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MALTA.
聖母マリア被昇天日。
MALTA(マルタ)共和国はEUの加盟国であり公用語には英語が入って居る。地中海の島国。新約聖書・使徒言行録によれば、イエズス・キリストの弟子パウロは此の島でキリストの教えを伝道している。現在この島の殆どの住民がキリスト教徒だ。私もキリスト教徒である、と言っても、キリストの教えを完全に実行していく事はとても難しい、不可能であると思う。だが、キリストはそういった人々をゆるしてくれる、という。我々はそもそも、ゆるしがなければ生きられない。私は、イエズス・キリスト(英語ではジーザス・クライスト)が罪のゆるしを告げると、直ぐに起き上がったという床に伏して居た男の事を想う。
今回ジャポンからEUへのフライトは、OSAKAの関西空港発。金曜夜の便だった。去年は前述のハオヤン会長と共に中央アジアを旅した。ゲルに暫く泊まり、その文化を楽しみ、多くの事を語り合った。それは有難い時間だった。彼はアジアの多くの文化について詳しい。私は彼からアジアの魅力を教わったと言っても過言ではない。
KANSAI(関西)というゾーンを闊歩すると、此処に独特のモダニズムを感じる。阪神間モダニズムは第二次世界大戦以前に阪神間・関西で栄えた文化的モダニズムの積載だ。其れらは歴史の中の際立った状況で在った。一部の人々は関西の中に東欧を見る。此れらの忘却と現存のモダニズムカルチャーは近年、関西モダニズムの名で世界的に注目されて居る。
しかし其れは過ぎ去った時代の遺構の外観で在り、今は其の残り香にサイバネティックス・カルチャーが縦横無尽に仕掛けられ、インフォメーション・スーパーハイウェイは、見えないWAVESに依って数ビリオン(十億)テラバイト級の巨大な情報を超超高速の列車群の様に運び続けて居る・・・・・。それが、OSAKA,KOBE,KYOTO. サイバネティックスは既に我々の認知を遥かに超越してしまい、自らを革新・覚醒し始めて居た・・・ JR大阪駅 → 関西空港ディスティネーション電車(BY・JR)に搭乗した、
―此の光景の中で数年前の事がフラッシュバック。聖母被昇天日の前後だった。私はサウスコリアのドクトルQと共にドイツへと向かって居た。あの時も関西空港を利用した。ドクトルQには本当にいろいろな事を教えてもらった。私は映画プロデューサーという職業をして居ながら、人間の深い考察が上手く出来ずに居た。私はドクトルQの話を聞きながら、人間について学んで居た様に思う。ドクトルQは周囲に不思議な雰囲気を起こす人物だ。彼の紡ぎ出す言葉は、彼の周囲に独特の世界観を創り出す。其の意味で、彼は作品をつくらない芸術家だ。又は革命家で在ると言えるのかも知れない。彼は周囲に影響を与えるのだ。其れが出来るのは、裏打ちされた論理が彼の中に存在するからだろう。彼に受けた影響から映画企画を書き上げた事も在る。其の夏のドクトルQとの旅は、まずドイツのフランクフルトへ向かう事から始まった。ジャポンからのパリ行、エールフランス旅客機はシャルルドゴールに着陸した。飛行機をトランスファーして、パリからフランクフルトへ飛んだ。着いたのは夜だった。
[ドクトルQ]
ドクトルQ話は事欠か無い。彼の国籍はサウスコリアなのだが母国を十五年離れて暮らして居た。その間、ドイツに居たという。私も故国を離れざるを得ない状況から、世界を放浪して来たので彼との話はウマが合った。ドクトルQはドイツ長期滞在時代に、コンピュータネットワークに関する仕事で何度もフランクフルトを訪れて居る。其処は元々ロスチャイルドファミリーの本拠地が存在した。世界に散らばって居るユダヤネットワークに、常に私は敬意を表して来た。偉大なものだ。ドクトルQも同様に世界的ネットワークを研究して来て居た。ドクトルQは、彼の政府からの依頼を受けてドイツを調査して居た。それは、地道な探求だったそうだ。フランクフルトでは夜のトバリが降り、街はネオンで煌き始めた。私たちは風通しの良いビアガーデンに入った。テーブルは広く白色ペイントされて居た。ドクトルは、此の街の誇る魅力的な食べ物であるソーセージとビールを私に振舞ってくれた。そして談笑する時間は本当に素晴らしいものだった。その時、我々の白テーブルに、大き目の黒サングラスと灰色フエルト帽の女が近付いた。そして私の隣に腰掛けた。(ドクトルは此れ迄の彼の経験からか、即座に彼女が誰なのかを解した様子だった。)
