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建国を祝うパーティーは他国の王族も招待され、今年も華やかに彩られていた。
王宮の広々したホールは着飾った女性達が花を添え、多くの貴族で賑わっていた。久しぶりに社交界に出てきたメイソンは、すでに憔悴しきった様子でシャンパンを口につけた。
参加してから間もなく、妻を亡くして落ち込んでいる彼を励まそうと付き合いのあった人物たちがひっきりなしに声を掛けてきたのだ。
その大半は表面上の関係でしかない。
広く、浅く。
貴族ではよくある付き合い方だ。だが、そのせいで妻との関係を根掘り訊かれ、うんざりしていた。
加えて独り身になったメイソンに言い寄ってくる女性も絶えず列を成した。
侯爵という地位と、王宮で働いている優秀な人物。いずれ更なる立場に上り詰めることを考えれば、彼の元に嫁ぎたい女性、もしくは嫁がせたい親が話しかけてくることは至極当然である。
しかし、彼は全て断った。今はまだそんな気分になれない。
メイソンは壁際に寄り、運ばれて酒に手を伸ばした。
そういえばソフィアもよく壁に立っていたな。
一緒になってから参加した夜会では、彼女をエスコートして手元から離さなかった。
緊張するソフィアの手を取って踊り続けた。彼女が自分の妻だと自慢したかった。だが、他の男性の目がソフィアに向けられるのは我慢できなかった。
あの部屋に閉じ込めてからは、ソフィアは体調不良とし、必要な社交界にはメイソン一人で参加した。
メイソンの、妻に対する愛は本物だと、誰もが口を揃えた。彼女を独り占めしている優越感を覚えた。
それも失ってしまえば意味がない。
物思いにふけっていると会場がざわっとした。
騒がしいほうへ視線を向けると、なぜか一度そちらへ目を向けた貴族達が振り返ってメイソンの顔を伺った。
一体どういうことなのか。
不思議に思って中心付近に視線をやった時、メイソンは目を見開いた。
──そんな筈がない。
シャンデリアの下で堂々と歩いてくる女性に目が釘付けになった。
「ソフィア…?」
死んだ妻と瓜二つの女性がそこにいた。
周囲が混乱してざわつく中、メイソンは一歩、一歩と彼女に近づいていった。
彼女は死んでいなかったのか…?
とても他人とは思えない女性の姿に、メイソンは彼女に向かって手を伸ばした。
刹那、届くより先に二人の男性が間に立ち塞がった。
「おやめください、卿」
「皇太子妃に無礼ですよ」
取り押さえられるわけではなく、彼らはメイソンの肩に手を置いて耳打ちしてきた。
……皇太子妃?
意味が分からず立ち尽くすと、凛とした声が聞こえた。
「わたくしは大丈夫ですわ。ところで、そちらの方は?」
「……ソフィア?」
言葉遣いはソフィアと違っていた。
だが、外見も声も、優しく微笑んでくる顔も妻と同じだった。すると、女性は護衛と思われる彼らに下がるよう片手をあげ、ゆっくりとメイソンに近づいてきた。
本当にソフィアが生き返ってくれたようだ。
歓喜で胸が打ち震える。
「なるほど、それでは貴方が…。見間違うのも無理はありません。ソフィアはわたくしの双子の姉でしたから」
王宮の広々したホールは着飾った女性達が花を添え、多くの貴族で賑わっていた。久しぶりに社交界に出てきたメイソンは、すでに憔悴しきった様子でシャンパンを口につけた。
参加してから間もなく、妻を亡くして落ち込んでいる彼を励まそうと付き合いのあった人物たちがひっきりなしに声を掛けてきたのだ。
その大半は表面上の関係でしかない。
広く、浅く。
貴族ではよくある付き合い方だ。だが、そのせいで妻との関係を根掘り訊かれ、うんざりしていた。
加えて独り身になったメイソンに言い寄ってくる女性も絶えず列を成した。
侯爵という地位と、王宮で働いている優秀な人物。いずれ更なる立場に上り詰めることを考えれば、彼の元に嫁ぎたい女性、もしくは嫁がせたい親が話しかけてくることは至極当然である。
しかし、彼は全て断った。今はまだそんな気分になれない。
メイソンは壁際に寄り、運ばれて酒に手を伸ばした。
そういえばソフィアもよく壁に立っていたな。
一緒になってから参加した夜会では、彼女をエスコートして手元から離さなかった。
緊張するソフィアの手を取って踊り続けた。彼女が自分の妻だと自慢したかった。だが、他の男性の目がソフィアに向けられるのは我慢できなかった。
あの部屋に閉じ込めてからは、ソフィアは体調不良とし、必要な社交界にはメイソン一人で参加した。
メイソンの、妻に対する愛は本物だと、誰もが口を揃えた。彼女を独り占めしている優越感を覚えた。
それも失ってしまえば意味がない。
物思いにふけっていると会場がざわっとした。
騒がしいほうへ視線を向けると、なぜか一度そちらへ目を向けた貴族達が振り返ってメイソンの顔を伺った。
一体どういうことなのか。
不思議に思って中心付近に視線をやった時、メイソンは目を見開いた。
──そんな筈がない。
シャンデリアの下で堂々と歩いてくる女性に目が釘付けになった。
「ソフィア…?」
死んだ妻と瓜二つの女性がそこにいた。
周囲が混乱してざわつく中、メイソンは一歩、一歩と彼女に近づいていった。
彼女は死んでいなかったのか…?
とても他人とは思えない女性の姿に、メイソンは彼女に向かって手を伸ばした。
刹那、届くより先に二人の男性が間に立ち塞がった。
「おやめください、卿」
「皇太子妃に無礼ですよ」
取り押さえられるわけではなく、彼らはメイソンの肩に手を置いて耳打ちしてきた。
……皇太子妃?
意味が分からず立ち尽くすと、凛とした声が聞こえた。
「わたくしは大丈夫ですわ。ところで、そちらの方は?」
「……ソフィア?」
言葉遣いはソフィアと違っていた。
だが、外見も声も、優しく微笑んでくる顔も妻と同じだった。すると、女性は護衛と思われる彼らに下がるよう片手をあげ、ゆっくりとメイソンに近づいてきた。
本当にソフィアが生き返ってくれたようだ。
歓喜で胸が打ち震える。
「なるほど、それでは貴方が…。見間違うのも無理はありません。ソフィアはわたくしの双子の姉でしたから」
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