを俺は知らない。

 というか覚えていなかった。
 悪口大会の時にエリンシアから説明されたような気もするんだが、はっきり言って元のパーティを痛烈に罵倒する様しか記憶に残っていない。

 このことは黙っておいたほうがいいだろうな、と俺は思った。

「ではお見せしましょう! 私のスキルを!」

 エリンシアが杖を振る。
 直後、その杖の先端から大きな火球が放たれた。
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