彼女は口を開いた、「クリント・イースターさま。私は、・・・故国の、あなたの父王から依頼されて此処に来ました。」
父王は、私の近辺に諜報員をつけたようだ。
私は彼女に聞いた、「何か問題が?」と・・・。彼女は答えた、「此処はフランクフルト。欧州経済の中心地であり、ロスチャイルドのお膝元。分かりますか、此の意味が。つまり此処にはかなりの諜報員たちが、・・・多くの組織から派遣されて滞在して居る!」彼女は真顔で言った。
「もちろん、彼らのうちの殆どは、穏便に世界のバランスを守って居る訳ですが、時には一触即発に繋がりかねない事態も在る。あなたは、彼らに知られるとまずい存在なのです。出来れば、欧州をウロウロする事を避けて欲しかった。」
私は言った、「既に、まずい事が起きて居るか?」すると、彼女は答えた、「いえ、いまのところ、大丈夫です。しかし、あなたの言動を此処で記録させていただく。」
私たちの隣に、その後サングラスとフエルト帽の女も居たが、ドクトルQとの談笑には支障は無かった。女はプロなのだ。気配を消して居た。ドクトルと談笑した時間は本当に素晴らしいもので、今も私の記憶のハードディスクに、その時間は保存され続けて居て何度も心の中で再生するのだ。あの年、ドイツを訪れたのはソーセージとビールだけが目的では無かった。本当の目的は、EU最大規模アート祭典ドクメンタを体験する事に在った。ドイツ高速鉄道でカッセルという町へ移動した。カッセルは、ドクメンタ開催地として世界に知られて居る。五年毎のドクメンタ・イベントでは、その年をあらわす現代アートが開催地の町中全てに設置されるのだ。町の全てがアルテゾナ(アートゾーン)と化す。其処で見たアートはまさしく其の年、二千十二年をあらわしていた!
特別な年だった。マヤ暦では人類のシビライゼーションが一つの区切りを迎える年とされて居た。よく芸術を解し無い者は、芸術を言葉で解説せよ、と其の作者に発言するが、言葉での解説が出来無い故に芸術なのだ。感じさせる、・・・現代アートとはそう云うものなのだと確信、・・・・・現代が、・・・つたわってくる。作品を通してタイムリーな世界がつたわってくる。現代、今過ぎてゆく時間、今の真っ只中をアート表現において、解釈し、再考、俯瞰する。ドクトルQと共に見たドクメンタ二千十二は何か私の心の風通しを良くするものだった。近年AIの進歩は著しく、其れを考える時、かえって人間存在について再考せざるを得ない。アダムとイブは男女として一つになった。イブはアダムの一部であった故に、アダムらの子孫である我々も、かたわらに妻が居ない事は体の一部が抜けてしまった様に寂しいのかも知れない。マルタでは聖母被昇天日(八月十五日)は一大祝祭となる。このマルタにおける聖母被昇天日を映像に残すことは、マルタ・ロケでの重要な仕事だ。私にとって聖母マリアは特別な存在だと思う。私はこれ迄どれだけ聖母マリアに救われて来たか知れない。本当にありがたいと思って居る。その憐れみと癒し。私は聖母の奇跡を信じる。私は祈った。「私の中に、多くの不信仰の問題があることをみとめます。欲望に、肉欲に、私の心が動かされてしまっていることをかんじますし、反省もしています。神様に戻るものを、神様はゆるし、うけいれてくれる、と信じます。」 マリア様の御輿が目の前をゆっくりと通過する・・・。
「私を落ち着かせ、癒してください。この祈りを主イエス・キリストの名によって、捧げます。」
[コルトナ]
イタリアの大地。
そして、私はコルトナに居る。コルトナに私を保護してくれて居る財団の支部が在る。財団が用意してくれた部屋に滞在。
早朝、近くのカトリック教会ミサに参列。その後、財団支部を管理して居るゴッドマザーに挨拶に行く。私がプリンスとして宮殿で生活して居た頃から、私を可愛がってくれた女性だ。共に茶を飲みながらショートブレッドをいただく。
ゴッドマザーは私に聞く、「奥さんとはどう?」私は答えた、「追手が居るので、なかなか会えないんです。其れに寂しさも感じて居ます。」
談笑の後ゴッドマザーは私を優しい微笑みで送ってくれた。
そして私は滞在して居る場所の直ぐ近くに在る、元女子修道院を改装したヴィラのガーデンで、スペインで最後に会った時の妻を回想して居た・・・・・・・・。妻はワインカクテルをまず、オーダーし、私はスパニッシュワインをいただいた。そしてアヒージョが供される。地中海料理は良い。人の心を広くし、楽しませる。地中海ソースで味付けされたハーブチキン、オクトパスのプレート、私と妻は充たされた。回想に耽りながら、トスカーナの地を見晴らせるヴィラの石造りのテラスで、予定帳を眺めて居るとGMAILが入っていた。GMAILは、私の後ろ盾をして居るオーガニゼーションからのものだった。ここでは、その場所を正確には書けないが、(そう、なにしろ私はいつも追手に追われて居ると云う身の上でも在るのだから)キャスティリオンの或る家に招かれたのだ。もちろん私はその家を知って居るし、よく呼ばれて居る。
私は、このイタリアは、トスカーナ州にある、コルトナという町と、その隣町キャスティリオン・フィオレンティーノには、いつも、つよい想い出を蘇らせることが出来る。
キャスティリオン・フィオレンティーノの町の駅は、まさに、イタリア国鉄に乗れば、コルトナの隣駅になる。歩いて移動できないこともない。キャスティリオンの駅前の道をすこし上っていくとスイーツの店があるが、其処はなかなか良い。もうすこし上ると町のローカル教会が在る。私はキャスティリオンに来ると、いつも其処で祈った。かつて其の教会の神父から祝福を受けた事も有る。此の近所で子供時代を過ごした人々は皆、此処の教会の神父とは顔馴染みだ。私も其の一人だ。あの頃、教会にいつも、赤いTシャツとジーンズ生地の半ズボンで来る少女に恋をしていた・・・。
キャスティリオンは幼少の九歳から十一歳迄の晩夏を過ごした町だ、・・・此処に来ると本当に多くの忘れていた幼少期を思い出す。だからキャスティリオンでは、よく道歩きをする。三十年という月日の中で、変化しているところも沢山あるが、川の流れ等は昔のままだ。店に入ると、三十年前の看板を今も使っている処も在る。夏場にこの町を歩くと、ガブリエル・ガルシア・マルケスの小説に登場する村、マコンドを何故か思い出す。思い出す、というより、連想するのかも知れない・・・。小村や小さな町は小宇宙を持っていて、その中に人間生活が集約されているのだ・・・。
町の北の方に、幼少期の私の後見人夫婦が住んで居て、今も健在だ。後見人夫婦は、離散した私の故国のリラティブらと交流を持ち続けて居る。夫婦の家は「天使の家」と呼ばれ、何食わぬ顔で佇んで居る。後見人夫婦はアジア旅行が好きだったので私をよくアジアへ連れて行った。
イタリア国鉄に乗って、低木が広がるトスカーナの黄色い平原を、まどろみながら見て居た・・・。
キャスティリオンを歩き回り、むかし行った、聖ヨハネから洗礼を受けるキリスト画が飾られた教会の洗礼堂に立ち寄った。其処には、いい空気がながれていた。神がイエズス・キリストというひとの姿で此の地上に来たのは、私たち人間の、ひととしての苦しみをわかっているからだ。その人生のなかでキリストは最大の苦しみを味わった。それによって私たちは解放された。
キャスティリオンの町は、ときどき、小道を歩くと、燦々と照っている陽の造るコントラストの強い影がある風景のなかで、人通りは全くなく、みなはどこへ行ってしまったのか、というほどの感覚を感じるときがある。小鳥のさえずりが、低ボリュームで生の感触をもたらしていた。
やがて、なにくわぬ顔で佇んでいる天使の家が見えてきた。サイバネティックスが世界を覆う、と皆が思い始めている、こんな時代でも、キャスティリオンは三十年間、なにも変わっていないような顔をし続けていた。
久しぶりに、夫婦の典型的なイタリア田舎の家のベルを鳴らした。ドアが開き、そこからダックスフントが飛び出してきた!
彼は、テラ、という名らしい。二人暮らしの夫婦を楽しませている犬のようだ。少年の頃、私が此処に滞在した時代も犬が居た。私は過ぎ去った時代の、天使の家を生活の場とした時間を懐かしんだ。あの頃居たのは、老犬だった。其の老犬は、あまり私に、なついては居なかったが、こわがりだった私をしっかり守ってくれていた。夜には、いつも、ゆっくりと庭を警備しているように、のしのしと歩いていた。しずかに、力強く・・・。ありがたかった。
出生の関係から、私はいつも周囲にスパイらの気配を感じていたし、そうした状況の中で、どのように逃走経路を確保するかは、ある種、私の中で本能のように身に付いていった。小さい頃から、『存在していながら、存在しない者のように生きる術』を身に着け獲得したのだ。後見人夫婦は、ある程度そういう私のバックグラウンドを理解していた。此の家での寄留生活は、私の人生で重要な部分だし、この地に愛を感じる。
そうこうしている間に、八月二十一日になっていた。聖母マリア被昇天日祝祭が終わってから、もう六日経つのだ。夏のマコンドを思わせるキャスティリオンに居ると、時間経過の感覚が何故か薄れる。多くの隠された生い立ちを持つ私と、其れを知って居る天使の家の老夫婦との時間は、ひとつの家族的瞬間を永遠に留めているのだろうか。
私たちは、別れ際にポリネシア料理の店でトロピカルな食事をした。そして、カンパニーが用意したセスナに乗ると、ふと、現実が戻ってきたような感覚があった。
MALTA.
聖母マリア被昇天日。
MALTA(マルタ)共和国はEUの加盟国であり公用語には英語が入って居る。地中海の島国。新約聖書・使徒言行録によれば、イエズス・キリストの弟子パウロは此の島でキリストの教えを伝道している。現在この島の殆どの住民がキリスト教徒だ。私もキリスト教徒である、と言っても、キリストの教えを完全に実行していく事はとても難しい、不可能であると思う。だが、キリストはそういった人々をゆるしてくれる、という。我々はそもそも、ゆるしがなければ生きられない。私は、イエズス・キリスト(英語ではジーザス・クライスト)が罪のゆるしを告げると、直ぐに起き上がったという床に伏して居た男の事を想う。
今回ジャポンからEUへのフライトは、OSAKAの関西空港発。金曜夜の便だった。去年は前述のハオヤン会長と共に中央アジアを旅した。ゲルに暫く泊まり、その文化を楽しみ、多くの事を語り合った。それは有難い時間だった。彼はアジアの多くの文化について詳しい。私は彼からアジアの魅力を教わったと言っても過言ではない。
KANSAI(関西)というゾーンを闊歩すると、此処に独特のモダニズムを感じる。阪神間モダニズムは第二次世界大戦以前に阪神間・関西で栄えた文化的モダニズムの積載だ。其れらは歴史の中の際立った状況で在った。一部の人々は関西の中に東欧を見る。此れらの忘却と現存のモダニズムカルチャーは近年、関西モダニズムの名で世界的に注目されて居る。
しかし其れは過ぎ去った時代の遺構の外観で在り、今は其の残り香にサイバネティックス・カルチャーが縦横無尽に仕掛けられ、インフォメーション・スーパーハイウェイは、見えないWAVESに依って数ビリオン(十億)テラバイト級の巨大な情報を超超高速の列車群の様に運び続けて居る・・・・・。それが、OSAKA,KOBE,KYOTO. サイバネティックスは既に我々の認知を遥かに超越してしまい、自らを革新・覚醒し始めて居た・・・ JR大阪駅 → 関西空港ディスティネーション電車(BY・JR)に搭乗した、
―此の光景の中で数年前の事がフラッシュバック。聖母被昇天日の前後だった。私はサウスコリアのドクトルQと共にドイツへと向かって居た。あの時も関西空港を利用した。ドクトルQには本当にいろいろな事を教えてもらった。私は映画プロデューサーという職業をして居ながら、人間の深い考察が上手く出来ずに居た。私はドクトルQの話を聞きながら、人間について学んで居た様に思う。ドクトルQは周囲に不思議な雰囲気を起こす人物だ。彼の紡ぎ出す言葉は、彼の周囲に独特の世界観を創り出す。其の意味で、彼は作品をつくらない芸術家だ。又は革命家で在ると言えるのかも知れない。彼は周囲に影響を与えるのだ。其れが出来るのは、裏打ちされた論理が彼の中に存在するからだろう。彼に受けた影響から映画企画を書き上げた事も在る。其の夏のドクトルQとの旅は、まずドイツのフランクフルトへ向かう事から始まった。ジャポンからのパリ行、エールフランス旅客機はシャルルドゴールに着陸した。飛行機をトランスファーして、パリからフランクフルトへ飛んだ。着いたのは夜だった。
[ドクトルQ]
ドクトルQ話は事欠か無い。彼の国籍はサウスコリアなのだが母国を十五年離れて暮らして居た。その間、ドイツに居たという。私も故国を離れざるを得ない状況から、世界を放浪して来たので彼との話はウマが合った。ドクトルQはドイツ長期滞在時代に、コンピュータネットワークに関する仕事で何度もフランクフルトを訪れて居る。其処は元々ロスチャイルドファミリーの本拠地が存在した。世界に散らばって居るユダヤネットワークに、常に私は敬意を表して来た。偉大なものだ。ドクトルQも同様に世界的ネットワークを研究して来て居た。ドクトルQは、彼の政府からの依頼を受けてドイツを調査して居た。それは、地道な探求だったそうだ。フランクフルトでは夜のトバリが降り、街はネオンで煌き始めた。私たちは風通しの良いビアガーデンに入った。テーブルは広く白色ペイントされて居た。ドクトルは、此の街の誇る魅力的な食べ物であるソーセージとビールを私に振舞ってくれた。そして談笑する時間は本当に素晴らしいものだった。その時、我々の白テーブルに、大き目の黒サングラスと灰色フエルト帽の女が近付いた。そして私の隣に腰掛けた。(ドクトルは此れ迄の彼の経験からか、即座に彼女が誰なのかを解した様子だった。)
彼女は口を開いた、「クリント・イースターさま。私は、・・・故国の、あなたの父王から依頼されて此処に来ました。」
父王は、私の近辺に諜報員をつけたようだ。
私は彼女に聞いた、「何か問題が?」と・・・。彼女は答えた、「此処はフランクフルト。欧州経済の中心地であり、ロスチャイルドのお膝元。分かりますか、此の意味が。つまり此処にはかなりの諜報員たちが、・・・多くの組織から派遣されて滞在して居る!」彼女は真顔で言った。
「もちろん、彼らのうちの殆どは、穏便に世界のバランスを守って居る訳ですが、時には一触即発に繋がりかねない事態も在る。あなたは、彼らに知られるとまずい存在なのです。出来れば、欧州をウロウロする事を避けて欲しかった。」
私は言った、「既に、まずい事が起きて居るか?」すると、彼女は答えた、「いえ、いまのところ、大丈夫です。しかし、あなたの言動を此処で記録させていただく。」
私たちの隣に、その後サングラスとフエルト帽の女も居たが、ドクトルQとの談笑には支障は無かった。女はプロなのだ。気配を消して居た。ドクトルと談笑した時間は本当に素晴らしいもので、今も私の記憶のハードディスクに、その時間は保存され続けて居て何度も心の中で再生するのだ。あの年、ドイツを訪れたのはソーセージとビールだけが目的では無かった。本当の目的は、EU最大規模アート祭典ドクメンタを体験する事に在った。ドイツ高速鉄道でカッセルという町へ移動した。カッセルは、ドクメンタ開催地として世界に知られて居る。五年毎のドクメンタ・イベントでは、その年をあらわす現代アートが開催地の町中全てに設置されるのだ。町の全てがアルテゾナ(アートゾーン)と化す。其処で見たアートはまさしく其の年、二千十二年をあらわしていた!
特別な年だった。マヤ暦では人類のシビライゼーションが一つの区切りを迎える年とされて居た。よく芸術を解し無い者は、芸術を言葉で解説せよ、と其の作者に発言するが、言葉での解説が出来無い故に芸術なのだ。感じさせる、・・・現代アートとはそう云うものなのだと確信、・・・・・現代が、・・・つたわってくる。作品を通してタイムリーな世界がつたわってくる。現代、今過ぎてゆく時間、今の真っ只中をアート表現において、解釈し、再考、俯瞰する。ドクトルQと共に見たドクメンタ二千十二は何か私の心の風通しを良くするものだった。近年AIの進歩は著しく、其れを考える時、かえって人間存在について再考せざるを得ない。アダムとイブは男女として一つになった。イブはアダムの一部であった故に、アダムらの子孫である我々も、かたわらに妻が居ない事は体の一部が抜けてしまった様に寂しいのかも知れない。マルタでは聖母被昇天日(八月十五日)は一大祝祭となる。このマルタにおける聖母被昇天日を映像に残すことは、マルタ・ロケでの重要な仕事だ。私にとって聖母マリアは特別な存在だと思う。私はこれ迄どれだけ聖母マリアに救われて来たか知れない。本当にありがたいと思って居る。その憐れみと癒し。私は聖母の奇跡を信じる。私は祈った。「私の中に、多くの不信仰の問題があることをみとめます。欲望に、肉欲に、私の心が動かされてしまっていることをかんじますし、反省もしています。神様に戻るものを、神様はゆるし、うけいれてくれる、と信じます。」 マリア様の御輿が目の前をゆっくりと通過する・・・。
「私を落ち着かせ、癒してください。この祈りを主イエス・キリストの名によって、捧げます。」
[コルトナ]
イタリアの大地。
そして、私はコルトナに居る。コルトナに私を保護してくれて居る財団の支部が在る。財団が用意してくれた部屋に滞在。
早朝、近くのカトリック教会ミサに参列。その後、財団支部を管理して居るゴッドマザーに挨拶に行く。私がプリンスとして宮殿で生活して居た頃から、私を可愛がってくれた女性だ。共に茶を飲みながらショートブレッドをいただく。
ゴッドマザーは私に聞く、「奥さんとはどう?」私は答えた、「追手が居るので、なかなか会えないんです。其れに寂しさも感じて居ます。」
談笑の後ゴッドマザーは私を優しい微笑みで送ってくれた。
そして私は滞在して居る場所の直ぐ近くに在る、元女子修道院を改装したヴィラのガーデンで、スペインで最後に会った時の妻を回想して居た・・・・・・・・。妻はワインカクテルをまず、オーダーし、私はスパニッシュワインをいただいた。そしてアヒージョが供される。地中海料理は良い。人の心を広くし、楽しませる。地中海ソースで味付けされたハーブチキン、オクトパスのプレート、私と妻は充たされた。回想に耽りながら、トスカーナの地を見晴らせるヴィラの石造りのテラスで、予定帳を眺めて居るとGMAILが入っていた。GMAILは、私の後ろ盾をして居るオーガニゼーションからのものだった。ここでは、その場所を正確には書けないが、(そう、なにしろ私はいつも追手に追われて居ると云う身の上でも在るのだから)キャスティリオンの或る家に招かれたのだ。もちろん私はその家を知って居るし、よく呼ばれて居る。
私は、このイタリアは、トスカーナ州にある、コルトナという町と、その隣町キャスティリオン・フィオレンティーノには、いつも、つよい想い出を蘇らせることが出来る。
キャスティリオン・フィオレンティーノの町の駅は、まさに、イタリア国鉄に乗れば、コルトナの隣駅になる。歩いて移動できないこともない。キャスティリオンの駅前の道をすこし上っていくとスイーツの店があるが、其処はなかなか良い。もうすこし上ると町のローカル教会が在る。私はキャスティリオンに来ると、いつも其処で祈った。かつて其の教会の神父から祝福を受けた事も有る。此の近所で子供時代を過ごした人々は皆、此処の教会の神父とは顔馴染みだ。私も其の一人だ。あの頃、教会にいつも、赤いTシャツとジーンズ生地の半ズボンで来る少女に恋をしていた・・・。
キャスティリオンは幼少の九歳から十一歳迄の晩夏を過ごした町だ、・・・此処に来ると本当に多くの忘れていた幼少期を思い出す。だからキャスティリオンでは、よく道歩きをする。三十年という月日の中で、変化しているところも沢山あるが、川の流れ等は昔のままだ。店に入ると、三十年前の看板を今も使っている処も在る。夏場にこの町を歩くと、ガブリエル・ガルシア・マルケスの小説に登場する村、マコンドを何故か思い出す。思い出す、というより、連想するのかも知れない・・・。小村や小さな町は小宇宙を持っていて、その中に人間生活が集約されているのだ・・・。
町の北の方に、幼少期の私の後見人夫婦が住んで居て、今も健在だ。後見人夫婦は、離散した私の故国のリラティブらと交流を持ち続けて居る。夫婦の家は「天使の家」と呼ばれ、何食わぬ顔で佇んで居る。後見人夫婦はアジア旅行が好きだったので私をよくアジアへ連れて行った。
イタリア国鉄に乗って、低木が広がるトスカーナの黄色い平原を、まどろみながら見て居た・・・。
キャスティリオンを歩き回り、むかし行った、聖ヨハネから洗礼を受けるキリスト画が飾られた教会の洗礼堂に立ち寄った。其処には、いい空気がながれていた。神がイエズス・キリストというひとの姿で此の地上に来たのは、私たち人間の、ひととしての苦しみをわかっているからだ。その人生のなかでキリストは最大の苦しみを味わった。それによって私たちは解放された。
キャスティリオンの町は、ときどき、小道を歩くと、燦々と照っている陽の造るコントラストの強い影がある風景のなかで、人通りは全くなく、みなはどこへ行ってしまったのか、というほどの感覚を感じるときがある。小鳥のさえずりが、低ボリュームで生の感触をもたらしていた。
やがて、なにくわぬ顔で佇んでいる天使の家が見えてきた。サイバネティックスが世界を覆う、と皆が思い始めている、こんな時代でも、キャスティリオンは三十年間、なにも変わっていないような顔をし続けていた。
久しぶりに、夫婦の典型的なイタリア田舎の家のベルを鳴らした。ドアが開き、そこからダックスフントが飛び出してきた!
彼は、テラ、という名らしい。二人暮らしの夫婦を楽しませている犬のようだ。少年の頃、私が此処に滞在した時代も犬が居た。私は過ぎ去った時代の、天使の家を生活の場とした時間を懐かしんだ。あの頃居たのは、老犬だった。其の老犬は、あまり私に、なついては居なかったが、こわがりだった私をしっかり守ってくれていた。夜には、いつも、ゆっくりと庭を警備しているように、のしのしと歩いていた。しずかに、力強く・・・。ありがたかった。
出生の関係から、私はいつも周囲にスパイらの気配を感じていたし、そうした状況の中で、どのように逃走経路を確保するかは、ある種、私の中で本能のように身に付いていった。小さい頃から、『存在していながら、存在しない者のように生きる術』を身に着け獲得したのだ。後見人夫婦は、ある程度そういう私のバックグラウンドを理解していた。此の家での寄留生活は、私の人生で重要な部分だし、この地に愛を感じる。
そうこうしている間に、八月二十一日になっていた。聖母マリア被昇天日祝祭が終わってから、もう六日経つのだ。夏のマコンドを思わせるキャスティリオンに居ると、時間経過の感覚が何故か薄れる。多くの隠された生い立ちを持つ私と、其れを知って居る天使の家の老夫婦との時間は、ひとつの家族的瞬間を永遠に留めているのだろうか。
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【アラウコの叫び 】第4巻/16世紀の南米史
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【毎日21:40投稿】
4巻は、序盤は「推理もの」、中盤から後半は「ロマンスもの」が展開されます。
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・イネスとバルディビアとの「出逢い」と「結末」
大きく分けてこの様な展開になってます。
-------------------
1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。
マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、
スペイン勢力内部での覇権争い、
そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。
※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、
フィクションも混在しています。
動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。
HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。
公式HP:アラウコの叫び
youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス
insta:herohero_agency
tiktok:herohero_agency
【アラウコの叫び 】第3巻/16世紀の南米史
ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎週月曜07:20投稿】
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戦物語に関心のある方は、ここから読み始めるのも良いかもしれません。
※1、2巻は序章的な物語、伝承、風土や生活等事を扱っています。
1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。
マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、
スペイン勢力内部での覇権争い、
そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。
※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、
フィクションも混在しています。
動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。
HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。
公式HP:アラウコの叫び
youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス
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